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星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ(38) 6.24~7.1

 国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。今回も国内外で開催された大会の数々をリポート。ブラインドサッカーでは日本一のクラブチームが決まり、車いすテニスの日本勢は好調さを維持しています。

 

■ブラインドサッカー

・28日~29日: クラブチーム全12チームが出場し、日本一を決める大会、「第13回アクサ ブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権」が味の素スタジアム(東京・調布市)で行われた。予選リーグを経て決勝に勝ち上がったのは、Avanzare(アヴァンツァーレ)つくばとラッキーストライカーズ福岡だった。試合はAvanzareつくばが前半2分に、エース川村怜(りょう)が決めた1点を守り抜き、1-0でラッキーストライカーズ福岡を下して2連覇を果たした。3位決定戦は、松戸・乃木坂ユナイテッド対たまハッサーズの対戦。両チームとも積極的に攻め、しっかりと守り、0-0で引き分け、ともに3位となった。

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【優勝したAvanzareつくばの選手、スタッフたち。前列中央でシャーレ(銀の皿)を持つのがMVPの川村怜選手】

 

 優勝を決めるシュートを放ったAvanzareの川村は大会MVP(最優秀選手賞)にも選ばれた。

「去年優勝して、他チームから研究されているなか、最大の目標だった2連覇が達成できてよかった。(決勝の)相手はディフェンスもよく、ゴールキーパーも反応がいいので2点も3点もとれない。だから、序盤に先制できたのは大きかった。個人的にはイメージ通りのプレイができたし、最後まで走り切れたのもよかった」

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【ドリブルで攻め込む川村(背番号5)】

 

 ベストゴールキーパー賞は、Avanzareの猛攻を最小失点に抑えたラッキーストライカーズの松原啓(ひろむ)が獲得した。

「ゴールはキーパーひとりでなく、チームで連携して守る。だから、(ベストキーパー賞は)チームでもらった賞」と松原。

 

 ブラインドサッカーは、4人の視覚障害プレイヤーと晴眼のゴールキーパーの全5選手がチームを組む。そのため、キーパーの動ける範囲はゴール前5mx2mの長方形のエリア内に限られており、エリア外のボールに触れることは禁止という、視覚障害者と晴眼者が一緒にプレイするブラインドサッカーならではルールがある。

 

 一般のサッカーでもキーパー経験があるという松原は、「ブラインドサッカーのキーパーはシュートを打たれるのを待たなければならないところが大変。でも、これがブラインドサッカー。視覚障害のある選手と晴眼者が一緒にプレイできることが面白さ」とも話した。

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【キーパーエリアのライン際でシュートを待ち構える松原(背番号21)】

 

・7月1日: 障害者の雇用推進や就労支援を国際的に展開する米国のスプリングボードコンサルティング社が主催する「2014年アジア太平洋ディサビリティーマターズ・カンファレンス&アワード」が都内のホテルで行われ、日本ブランドサッカー協会の釜本美佐子理事長が基調講演を行った。

 

 釜本理事長は、自身も約20年前に網膜色素変性症と診断され、現在は視野狭窄などの視覚障害がある。2001年に韓国でブラインドサッカーに出会い、その魅力に心を動かされ、「日本にも普及させたい」とブラインドサッカー協会を立ち上げ、理事長として普及活動に奔走してきた。「視力を失ってとじこもりがちだった人がブラインドサッカーを通して、外出する勇気や生きる喜びを感じ、『サッカーで救われた』と言ってくれた人もいる。視覚障害のある人たちに夢や希望を与えられたことが、ブラインドサッカーの普及をしてきてよかったと思うこと。昨年から視覚障害の子どもたちにスポーツに親しんでもらう企画も始まった。今後もブラインドサッカーの成長を見守ってほしい」と話した。

