ラグビー大学選手権の新方式に効果はあったのか!?(松瀬 学)
ラグビーの全国大学選手権ではベスト4が出そろった。準決勝は年明けの1月2日、国立競技場である。ラグビー仲間との忘年会では準決勝の予想とともに、選手権の新方式について「なぜこうしたのか、意味がよくわからない」といったボヤキを何度か耳にした。
その度、一応、「大学ラグビーの強化のためです」と答える。つまり、大学のチームは総じて、試合数が少ない。実力の接近したチーム同士の試合を増やすことが、選手の力を磨くことになるのだ、と。そう説明したら、「ワンサイドゲームでは意味がないのじゃないか」とからまれる。試合数アップといっても、4強に勝ち上がったチームにとっては、昨季までの「2試合」から「3試合」に増えるだけということもある。う~ん。苦しい。反論もしどろもどろとなる。
ということで、ちょっと新方式を検証してみる。大学選手権は昨季までの16チームによるノックアウト方式、つまり負けたら終わりの一発勝負からフォーマットを変えた。地域リーグの代表決定戦をファーストステージとして行った後、その勝者を加えた16チーム(関東大学対抗戦、同リーグ戦、関西大学リーグ戦の各5位まで)が、4チームずつに分かれて総当たりでセカンドステージ(SS)を戦い、各組1位がファイナルステージの準決勝に進むことになった。
まず強化面を考える。SSは全部で24試合、行われた。スコアがすべてではないけれど、競ったとみられる7点差以内の試合はわずか3試合、ワンサイドの50点差以上が6試合、100点差以上が1試合(帝京大116-0福工大)あった。確かにスコアだけをみると、強化にとってのプラスがいかほどだったのかと心配になる。
だが、これまで初戦で敗退することが多かった関西勢にとっては意味があったはずだ。必ず3試合戦い、関東との力の差を経験できる。立命大の中林正一監督は最終戦の敗退後、言った。「この方式は関西のチームにとっては大きなことです。関東のチームに太刀打ちするためには何が足りないか、しっかり見つめ直すことで、関西のレベルも上がっていくのじゃないかと思います」と。
では人気面はどうか。SSの開幕戦(東海大×近大・秩父宮)の観客はわずか869人だった。申し訳ないが、これは人気チームの試合を持ってきて、インパクトを出すべきだったと思う。調べると、観客千人未満の試合が他にも3試合(慶大×法大、近大×日大、拓大×福工大)もある。これは寂しい。
ちなみに最多はベスト4進出がかかった東海大×明大(秩父宮)の9668人である。24試合でトータル67515人。1試合平均2813人となる。新方式や日程の告知不足もあろうが、はっきりいって、観客動員は期待外れに終わった。
今回は勝ち点制がとられた。各チームが所属リーグの順位による持ち点をもち、勝ち5点、引き分け2点、負け0点、7点差以内の敗戦1点、勝敗に関係なく4トライ以上がボーナスポイント1点がつく。勝ち点制というのは2位までが勝ち上がる時は重要な要素となるが、1位だけではほとんど意味がなかった。チーム関係者もファンもあまり気にしてなかったのではないか。
気になったのは、選手のモチベーションである。帝京大の岩出雅之監督は言った。「まずは(移動・宿泊に)カネがかかると思います。それと2位以下のチームのモチベーションがどこかで消えてしまわないかな、と。最後の試合まで学生の踏ん張りに期待するのではなく、(進出)条件が踏ん張りを生むようにしたほうがいいのではないか、と思います」と。
トップクラスの強化を目指すなら、2003年度のフォーマットのほうがいいだろう。1回戦を戦い、勝ち上がった8チームが2グループに分かれて総当たりを戦い、上位2チームずつが準決勝に進んだ。ただ、すそ野の強化を考えると、今回のフォーマットのほうがベターだろうが。
いずれにしろ、あれこれやるのは悪くない。どういったフォーマットが大学ラグビーの強化、人気アップにつながるのか。できればシーズン全般を通した試合数アップを目指してほしい。日程的にシーズン中盤までと終盤の密度の差が大きすぎる。
大事なのはチーム関係者やファンの声を真摯にとらえ、検証することである。試行錯誤の末、ひいてはジャパンの強化につながる大学のレベルアップのためのフォーマットが生まれることになるだろう。
【アプリ『スポーツ屋台村』(五輪&ラグビー担当)より】