日本の野球界やラグビー界は「サッカー文化」を20年で発展させたサッカー界を見習え!
サッカーのワールドカップ(W杯)ブラジル大会が幕を開けた。
今や忘れてしまった人も多いかもしれないし、生まれる前の知らない出来事という若者も増えたようにも思えるが、1993年にJリーグが誕生し、サッカー人気が急上昇するまで、日本ではW杯など話題にもならなかった。
85年には、最終予選の対韓国戦2試合に勝利すれば初のW杯出場まで迫り、第1戦の10月25日国立競技場は6万人のファンで超満員になった。が、結果は1対2で敗戦。
1週間後のソウルでの第2戦も0対1で負け、W杯初出場の夢は泡と消えた。
とはいえ、そのときの日本は、阪神タイガース21年ぶりの優勝の話題で、“浪人中”だった長嶋茂雄氏が「虎フィーバーで日本列島が揺れている」と表現したくらいの大騒ぎ。
W杯予選(の敗戦)は、コアなサッカー・ファンだけの話題にとどまったのだった。
また、当時はサッカー人気よりもラグビー人気が圧倒的に上で、早慶明同や新日鉄釜石、神戸製鋼の大学ラグビー、社会人ラグビーが、サッカーをはるかに上回る観客を集めていた。
それがJリーグ誕生以後、サッカー人気が急速に高まり、ドーハの悲劇、ジョホールバルの奇蹟、日韓共催W杯……等を経て、日本のサッカーは様々な点で「世界レベル」と肩を並べるほどまで成長した。
今回のW杯ブラジル大会では日本人3人が開幕戦の審判を務め、日本代表戦のTV視聴率はおそらく50%を超え、代表チームは過去に1次リーグの突破も2度経験。Jリーグのチームは、36都道府県で51ものクラブ(J1=18、J2=22、J3=11)が活動するようになったのだから、日本の「サッカー文化」も今や本物と言えそうだ。
もちろんJクラブの存在しない県もあり、各クラブの経営不振やサッカー以外のスポーツでの展開不足など、まだまだ課題も少なくない(発展の余地は、大きく残されている)。
しかし、これだけの発展を日本のサッカー界はわずか20年でやってのけたのだから、他のスポーツ界も、大いに見習うべき点が多々あるはずだ。
日本の野球界やラグビー界は、チームの親会社の利益や母校の名誉ばかりを優先しているようにも見えるが、社会人や大学、高校、クラブチームなど、多くの組織に別れてバラバラのようにも思えるが、いつになったらサッカーのようにスポーツ全体の発展を目指す組織に生まれ変わるのだろうか?
今年のサッカー・ワールドカップで、日本チームは、コートジボワールとの初戦を1対2で落とした。ここからグループ・リーグを勝ち抜くことができたなら、さらに地力を付けたことになると思うが、はたして……。
(玉木正之)
毎日新聞「時評展望」+Camerata di Tamaki+NBSオリジナル
FIFA World Cup 2002, Japan vs Russia in International Stadium of Yokohama
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