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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(279) 9月のパラスポーツを、プレーバック! 

東京パラリンピック開幕まで1年を切りました。9月はテスト大会や東京パラ出場権のかかった試合など、さまざまな大会が開かれました。パラアスリートたちの奮闘の中から一部をピックアップしてダイジェストで振り返ります!

<9月の見逃せない一戦!> 
東京パラリンピックで金メダル奪還を目指す、ゴールボール日本女子の国際強化大会、「天皇陛下御即位記念 2019ジャパンパラゴールボール競技大会 」が9月28日~29日に幕張メッセ(千葉市)で行われました。出場が予定されていた中国がビザ取得の問題で出場キャンセルとなり、急遽、世界ランク4位の日本が2チーム(A,B)に分かれ、ブラジル(同3位)、アメリカ(同5位)の4チームによって争われることになりました。来年の東京パラリンピックと同じ会場でテスト大会も兼ねて行われた今大会は2日間で約4,600人の観客を集めました。
東京パラリンピックと同じ幕張メッセで開催された、ゴールボール女子の国際大会「ジャパンパラ2019大会」。開幕戦で、日本A(左)はブラジルを4-2で撃破した(撮影:星野恭子)

決勝戦でアメリカが日本Aを2-1で下して金メダルを獲得し、3位決定戦ではブラジルが日本Bを3-0で完封と、日本の2チームはそれぞれ悔しい結果に終わりました。

でも、本番会場を舞台に世界ランク上位の強豪国と戦えたことは貴重な手ごたえと課題を得たはずです。日本代表の市川喬一監督は、「今大会は(世界3位の)ブラジルに勝つことをテーマにして臨み、そこは成功した。だが、守備面では失点がすべてセンターからだったのが大きな課題。引き続き、強化したい」と振り返りました。
ブラジルの強烈なスローを全身で守る、日本Aチーム。手前は小宮正江選手、奥左は若杉遥選手、右は高橋利恵子選手 (撮影:星野恭子)

一方で、磨いてきた得点力については手ごたえもありました。アメリカのヘッドコーチは、「日本の攻撃は、移動攻撃やフェイクなどで相手を惑わす、創造性に富む」と話し、ブラジルのヘッドコーチも、「強いスローだった」と印象を語りました。

ゴールボールはコート上の3人に加え、6選手しか登録ができません。日本代表も今、東京パラリンピックへ向けた選手選考過程にあります。今大会で急遽、出場機会を得た選手たちも含め、今大会に出場した選手たちは今後、厳しい代表争いにも臨んでいくことになりますが、互いに切磋琢磨することがチーム全体の底上げにもつながるはずです。
アメリカチームと対戦する日本Bチーム。左から、安達阿記子選手、萩原紀佳選手、高田朋枝選手 (撮影:星野恭子)

なお、日本チームの次の国際大会は12月(5日~10日)に千葉ポートアリーナ(千葉市)で開かれる、「IBSAゴールボール・アジア-パシフィック選手権大会」となります。今大会のAチーム5名とBチームの萩原選手が出場予定のほか、男子チームも出場します。東京パラリンピックへの出場権もかかる大会ですが、日本は男女ともすでに出場を決めている東京大会に向け、それぞれアジアチャンピオンになって大きな弾みをつけたいところです。こちらもまた、リポートします。どうぞご注目ください!

<大会後の日本選手コメント>
■Aチーム
天摩由貴主将
「合宿で取り組んでいることを攻撃では出せたが、守備はゼロ点で抑えられず、守れたボールでの失点もあった。守れるか守れないかで2020年(東京パラで)メダルを獲れるかどうか変わってくる。課題を乗り越えるよう、トレーニングをつみたい」

若杉遥選手
「今大会では練習での課題をクリアできたところも多くあり、得点もできた(全3得点)。ただ、ディフェンスで課題があったので、2020年に向けてコートに立ち、結果を残せるよう強化したい」

小宮正江選手
「決勝戦では多くの方に応援いただき、感謝しています。ゴールボールを見て、知ってもらえるには結果が大事だと思う。決勝で悔しい思いをしたので、来年は勝てるよう課題に取り組みたい」(全5得点)

高橋利恵子選手
「試合のなかで修正できた面もあったが、ディフェンス面でゼロ点に抑えられず悔しい。センターとしてゼロで抑えることが大切になので、そこを大事にして取り組んでいきたい」

欠端瑛子選手
「ポイントゲッターとして得点できなかった面があるので、コントロールや流れを変える得点が取れなかった点が悔しい(全3得点)。来年のパラに向けて修正していきたい」

■Bチーム
安達阿記子主将
「(急遽)巡ってきたチャンスをモノにしたくて臨んだが、残念な結果となった。最終的には私自身がミスをしてしまい、やるべきことがまだあると感じたが、(この経験は)無駄ではないと思う」

浦田理恵選手
「元々、Bチームは出場予定がなかったが、世界のボールを受けるチャンスをもらえたので、流れに乗って優勝しようとチームで臨んだ。悔しい結果となったが、これまでやってきた戦術などを試す機会となり成果のある大会だった」

