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星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ(29) 4.18~4.22

 国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。今回は、伝統のボストンマラソンをはじめ、各地で行われたマラソンレースを中心に、義足の選手を長く支えてきた義肢装具士の功績を称えた表彰式などをリポートしています。

■陸上競技
・20日: 長野市で開催された長野車いすマラソン大会(ハーフ)で、T53/54クラス男子は2012ロンドン・パラリンピック代表の樋口政幸が47分16秒で、同女子は2013世界選手権代表の中山和美が56分37秒で、T52クラス男子はロンドン・パラリンピック代表の高田稔浩が1時間18分31秒で優勝した。

 茨城県土浦市では「国際盲人マラソンかすみがうら大会」が行われた。フルマラソンB1クラス男子を制したのは2004アテネ・パラリンピックのマラソン金メダリストの高橋勇市で、タイムは2時間55分49秒だった。「タイムは良くなかったが、今日は体調が悪く、前半はペースを抑え気味に入ったので後半上げるレースができたのは良かった」
[caption id="attachment_20640" align="alignnone" width="261"] フルマラソンB1男子で優勝した高橋勇市選手(中央)と、伴走者の酒井拓磨さん(左)と近藤充廣さん[/caption] 

 10マイル(16キロ)の部B1(全盲)クラス男子は、2012ロンドン・パラリンピックで5000m銅メダリストの和田伸也が56分15秒で優勝した。「1キロ3分半の設定ペースをきっちり刻め、目標にしていた56分をほぼクリアしての優勝は満足。3月から4月はトラック種目に重点を置いていて、3週連続のレースで疲労があるなか、体もよく動き、気持ちよくフィニッシュできた」

 また、T12(弱視)クラスで初優勝を飾った羽立祐人は2時間50分17秒の今大会最速タイムで特別賞を獲得、副賞として12月に開催されるホノルルマラソンへの招待派遣が決まった。「北海道在住なので(積雪などのため)ロード練習が不足しているこの時期に、ベスト記録に近いタイムで走れた。今持てる力を十分に発揮できたことが何よりも嬉しい。ホノルルは楽しく走りたいと思う」

・21日: 米国で行われた「ボストンマラソン」では、車椅子の部男子で、洞ノ上浩太が1時間21分14秒で2位、副島正純が同タイムで3位に、女子は土田和歌子が1時間37分24秒で2位に入った。優勝は、男子が1時間20分36秒でエレンスト・ヴァンダイク(南アフリカ)が、女子は1時間35分6秒でタチアナ・マクファデン(米国)だった。

■車椅子バスケットボール
・18〜19日: イギリス遠征中の女子日本代表は英国ウスターで3カ国対抗戦「GBR Women’s International」に出場、イギリス代表、ドイツ代表と2試合ずつ対戦した。初日はドイツに43-63、イギリスに59-74、2日目はイギリスに40-50、ドイツに41-49と敗れ、4戦全敗に終わった。ドイツがイギリスを初日に74-54、2日目に58-51と下して全勝した。

 日本代表は6月(20日~28日)にカナダ・トロントで開催される世界選手権への出場が決まっている。同選手権には12カ国が参加する。


■車いすテニス
・22日: フランステニス連盟は全仏オープン車いすの部(6月4日~6日)に出場する男女各8選手のうち、自動的に出場権が与えられるシングルスの世界ランク上位7位までの男女各7選手を発表した。日本からは、エントリーが締め切られた4月14日現在で、男子シングル世界ランク1位の国枝慎吾と、女子同2位の上地結衣が名を連ねた。残り各1選手はワイルドカード枠で、主催者推薦として後日、発表される。大会ではシングルスとダブルスが実施される。

 なお、同大会はグランドスラム(4大国際大会)の1つで、今年度1大会目の全豪オープン(開催1月)では国枝慎吾が単複2冠に輝き、上地結衣はダブルスで優勝を果たしている。その他の2大会は、ウィンブルドン(同7月)と、全米オープン(同10月)。

■東京発
・22日: ヤマハ発動機スポーツ振興財団(静岡県磐田市)による、「第6回スポーツチャレンジ賞」の表彰式が都内で行われた。義肢装具士でスポーツ用の義足開発の第一人者、臼井二美男氏(58)が功労賞を、2020年東京五輪・パラリンピックの招致を支えた東京2020招致委戦略広報部が奨励賞を受賞した。

 義肢装具士歴25年になる臼井氏は、スポーツ義足の性能の向上に取り組むとともに、1991年には足を切断した患者のための陸上チーム「ヘルスエンジェルス」を創設、多くの切断患者に「走る歓び」を提供してきた。同チームからは走り幅跳びの佐藤真海選手ら多くのパラリンピアンが誕生。臼井氏自身も義肢メカニックとして、2004年アテネ大会から3大会連続でパラリンピック日本選手団を現地でサポートしている。

 なお、スポーツチャレンジ賞は、スポーツ振興に功績を残し、社会に貢献した人物や団体を表彰するもので、競技や指導、研究、普及、ジャーナリズムなどスポーツに関する幅広い分野を対象とし、注目を浴びることが少ない「縁の下の力持ち」にスポットをあてているのが特徴。これまでにも、数人のパラスポーツ関係者が受賞している。

(カンパラプレス配信+NBSオリジナル)
(写真撮影:星野恭子)