「飛ぶボール事件」は、日本球界最大の病巣を露呈させた最悪の事件(NBS編集部)
日本のプロ野球界(コミッショナー&事務局)は、いったいどういう神経をしているのか?……と言いたくなる事態が、またまた勃発した。今シーズン使われている公認統一球の一部(!)が規定以上の反発力を示した、というのだ。
しかも、コミッショナー事務局長が、その発表の記者会見を、公式戦の行われている真っ最中の4月10日午後7時から行ったとは……。もう嗤うほかない。
そもそも今シーズンも「ボールが飛ぶ」ことくらい、試合を見ていれば(特にタイガースの試合を見ていれば)誰にでもわかる事実であり、何を今更……である。おまけに、統一公認球は、各試合の主催球団が管理していたという。これもまた嗤うほかなく、コミッショナーも事務局関係者も、よほど日本の野球に精通しない人物ばかりと言えそうだ。
ボールを乾燥機の中に入れておけば(あるいは加湿器の中に入れておけば)どのようになるか。そんなことくらい誰にもわかる。事実、各球団が自分の選んだボールに、そのような手を加えていた過去もある(そのくらい、長年日本のプロ野球を見てきた者にとっては常識だ)。
どの球団が打撃戦を望むのか? または投手戦を望むのか? またイニングによって2種類のボールを使い分け(アンパイアに渡すボールを変え)、ベンチからのサインによって、打者にファウルばかりを打たせた(自球団の望むボールに変えさせた)なんて過去もある。
ベテランのスポーツ記者(プロ野球担当記者)ならば、そのくらいのことは熟知しているはずだが、何しろ巨大メディアが球団を所有し、実質的にプロ野球を運営しているとなると、そのメディアだけでなくあらゆるメディアに所属している「社員スポーツ・ジャーナリスト」は「真実」を書けなくなる。あの球団は飛ぶボール、この球団は飛ばないボール……などと暴露して野球ファンを落胆させては(減少させては)いけないから……。
日本のプロ野球は、各球団が自分勝手に勝つ(優勝する)ことだけを考え、そのためには手段を選ばない、というなかで「発展」してきた。そろそろ、そんなクダラナイ球団エゴイズムは捨て、プロ野球全体(日本球界全体)の発展を目指し、そのなかで各球団が堂々とスポーツマン精神にのっとって力を競う団体に変革するべきだろう。
そのためには、スポーツ・ジャーナリズムを担うべきメディアは、球団を所有したり、試合を主催したりすることから退き、健全な批判者(スポーツジャーナリスト)を目指すべき。アメリカ第3代大統領のトーマス・ジェファーソンも言っている。「新聞(ジャーナリズム)のない政府か、政府のない新聞か、どちらかを選ばなければならないなら、私は躊躇なく後者を選ぶ」と。正しく批判し批評できる者のいなくなった団体(政府)は、止めどなく堕落するほかないのだ。
(NBS編集部オリジナル 文責=NBS編集長主筆・玉木正之)