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星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ(28) 4.13~4.16

 国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトしたパラスポーツ・ピックアップ。先週も各地で国際大会が開催され、週末に行われたロンドンマラソンでは、視覚障害の女子など日本選手が活躍しました。陸上競技のグランプリ大会ではアジア新記録連発のニュースも届いています。競技レベルは日々、向上しています。

■陸上競技
・13日: ロンドンマラソンで第2回目となるIPC陸上競技ワールドカップが行われ、視覚障害女子の部で、初出場した日本の4選手が好走。T12(弱視)クラスの道下美里(伴走:堀内規孝、樋口敬洋)が3時間9分40秒で銀メダル、同クラスの西島美保子(同:溝渕学)が3時間20分18秒で銅メダルに輝いた。優勝はスペインのマリア・パレデス・ロドリゲス(T12/同:ロレンゾ・サンチェス)で2時間59分22秒をマークした。また、同クラスの藤井由美子(同:大八木和佳子)は3時間26分10秒で4位、T11(全盲)の金野由美子(同:松浦幸雄)は3時間36分04秒で5位だった。

[caption id="attachment_20490" align="alignnone" width="620"] 前列左から、銀メダルを獲得した道下美里選手、5位になった金野由美子選手、後列左から道下選手伴走者の堀内規孝さん、金野選手伴走者の松浦幸雄さん、道下選手伴走者の樋口敬洋さん[/caption]

 銀メダルを獲得した道下は、自身の持つ日本記録(3時間6分32秒)の更新はならなかったが、今後への抱負を次のように語った。「メダルが獲れてよかったけど、1位の選手とは力の差が大きく勝負にならなかった。ゴール後に体を触らせてもらったら、筋肉のつき方が全然違っていた。今後は私ももっと筋力をつけたり、スピード練習にも取り組んで、まずはサブスリー(フルマラソンを3時間以内で走ること)を目指したい。また、日本の道路と違い、車止めなどの細かいアップダウンがとても多く、何度もつまずいた。世界で戦うにはいろいろな経験が必要だと感じたし、こういう(悪路で走る)練習も取り入れていきたい」

 道下の伴走者でレース後半を担当した樋口さんも、こう語った。「海外レースの伴走は初めてで緊張した。声援がものすごく、叫んでも指示の声が選手に聞こえにくく、つまずかせてしまったり、段差なども多く、(伴走者として)集中力をずっと求められるレースだった。でも、『チーム道下』として初の海外遠征でメダルが獲れてうれしい。ゴール後、(前半の伴走を務めた)堀内くんと3人で輪になったときは涙が出た。今回の経験を、今後の伴走に活かしていきたい」


[caption id="attachment_20491" align="alignnone" width="620"] 左から、伴走者の溝渕学さんと銅メダル獲得の西島美保子選手、藤井由美子選手と伴走者の大八木和佳子さん[/caption]

 銅メダルに輝いた西島は、「タイムにもレース運びにも満足していない。15キロ過ぎから脚が重くなり、苦しんだが、今まで受けたことのないほどすごい声援に後押しされて、とにかくゴールしようと思って走り続けた」と振り返った。ゴール後に激しく痙攣するほどの力走だったという。

 自己新をマークして4位に入った藤井は、「海外旅行も初めてで、長時間のフライトや時差ボケなど不安いっぱいだったが、自己ベストが出てびっくり。(伴走の)大八木さんのナイスアシストと、『チームジャパン』としてレース前からみんなが和ませてくれたので、それほど緊張せずにレースに臨めたおかげ」と笑顔で話した。

 5位の金野は昨年秋ごろからずっと調子を落としていたが、「誰もがいただけるチャンスではないので大事に走ろうと誓ってスタートした。体はやはり前半できつくなったが、気持ちで負けないように心がけた。障害者ランナーに対する声援が本当に素晴らしく、日本のレースでは味わったことがないような高揚感でゴールまで走らせてもらえた」と、安堵の表情を見せた。

 日本盲人マラソン協会の安田享平理事(強化担当)は、「日本代表として初の国際マラソンだったが、各選手が持てる力を発揮してくれた。それぞれの課題も見えたので、今後の強化につなげたい。また、パラリンピックのマラソンで視覚障害女子の部が実施されるよう、今後も国内外に対してアピールしていきたい」と話した。

 車椅子の部女子では、タチアナ・マクファデン(アメリカ)が前半からリードし、1時間45分12秒で2連覇を果たした。昨年リヨン(フランス)世界選手権でトラック種目6冠に輝いた後、シットスキーにも挑戦。ソチ・パラリンピックに初出場し、クロスカントリースキーの1キロスプリントで銀メダルに輝き、身体能力の高さを見せつけた。土田和歌子(サノフィ)は2位のマニュエラ・シャー(スイス)と1秒差の1時間46分45秒で3位だった。

 男子は4位までが2秒以内という混戦だったが、マルセル・フグが1時間32分41秒で制した。日本人最高位は洞ノ上浩太(エイベックス)の4位でタイムは1時間32分43秒だった。

・16日: 日本をはじめ世界各地から約170選手が参加して中国・北京を舞台に行われていた「パラ陸上競技グランプリ北京大会」が閉幕した。14日からの3日間で、トラックとフィールド合わせて133種目が行われ、9つのアジア新記録が誕生した。


■パラ・サイクリング
・13日: 28カ国から約120選手が出場し、メキシコ・アグアスカリエンテスで10日から行われていた、パラサイクリング・トラック世界選手権が閉幕した。初日にタンデム女子B(視覚障害)クラス3キロパシュートで日本新記録となる3分30秒998をマークし、銅メダルを獲得した、鹿沼由理恵と田中まい(パイロット)組は11日の1000mタイムトライアルと13日のスプリントではともに6位にとどまった。

男子はC4クラス(⇒註)の石井雅史が12日の1000mタイムトライアルで4位になったほか、11日の4キロパシュートで9位、またC3クラスの藤田征樹は11日の3キロパシュートで9位、12日の1000mタイムトライアルで10位だった。

(⇒註)Cクラス: パラ・サイクリング競技における障害クラスのひとつで、主に運動機能障害や麻痺のある選手のクラス。障害の重い順にC1~C5まで5クラスに分かれている。基本的に通常の競技用自転車を使用するが、義手や義足などを使ったり、サドルやペダルなどに多少の改造を施すこともある。

■ノルディックスキー
・16日: ソチ冬季パラリンピック開会式で旗手を務めた太田渉子(日立ソリューションズ)選手が現役引退を表明した。同選手は山形県尾花沢市出身の24歳で、ソチ大会ではバイアスロン・ショートの6位入賞が最高。2006年のトリノ大会バイアスロン・ロングで銅、10年バンクーバー大会ではクロスカントリースキーのクラシカル・スプリントで銀メダルを獲得している。今後、競技の普及活動などに取り組む意向なども示した。

(カンパラプレス配信+NBSオリジナル)
(写真撮影:星野恭子)