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星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ(35) 6.4~6.8

 国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。今回は、車いすテニスの全仏オープンで国枝慎吾選手の王座奪還や上地結衣選手の初優勝など快挙達成の嬉しいニュースを中心に、陸上競技日本選手権の模様などをリポートしています。
 
■車いすテニス
・4日: 4大国際大会(グランドスラム)(⇒註)のひとつ、全仏オープン車いすの部がスタート。男女シングルス準々決勝と、同ダブルス準決勝が行われた。男子シングルスは第1シードの国枝慎吾がN.ペイファー(仏)に6-4、6-0で勝利。また、グランドスラム大会初出場の三木拓也はG.リード(英)に1-6、7-6(7)、4-6で惜しくも敗れた。女子シングルスは第1シードの上地結衣がJ.ホワイリー(英)に6-2、6-2のストレート勝ちを収めた。
 
 ダブルスでは、国枝/三木組がJ.ジェラード(ベルギー)/S.ウデ(仏)にフルセットにもつれる粘りを見せたが、5-7、6-3、8-10で敗れた。女子は、上地/ホワイリー組がS.エラーブロック(独)/K.ムンジャーネ(南アフリカ)を7-6(6)、6-3で破って決勝に進出。1月の全豪オープンにつづくグランドスラム連覇を目指す。(⇒編集部註)
 
(⇒註)車いすテニスの4大国際大会: 国際テニス連盟(ITF)が定めた、全豪オープン(1月)、全仏オープン(6月)、ウィンブルドン選手権(7月)、全米オープン(10月)。グランドスラムとも総称され、同一年内に全大会を制覇すると、「年間グランドスラム」達成となる。
(⇒編集部註)7-6(6)といった( )内の数字は、タイブレークでの敗者の獲得ポイントを示す。
 
・5日: 男女シングルス準決勝が行われ、男子では、国枝が、G.フェルナンデス(アルゼンチン)を6-3、3-6、7-5のフルセットの激戦の末、破って決勝に進出した。第3セットはフェルナンデスの3度のマッチポイントをしのいでの大逆転。見事な粘り勝ちだった。
 
 女子は、上地結衣がJ.グリフィオエンをフルセットにもつれた熱戦を7-5、2-6、7-6(6)で制し、決勝に進出。上地は1月の全豪では準優勝に終わっており、グランドスラム初制覇の悲願に挑む。
 
・6日: 男女シングルス決勝が行われ、男子は国枝が大会連覇中のウデを6-4、6-1で下して王座奪還を果たし、4年ぶり5度目の栄冠を手にした。国枝のグランドスラム制覇は通算20度目。
 
 女子は上地がファンクートを7-6(7)、6-4で下し、4大大会シングルスで初優勝を遂げた。上地はホワイリーと組んだダブルスでも7-6(3)、3-6、10-8のフルセットの激闘の末、グリフォン/ファンクート組を破って優勝し、単複制覇の快挙を達成した。
 
■陸上競技
・7日: 第25回日本身体障害者陸上競技選手権大会がヤンマースタジアム長居(大阪市)で開幕。午前中は雨が降ったりやんだり、日が差し始めた午後は蒸し暑く、あいにくのコンディションとなったが、総勢200名を超える選手たちが、勝利と自己記録更新を目指した。
 
 男子200mT42(大腿切断)クラスの山本篤は26秒02の日本新記録で、女子走り幅跳びT44(下腿切断)クラスでは中西麻耶が4m93の大会新で優勝するなどパラリンピック代表選手が力を見せた。
 
 この日のトラック最終種目となった、男子100mx4リレーT42-46(切断)クラスでは45秒25の大会新記録をマーク。日本記録まであと0.13秒だった。
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【大会新をマークした男子100mx4リレーのメンバー。右から1走の多川知希、2走の佐藤圭太、3走の芦田創、アンカーの山本篤=ヤンマースタジアム長居、6月7日/撮影:星野恭子】
 
 1走を務めた多川知希(T46/上肢切断)は、個人種目の200mでも自己新に迫る好走で好調さを維持するも、「日本新記録を狙っていたので悔しい」と話し、2走の佐藤圭太(T44)は「僕自身はまだ調子が上がっていないので、ちょっと脚を引っ張ってしまった」と反省。3走の芦田創(T46)は「バトンがあうか心配だったが、うまく流れてよかった」と振り返り、アンカーの山本が、「日本記録を更新したかったんですが。今後、合宿や大会で経験を積み、(10月の)アジア・パラゲームズ(韓国インチョン)に向かっていきたい」とレース同様しっかりと締め、前を向いた。
 

・8日: 朝から晴天が広がったこの日は、トラック種目を中心に好記録が多数生まれた。女子100mT42クラスでは大西瞳が17秒41をマークし、自身のもつ日本記録を更新。「本当は16秒台を狙っていた。最低でも自己ベスト(17秒77)は切ろうと思っていたので、まずはよかった。(10月に)アジア・パラという目標があるので、モチベーションをもちやすい。でも、16秒台に乗らないとパラリンピックでは戦えないので、まずはそこが目標」
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【日本新をマークした大西瞳の100mの快走=ヤンマースタジアム長居、6月8日/撮影:星野恭子】
 
 男子100mでも、T46の多川知希が11秒16をマークして日本新記録を達成した。「(記録は)狙っていた。プレシャーに弱いのか、これまで狙った大会ではなかなか出ないので、出せてよかった。このまま好調を維持できるよう頑張りたい」と笑顔。
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【100mを疾走する多川知希。100mx4リレーでも活躍=同】
 
 フィールドでは、男子三段跳びT47で芦田創が自身のもつ日本記録(12m79)を大きく更新する13m35の日本新記録で優勝した。芦田は5本目に3m07の日本新をマークすると、最終試技でさらに記録を伸ばした。
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【三段跳びで大ジャンプを見せた芦田創=同】
 
■車いすバスケットボール(男子)
・4日: イギリス遠征中の男子日本代表は、イギリスと2試合を行った。1戦目は64-61で勝利、2戦目は熱戦を繰り広げたものの、56-58で惜しくも連勝を逃した。
 
・5日: この日もイギリスと2戦し、第1試合は39-76で敗れ、遠征最終戦となった2試合目は、第3クォーターまで42-40と粘ったものの、第4クォーターに放され、62-54で敗れた。なお、両チームは6月25日から愛知県豊橋市で開催される親善試合で再び対戦の予定。
 
(文・写真:星野恭子)