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「藤・鶴・梅」小粋なキャッチャー・トロイカの猛虎快進撃は「鶴」の8球連続ストレートから始まった!(桂吉弥)

 2014年3月28日のペナントレース開幕以来4月9日までも約2週間、タイガースファンの私はもやもやの日々を過ごしておった。

 ペナントレース開幕の東京ドームでは、巨人に3試合で27点も取られた。次の試合、藤浪晋太郎の今シーズン初先発は10対0で中日に負けた。

 関西のスポーツ紙にも投手陣崩壊の文字が踊って……アチャーもうあかん。その後の試合も15点やぁ! 11点やぁ! と、こっちも大量に点数を取るのやけれど、パカパカ打ち込まれるのを見ているのは気持ちいいものではない。

 そんな試合をずっと見続けているとキャッチャーの藤井に責任を背負い込ませたくなってくる。打者の打ちやすいところへ、うちやすいところへ……とリードしているように見える。もちろんそんなはずはないんやけどね。

 開幕に向けて、キャンプして、オープン戦して、準備してきたんと違うの? 相手チームの情報もスコアラーから入ってるのんやろ? せやのに、なんでこないに打ち込まれるんや? 私はサインから配球から全て他球団に盗まれている、スパイ侵入説まで考えるようになった。

「せやから梅ちゃん取ったんとちゃうのん?」
 ドラフト4位の新人梅野隆太郎、開幕レギュラー捕手でもええんちゃう?……と私は思っていた。打撃がいい、リードもいい、なにより若い。生え抜きの捕手をじっくり育てるためにも、開幕から梅野をずっと使って、駄目な時には藤井や清水に代えればええやんか。

 オープン戦でメッセンジャーと組んだ試合は相性も素晴らしかった。せやから開幕2試合目、メッセンジャーの先発で、キャッチャー藤井と聞いた時にはガクッ……。和田監督は今シーズンずっと藤井でいくつもりなんやとがっかりしたのだ。

 タイガースは昨シーズン2位だったが、私をはじめ阪神ファンは、いい印象を持っていない。巨人にははるか先を行かれ、クライマックスシリーズでは広島に叩かれ、最後に引退する桧山進次郎のホームランを見られたのがせめてもの救い。結局今年も一緒なのか……。

 首脳陣は昨年2位やからもう一つ上げれば優勝やと思ってるかもしれないが、私は根本的な変化が必要だと思っていた。それを変えるにはキャッチャー梅野のレギュラーやと。ベテランを使っていて、若手に代えるのは難しいで。若手使っといてベテランにする方が周りも納得するやん。

 4月9日まで11試合で藤井の先発マスクは9回。チームの勝敗は4勝5敗。先発投手に勝ちがついたのが新人の岩崎、続いてエース能見。この二つだけ。

 岩崎が勝った時には「新人がダメ虎を救った」と言われた。その次の日の能見も「ペースを考えずに始めから飛ばした」と。そうそう、新人を見習って先輩投手陣も昨年と違うことをやらなきゃ。それがこれからも藤井のリードで可能なのか? 疑問やった。


 4月10日、捕手のスタメンは藤井でも梅野でもなく、背番号40鶴岡一成。36歳のキャッチャー。兵庫県神港学園から横浜、巨人、DeNA。今年FA移籍した久保投手の人的補償でDeNAからやってきた。なんで捕手ばっかり取るンやとぼやいてたなあ私も。

 二軍でバッテリーを組んでいた歳内が先発やったので一緒に一軍へ上がり、そのまま初マスク。相手が去年までのチームやったのもあったのか。構える姿が新鮮。打撃も良く、自分のバットで6回に5対5に追いついた後、8回表の守備は福原忍と組んで、1アウト走者無しで打席にはブランコ。

 ここから8球、全球ストレート勝負。その日ブランコは3打数3安打、タイムリーヒットに2塁打2本。絶対打たれたくない。ホームランは最悪。直球を続けるバッテリーにブランコも「来い来い」と挑発する。

 6球目には福原が鶴岡のサインに二度首を振る。鶴岡が変化球のサインを出したんか、バッターへのカモフラージュか。でもまたストレート! 今シーズン初めて『気持ちのいい』タイガースピッチャーの投げっぷりとキャッチャーのリード。8球目の137キロ高めのストレートを空振り! ブランコは三振となった。

 定石では決め球は変化球なのかもしれない。もちろんそれで三振だったのかも。でも、これでもかこれでもかと続けるストレート! あの8球で、タイガースは変われるでえ……と私は思った。その日は新選手会長上本のサヨナラヒットで勝利。

 次の巨人戦、先発捕手は藤井に戻ったけれど明らかにリードが変わった。逃げない、ぶれない、かわさない。勝負している、気持ちがいい。前日の鶴岡が刺激になっていることは間違いない。

 藤井、藤井、鶴岡と先発捕手に最後まで任せてなんと巨人戦3連勝を甲子園で遂げた。3試合で取られた点は、たった2点やで! 開幕3連戦では27失点やったのに。

 広島でのアウェーゲーム。藤井と組んで2試合勝てなかった藤浪は、鶴岡と組ませて初勝利。

 16日、17日、藤井先発マスクで連敗するが、途中から鶴岡に筒井や金田を組ませて無失点。梅野も途中出場し、これまた阪神ファン期待、育成から復活の男伊藤和雄とバッテリーを組ませ、こちらも1回をパーフェクト。

 和田監督は何にも考えてないこと無かった、実はしたたかに捕手のこと考えとったんや。かんにんな、文句ばっかり言うて。

 そして甲子園でのヤクルト3連戦、藤井、鶴岡、梅野と先発マスクは日替わりになる。『藤に鶴に梅』やて、阪神のキャッチャーは粋でっしゃろ。そして3連勝! 4月10日から阪神タイガースは9勝2敗、甲子園では負け無しである(4月22日現在)。

 このまま捕手3人の“トロイカ・キャッチャー体制”は続くのか? それとも、誰かが抜け出すのか……。阪神タイガースのスターティングラインナップでキャッチャーが誰なのか。毎日楽しみやわ。

Photo by User Mori Chan on Flickr (From Flickr; description page is (was) here) [CC-BY-2.0 (http://creativecommons.org/licenses/by/2.0)], via Wikimedia Commons