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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(275) 東京パラの競技日程とチケット販売概要が発表に。「目標は、フルスタジアム」

東京2020大会組織委員会は8月13日、開幕まであと1年となる東京パラリンピックについて、大会期間中(2020年8月25日~9月6日)の詳細な競技日程と、観戦チケットの販売方法などを発表する記者会見を都内で行いました。
東京パラリンピック大会概要の発表会見に出席した、左から、元オリンピック選手で大会組織委員会広報局の伊藤華英さん、パラ卓球の岩渕幸洋選手、組織委スポーツディレクターの室伏広治さん、パラ陸上の重本沙絵選手、大会公式マスコットのソメイティ (撮影:星野恭子)

まず、日程ですが、8月25日に行われる開会式はオリンピックと同じ午後8時にスタートします。競技は翌26日から12日間にわたって行われ、史上最多の約4,400選手が22競技540種目で熱戦を繰り広げる予定です。

東京大会の競技日程の特徴としては、過去大会では後半に偏りがちだった団体競技の決勝を一部、大会中盤に持ってくるなど、大会全体を通して盛り上がりが続くよう人気競技をバランス良く配置していること。大会の前後半でメダル決定戦がともに270種目ずつ行われます。

金メダル第1号は競技初日に行われる、自転車(トラック)競技の女子C1~3(四肢障害など)個人3000m追い抜きで誕生するほか、この日だけで3競技24種目でメダリストが決まります。

大会中盤に当たる大会最初の日曜日となる8月30日は「ゴールデンサンデー」と呼ばれ、陸上競技やトライアスロン、ボート、水泳や柔道など期間中最多となる63の決勝種目が実施されます。例えば、昨年、日本代表が世界選手権を制覇し、金メダル獲得の期待も高い車いすラグビーの決勝戦もこの日に予定されています。

後半からは東京大会でパラリンピックデビューを飾るバドミントンとテコンドーもスタート。9月5日(土)にはエースの国枝慎吾選手(ユニクロ)の活躍が期待される車いすテニス男子シングルス決勝やリオ大会で日本が銀メダルに輝いたボッチャのチーム戦(脳性まひ)決勝などが行われます。大会最終日には5競技で決勝種目が行われる中、大会最後の金メダルマッチは車いすバスケットボール男子決勝戦となる見込みで、終了の午後8時から新国立競技場で閉会式が行われ、大会は幕を閉じます。

懸念される暑さにも配慮した対応が取られています。以前、発表された日程から、男女のマラソン(車いす、視覚障害など/9月6日実施)は午前7時から6時30分に、トライアスロン(8月29日~30日実施)も午前8時から7時30分に競技開始が前倒しされました。また、馬術は競技日数を4日から5日間に増やすことで、暑さがピークとなる日中の競技が回避され、アーチェリーも障害により体温調節の難しい四肢麻痺の選手が参加するW1クラス(車いす)の試合が午後5時以降での実施に変更されました。

日本は前回リオ大会では合計計24個のメダル(銀10個、銅14個)を獲得しましたが、金メダルはゼロに終わりました。自国開催の東京大会では大会序盤からメダルラッシュで雪辱をはらしたいところです。ぜひ、会場でご声援ください。

▼東京2020パラリンピック競技スケジュール (2020年8月25日~9月6日)
https://tokyo2020.org/jp/news/notice/20190813-01.html

パラ陸上400mを専門とし、リオパラリンピック銅メダリストの重本沙絵選手。東京大会で2大会連続メダル獲得を目指し、強化に励む。「応援が背中を押してくれます」 (撮影:星野恭子)

■チケット1次抽選販売の受け付け開始は8月22日から

国内在住者向けに販売する開・閉会式と22競技のチケット1次抽選の概要も発表されました。大きな流れなどはオリンピックとほぼ同じです。まず、申し込みは8月22日未明に専用サイトで開始され、9月9日午前11時59分まで受け付け、10月2日に結果が発表されます。

気になる価格ですが、席種はオリンピックと同じくA~Eの5段階で、価格はパラリンピック用に設定されています。開・閉会式は8000円からで、最高額は開会式が15万円、閉会式は9万円です。競技の一般チケット価格は900~7000円と幅があり、競技ごとに価格帯が異なります。最低額(900円)はカヌー、ゴールボール、ボート、テコンドー、車いすフェンシングで設定され、最高額は水泳の決勝、車いすバスケットボール男女決勝、3位決定戦のA席となっています。

一般チケットは開・閉会式が各2枚、決勝などメダルが決まるセッションは各4枚、予選などのセッションは各6枚まで申し込めます。1人が申し込める上限は第1、第2希望合わせて60枚で、当選するのは最大30枚。希望すれば申し込んだ席種で外れた場合に一つ下の席種も抽選対象となる「カスケードサービス」も設定されています。なお、購入期限は10月15日となっています。