■車いすテニス

・24日~29日: BNPパリバ・オープンがフランス・アントニーで開催され、国枝慎吾と上地結衣がそれぞれシングルスとダブルスを制し、「完全優勝」を達成した。国枝はシングルス決勝でS.ウデ(フランス)を6-0、6-2で破り、ウデと組んだダブルスではG・リード(イギリス)/M・シェーファーズ(オランダ)組を6-2、6-3で破った。一方の上地は女子シングルス決勝でA・ファンクート(オランダ)を6-4、6-1で退け、M.ブイス(オランダ)と組んだダブルスではドイツペアのL.シューカー/J.ワイリー組を6-0、7-6(3)で振りきり、国枝と並び、単複優勝を果たした。国枝と上地はこの後、7月4日からのウィンブルドン大会のダブルス戦に臨む予定。

 (⇒編集部註)7-6(3)といった( )内の数字は、タイブレークでの敗者の獲得ポイントを示す。

 

■車いすバスケットボール

・26日: 世界選手権(カナダ・トロント)に出場中の日本女子代表は、メキシコとの順位決定戦に臨み、68-40で勝ち、9位に入った。前半を32-26で折り返し、後半は粘り強いディフェンスから攻撃につなげて突き放した。

 

・27日: 準決勝第1試合はドイツがアメリカを68-58で下した。もう1試合は地元カナダがオランダを75-74の劇的大逆転勝利で駒を進めた。試合はオランダが常にリードを奪う形で進んだが、試合時間残り0.9秒で、カナダがフィールド・ゴールで逆転した。

 

・28日: 決勝戦は地元カナダとロンドン・パラリンピック金メダリストのドイツが対戦。試合は一進一退の攻防が繰り返されたが、最終クォーターの終盤にリードを奪ったカナダがそのまま54-50でドイツを振りきり、勝利。2006年の優勝以来、2大会ぶりに世界王者に返り咲いた。3位決定戦はヨーロッパ王者のオランダがアメリカを74-58で下し、銅メダルを獲得した。この結果、前大会覇者のアメリカは表彰台を逃した。

 

なお、7月5日から、世界男子車椅子バスケットボール選手権大会が、韓国・仁川(インチョン)で開幕する。世界16チームが集う中、グループBに入った日本は、オランダ、スペイン、イランとの総当たり戦で、まずは決勝トーナメント進出を目指す。大会は14日まで、観戦は無料で、大会期間中有効の観戦チケットが会場入り口で配布される。詳細は、日本車椅子バスケットボール連盟公式サイトまで。

 

■ウィルチェア・ラグビー(車いすラグビー)

・28日~29日: 12月に開催される「第16回日本選手権の地域予選を兼ねた「国内予選リーグ」が開幕した。初日は、横浜市で予選リーグAが行われ、BLITZ(埼玉)、RIZE(千葉)、沖縄Hurricanes(沖縄)、Freedom(高知)、横濱義塾(神奈川)の5チームが参加し、全10試合が行われた。結果は以下の通り。

 

  BLITZ 49-50 RIZE

  Hurricanes 48-28 横濱義塾

  Freedom  49-44 BLITZ

  Hurricanes 39-42 Freedom

  横濱義塾 36-43  RIZE

  Hurricanes 51-42 BLITZ

  Freedom  39-42 RIZE

  BLITZ  64-41 横濱義塾

  Hurricanes 48-42 RIZE

  Freedom  61-29 横濱義塾

 

予選リーグA 暫定順位

  1位: Freedom : 3勝1敗 (得失点差 +39)

  2位: Hurricanes : 3勝1敗 (得失点差 +30)

  3位:  RIZE : 3勝1敗 (得失点差 +5)

  4位:  BLITZ : 1勝3敗

  5位:  横濱義塾 : 0勝4敗

 予選リーグはこの後、7月12日~13日に北海道(予選リーグB)、9月6日~7日に兵庫県(予選リーグ、B)、9月20日~21日に高知県(予選リーグA)で開催される。

 

■ゴールボール

・29日: 世界選手権がフィンランドで開幕した。男子は16チーム、女子は12チームが出場し、世界の頂点を目指す。男女とも、今大会で上位3位以内に入ると、2016年のリオ・デジャネイロ・パラリンピックの出場権が獲得できる。初日の日本は、男子がエジプトに9-10で惜敗、女子はドイツに2-1で勝利した。

 

 なお、試合日程など大会の詳細は、公式サイトまで。(日本との時差マイナス6時間)

 また、試合の模様はライブストリーム放送で観戦できる。

 

(星野恭子/文と写真)