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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(261) 「躍動するアスリートの美しさ」を図案化。東京パラの競技ピクトグラム23種類発表!

来年8月25日に開幕する東京2020パラリンピックまで「ちょうど500日前」にあたる4月13日、東京大会で実施される全22競技を絵文字で表した、「東京2020パラリンピックスポーツピクトグラム」が東京2020大会組織委員会から発表されました。

躍動するアスリートを中心に、パラリンピック競技としてそれぞれの特徴的なルールや用具などが正確に表現され、競技の魅力を分かりやすく伝えるデザインになっています。発表されたピクトグラムは全23種類で、22競技のうち自転車競技でロードとトラックの2種類が描き分けられています。
東京 2020 パラリンピックスポーツピクトグラム デザイン一覧(画像:Tokyo 2020提供)

絵文字とも呼ばれるピクトグラムは、実は1964年の東京オリンピックの時に初めて、言語に頼らず誰もが理解できる共通のコミュニケーションツールとして考案されました。競技だけでなく、トイレなどの施設を示す図柄も工夫され、その後、世界に広がったという歴史があります。

パラリンピックでピクトグラムが使われたのは1988年のインスブルック冬季大会が初めてで、1998年の長野冬季大会では大会マスコットが各競技を行っているデザインが使われました。2020年大会の競技ピクトグラムは、1964年の東京オリンピックで使われたピクトグラムを彷彿とさせるシンプルな図柄が印象的です。

▼東京2020パラリンピックスポーツピクトグラム コンセプトムービー (制作:Tokyo2020)
https://www.youtube.com/watch?v=Dtl0me5c7pI&feature=youtu.be (*音声注意/約2分)

デザインしたのはグラフィックデザイナーの廣村正彰さんらで編成された開発チームです。オリンピック競技(3月12日発表済)とともに制作され、共通性や統一性にも重点が置かれています。例えば、陸上競技はほぼ同じ構図ですが、パラリンピックは片脚が義足になっていて、射撃は銃を構えたアスリートの上半身を基本に、パラリンピックでは車いすも描かれています。

東京2020オリンピックスポーツピクトグラム一覧 (画像:Tokyo 2020提供)

パラリンピックの場合、競技によってはさまざまな障害クラスがあったり、使われる用具も多彩です。どの部分をどうデザイン化するかなどは国際競技団体やアスリートにも意見も聞いて進められたそうで、原案から数度の改良が重ねられ完成した競技もあったようです。

廣村さんは、「今回、東京2020スポーツピクトグラムのデザインに携われることになり大変光栄です。1964 年の東京大会で日本のデザイン界の先駆者たちが生み出してくれたレガシーを出発点に、躍動するアスリートの美しさを各競技のスポーツピクトグラムに表現させていただきました。その完成には実に 2 年近い年月がかけられており、多くの関係者の思いが込められています。この東京2020スポーツピクトグラムが、大会前から各競技への期待を膨らませ、東京2020大会本番を彩ってくれることを願っております」とコメントしています。

なお、東京 2020 ピクトグラムは2種類で展開されます。一つはピクトグラム単体の「フリータイプ」で、主にポスターやチケット、ライセンス商品などに使われ、もう一つは円の中にピクトグラムが書かれた「フレームタイプ」で、地図表記やサイン類、ガイドブックやウェブサイトなどで競技に関する情報伝達のために使われる予定です。色も大会エンブレムのブルーを基本としながら、サブカラーとして紅(くれない)、藍(あい)、桜(さくら)、藤(ふじ)、松葉(まつば)の4色も設定されているそうです。
円の中に図案化された、「フレームタイプ」のパラリンピックスポーツピクトグラム (画像:Tokyo 2020提供)

さらに、パラリンピックのピクトグラムについては凸版印刷の提案と協力により、「触れるピクトグラムポスター」も用意されます。視覚障害者も触って感じられるようにエンボス加工され、点字も添えられています。今後、さまざまな個所で掲示され、大会と競技をPRします。

エンボス加工により、図柄が浮き出た「触れるピクトグラム」の一例。視覚障害者の競技という特徴を示すアイシェードがデザインされたゴールボールのピクトグラム。「GOALBALL」というアルファベットの点字も並べられている(撮影:星野恭子)

車いすバスケットボールの「触れるピクトグラム」 (撮影:星野恭子)

また、パラリンピック競技の理解促進を目的に、子どもたちの関心を高めるため、ピクトグラムを利用したカルタも制作されます。完成後は、大会組織委の教育プログラム用特設サイト『TOKYO 2020 for KIDS』(https://education.tokyo2020.org/jp/)で公開され、ダウンロードして使えるようになるそうです。

製作中のかるたの一例。写真はトライアスロンの図柄で、読み札は、「よ:用具を取りかえ、ひとり三種目」 (画像:Tokyo 2020提供)

東京2020大会は過去大会に比べ、「オリパラ一体」がかなり意識され、進められています。このピクトグラムのデザインも両大会分はよく似ています。だからこそ、パラリンピック競技のルールや動きといった特徴が際立ち、関心を高めるのにも役立ちそうです。

今にも動き出しそうな躍動感あふれるピクトグラムを眺めていると、500日を切った東京パラリンピックの開幕がますます楽しみになってきます。

(文:星野恭子)