安室早姫選手
「(2週間を切っての出場決定だったが)来年のパラリンピックと同じ会場でプレーする機会を得られ、すでに出場権をもつアメリカ、ブラジルと対戦でき、練習してきたことを試せたのはよかった」

萩原紀佳選手
「2020年大会と同じ会場なので、このチャンスを無駄にしないようにと臨んだが、まだ足りないところがある。強化していって、来年のパラに出場できるよう頑張りたい」

高田朋枝選手
「海外の選手と戦えるチャンスをもらえて良かったし、楽しかった。結果は残念だったが、個人としてできたこと、チームとしてできたこともあるので、持ち帰って次に活かしたい」
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<国際大会の主な結果>
■9月6日~9日
【車いすラグビー】アジア・オセアニア選手権大会@韓国・カンヌン
日本、オーストラリア、韓国、ニュージーランド、タイの5カ国が出場し、アジア・オセアニア地区の頂点と東京パラリンピック出場権をかけて争ったが、日本は決勝でオーストラリアに55―57で敗れ、準優勝となった。すでに出場を決めているオーストラリア、日本についで、今大会3位に入ったニュージーランドが東京大会への切符を手にした。また、ベストプレーヤーに乗松聖矢(クラス1.5)と池透暢(同3.0)が選ばれた。

1位:オーストラリア/2位:日本/3位:ニュージーランド/4位:韓国/5位:タイ

■9月9日〜15日
【水泳】世界パラ水泳選手権2019@イギリス・ロンドン
パラ水泳の世界一決定戦に東京パラリンピック出場にもつながる重要な大会で、日本からは14選手が出場し、金メダル3、銀メダル7、銅メダル4を獲得。うち、金メダルを獲得した下記3選手が東京パラリンピック出場を内定させた。また、日本の出場枠は5つ獲得した。

<金メダル獲得により、東京パラリンピック出場内定>
木村敬一(S11視覚障害) 100mバタフライ
山口尚秀(S14 知的障害) 200m個人メドレー
東海林大(S14 知的障害) 100m平泳ぎ

■9月11日~15日
【自転車】 UCIパラサイクリング・ロード世界選手権@オランダ・エメン
日本から男子2名、女子2名が出場し、杉浦佳子(楽天ソシオビジネス)が女子C3(機能障害)の個人タイムトライアル(20.8㎞)とロードレース(51.8㎞)の2種目で銀メダルを獲得した。男子では、藤田征樹(藤建設株式会社)が男子C3個人タイムトライアル(31.2㎞)で8位、ロードレース(66.6㎞)で7位入賞、また、川本翔大(大和産業株式会社)も男子C2ロードレース(66.6km)で 7位に入賞した。

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<国内大会の主な結果>
■9月6日
【カヌー】2019 年度日本パラカヌー選手権大会@海の森水上競技場 (東京都江東区)
男女別に3クラス2種目にわたって、今季日本一が決定した。8月に行われた世界主権で5位に入り、東京パラリンピック出場内定を手にした、瀬立モニカがKL1(カヤック)とVL1(ヴァー)の2種目を制し、第一人者の存在感を示した。

■9月7日~8日
【ゴールボール】 2019日本ゴールボール選手県大会 女子予選大会@所沢市体育館 (埼玉県所沢市)
クラブチーム日本一を決める日本選手権大会(11月2日~3日/足立区総合スポーツセンター)に向けた女子チーム予選大会に8チームが出場し、下記6チームが本戦出場を決めた。

〈本戦出場権獲得6チーム〉
1位:国リハLadiesチームむさしずく/2位:九州なでしこ/3位:チーム付属/4位:MoonLuster/5位:mina*RICCA/6位Merveilles

■9月21日~23日
【水泳】天皇陛下御即位記念2019ジャパンパラ水泳競技大会@横浜国際プール (横浜市都筑区)
ロンドン世界選手権出場選手もほぼ顔を揃え、疲労もあるだろうなか力強い泳ぎを見せたほか、久保大樹(S9/肢体不自由)や長野凌生(S13/視覚障害)など自己ベスト更新や東京パラリンピック参加標準記録を突破するなど成長を見せた若手選手も多く、今後の可能性を感じさせる大会となった。

▼種目別結果詳細
http://competition.paraswim.jp/infolist/

■9月28日~29日
【車いすラグビー】第21回日本選手権大会 プレーオフ@北海道教育大学岩見沢校(北海道岩見沢市)
クラブチーム日本一を決する日本選手権大会(12月20日~22日/千葉ポートアリーナ)への出場2枠をかけたプレーオフで、3チームによる2回の総当たり戦が行われ、AXE(埼玉)が4勝0敗で1位、T×T Big Dippers(北海道)が2勝2敗の2位、SILVERBACKS(北海道)が0勝4敗の3位となり、AXE(埼玉)、北海道 T×T Big Dippers(北海道)が本戦出場権を得た。この後、本戦出場を決めた8チームによる組み合わせ抽選も行われた。

<第2回車いすラグビー日本選手権大会>
プールA:Freedom(高知)/TOKYO SUNS/BLITZ(東京)/AXE(埼玉)
プールB:Okinawa Hurricanes/Fukuoka DANDELION/TOHOKU STORMERS/北海道 T×T BigDippers

(文・写真:星野恭子)