「車いす利用者と同伴者のペアチケット」や、子供(12歳以下)か高齢者(60歳以上)、障害者を含むグループを対象にした企画チケット「東京2020みんなで応援チケット」も販売されます(予選セッションを中心に、1枚500~2020円と安価な設定)。

また、「学校連携観戦チケット」として全国の小中高校生を対象とした観戦チケットで、パラリンピックでは500円~2020円で設定されています。一律2020円のオリンピック分と合わせ、100万人以上の子どもたちに観戦の機会が与えられるようです。

チケットの抽選申し込みと購入は公式チケット販売サイトから8月22日からスタートします。専用サイトへのID登録が必要ですが、オリンピックと同じIDが使えるので、すでに登録済みの人は不要です。

▼東京2020パラリンピック観戦チケットについて/大会組織委員会HP
https://tokyo2020.org/jp/games/ticket/paralympic/

なお、来年初めには公式サイトで第2次抽選販売を行い、来春にはチケット販売所が各地に開設され、定価で転売する公式サービスも開始される予定です。

■目標は、フルスタジアム(満席)! パラリンピアンもPR

発表会見の第2部として大会をPRするトークイベントも行われ、卓球のリオパラリンピック代表で、現在世界ランク4位の岩渕幸洋選手(協和キリン)と、リオ大会の陸上400mT47(上肢障害)で銅メダルを獲得した重本沙絵選手(日本体育大学)が登壇。水泳のオリンピアンで、現在は組織委広報局の伊藤華英さんの質問に答えるなど、東京パラリンピックの観戦を呼びかけました。

リオ大会に続き、東京で連続出場を目指す、パラ卓球の岩渕幸洋選手。「目標は、金メダル以上!」 (撮影:星野恭子)

――伊藤: 大会スケジュールが決まりましたね。

岩渕: 卓球は開会式翌日から10日間にわたって行われます。ぜひ多くの、特に子どもたちに来てほしいですね。試合の日付が決まるとイメージリハーサルもしやすいので、しっかり準備したいです。

重本: (400m決勝が8月29日)土曜日になって、最高です。リオ大会と違い、今回は家族や友人など多くの人に来てもらえると思えるので、結果をしっかり見せられるよう、今からしっかり準備をしたいです。

――伊藤: それぞれ競技の見どころなどをPRしてください。

岩渕: パラ卓球は11の障害クラスがあり、部位で分かれるのでなく、障害の程度によって分かれます。僕はクラス9で、(先天的に両足首に障害があり、特に)左足には装具をつけてプレーしますが、同じクラス9には腕の障害の選手もいます。僕が初めてパラ卓球の国際大会に出たとき、いろいろな障害の選手がいて、あたかも障害がないようなプレーをされていて、「人間ってなんでもできる」と人間の可能性を感じました。ぜひそこを見てほしいですね。また、試合では相手の障害を理解し、相手の弱点を狙うのがセオリーです。僕は左足に障害があるので、左に動かされるのが弱点ですが、逆にラケットのラバーを工夫し癖のあるボールを出すようにしています。つまり、僕の弱点を攻めることを相手に嫌がられるようにしているわけです。弱点を弱点だけにしない、そんな駆け引きも見てほしいです。

重本: 選手はみな、障害があっても、いろいろな工夫をして競技に取り組んでいます。陸上の短距離選手なら、0.01秒を削り出すために日々、努力をしています。そこまでの強い思いや選手それぞれのストーリーも知ってほしいと思います。私は専門が400mなので後半に失速しないよう、走り込みはもちろん、最近はプールで追い込む練習も取り入れています。泳ぐのでなく、水中で息を吐きながら脚を動かし続け、もがき苦しむ練習で強化しています。

――伊藤: 組織委では、「奇跡をつくる一人になろう」をキャッチコピーに会場観戦を呼び掛けています。声援があって頑張れた例はありますか?

岩渕: 先日、日本で国際大会があり、多くの声援のおかげでよりよいプレーができた気がしました。僕は元々声を出して戦うスタイルですが、(観客から)一緒に声を出していただき、のれたことを実感しています。

重本: リオでは地響きのような歓声が聞こえ、決勝レース前に気持ちがすごく高まりました。

――伊藤: 東京2020大会への決意の一言をお願いします。

岩渕: 東京大会は、「金メダル以上」が目標です。金メダルを取って、さらにパラスポーツがより多くの皆さんに届くようにという意味を込めています。まだ出場は決まっていませんが、これからの国際大会でランキングを上げ、いいシードで東京大会に臨みたいです。頑張りますので、ぜひ応援をお願いします。

重本: 私が目標に立てたメダル獲得に向けて最後まであきらめず、走り抜けることが目標です。11月のドバイ世界選手権で4位以内に入ると東京の出場が内定するので、出場権を取れるよう後悔のないように積み重ねていきたいです。皆さんの応援が背中を押してくれるので、ぜひご声援をお願いします。

(文・写真:星野恭子)