星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ(26) 3.29~4.4
国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。
4月1日から新年度がはじまり、障害者スポーツの所管が、厚生労働省から文部科学省に移管されました。これは、パラスポーツにとって大きな転機となるはずです。今後の発展に向けて大きな一歩となるよう期待がかかります。私たちメディアで仕事をする一人として、私も、しっかり見守っていかねばと思います。
■東京発
・4月1日:パラリンピックなどの障害者スポーツの所管が厚生労働省から文部科学省に移管された。2020年東京大会に向けて、強化や支援などの施策を一元的に進めていくのが狙い。それに伴って、文科省のスポーツ・青少年局内に「オリンピック・パラリンピック室」と「障害者スポーツ振興室」が設置された。前者は2020東京大会に向けてトップ競技者を支援し、東京都や大会の運営に当たる組織委員会との連絡や調整などを行う部署で、後者は一般の愛好家を対象とした部署になる。
また、今月中にはパラリンピック強化策などを検討する有識者会議を立ち上げるほか、下村博文文科相はパラリンピックのメダル報奨金(金メダル現100万円)をオリンピック(同300万円)と同額にする方針なども発表した。
・4月1日: 公益財団法人日本障害者スポーツ協会は定款の改正を行い、同協会の名称を「日本障がい者スポーツ協会」に変更した。変更の理由については、障害のある人を法律では「障害者」と表記するが、「害」の字を不快に思う人もおり、近年は法的に支障のない範囲で「障がい者」と表記するケースが増えている状況を踏まえたとしている
また、名称の英語表記についても、これまでは「Japan Sports Association for Disabled(略称JSAD)」としていたが、「Japanese
Para-Sports Association (略称JPSA)」に改称した。理由は、国際パラリンピック委員会が、障がい者を表す「the disabled」を不適切な単語とし、「障がい者スポーツ」について、「Para-Sports」という表現を推奨しているからとしている。なお、「Para」は「もうひとつ」を意味する英語で、「Para-Sports」で「障がい者スポーツ」を表すと補足している。
さらに、他国の表記を参考に、英語国名を「Japan」から形容詞の「Japanese」に改め、さらに管轄する日本パラリンピック委員会の英語表記も、「Japan Paralympic Committee」から、「Japanese Paralympic Committee(略称JPC)」に改称された。
■車椅子バスケットボール
・3月28日: 日本女子代表が北米遠征から帰国した。18日から21日まではカナダで「女子トーナメント・イン・トロント」に参加してオランダと2戦、カナダ、オーストラリアと1戦ずつの全4試合、26日~27日にはアメリカで「レイクショア・カップ2014」に参加してアメリカ、オーストラリアと2戦ずつ4試合を戦った。結果は全敗に終わったが、今遠征は6月に迫った世界選手権に向けての強化策の一環であり、同選手権の舞台となるカナダ・トロントで強豪国と競い合えたことは貴重な経験となったという。
なお、世界選手権は6月20日から28日までの予定で開催され、参加国は日本をはじめ、オーストラリア、ブラジル、中国、フランス、ドイツ、イギリス、メキシコ、オランダ、ペルー、アメリカに、7連覇を狙う地元カナダの全12チームに決定している。20年の選手権史上、初めて男女別日程での開催となる。車椅子バスケットボールの世界的普及による選手権参加国数の増大により、運営面で同時開催が難しくなったことが理由だという。
ちなみに、男子大会は史上最大の16カ国が参加して、7月3日~15日(試合日程は未発表)の予定で韓国・仁川(インチョン)での開催が決まっている。参加国日本を含む全16チームで、すでに予選リーグのグループ分けが抽選によって決まっている。グループAがイギリス、メキシコ、韓国、アルゼンチン、Bがオランダ、スペイン、イラン、日本、Cがトルコ、アルジェリア、コロンビア、アメリカ、Dがドイツ、スウェーデン、オーストラリア、イタリア。
■パワーリフティング
・4月4日: UAEのドバイで5日から、パワーリフティング世界選手権が開幕する。60カ国から約360選手がエントリーしており、2012年ロンドン・パラリンピックをも上回る過去最大規模での開催となる。日本からも、ロンドンで6位入賞を果たした大堂秀樹ら8選手がエントリーしている。なお、大会の模様は、Paralympic.orgでライブ・ストリーミング中継される予定だ。
パワーリフティングは、障害の種類や程度によるクラス分けはなく、脊髄損傷、下肢切断、脳性麻痺、下肢機能障害など下肢に障害のある選手を対象にベンチプレスで持ち上げる重量を競う競技で、男女別、体重別に行われる。バーベルをラックから外し、いったん肘を伸ばして持ち上げた状態から、審判の合図とともに胸まで下ろして静止させ、再びバーベルを並行に押し上げ、肘を完全に伸ばした状態まで持ち上げる。
■パリ発
・3月28日: 国際パラリンピック委員会(IPC)のフィリップ・クレイヴン会長は、フランスの フランソワ・オランド大統領から、レジオン・ドヌール勲章オフィシエ(⇒註1)を授与された。同会長の、大成功を収めたロンドン・パラリンピックへの尽力なども含め、IPCメンバーとして、そして、2001年からは会長としてパラリンピック・ムーブメントにおける長年の貢献が評価された。
イギリス出身の同会長は1972年に水泳と車椅子バスケットボールの英国代表としてパラリンピックに初出場し、76年から88年までの4大会は車椅子バスケットボール選手として活躍した。引退後は国際車椅子バスケットボール連盟会長も務めている。
同会長は勲章の授与にあたり、「IPCとパラリンピック・ムーブメントにおける私の役割を評価していただき、大変光栄です。フランスは私の人生において大切な国。車椅子バスケットボールをプレイした国であり、妻と出会った国でもあります。こんな名誉な勲章をいただき、言葉にできないほどの喜びです。この栄誉は私に対してだけでなく、パラリンピック・ムーブメントに関わる全ての人たちに対するものだと思っています」などとコメントした。
(⇒註1)レジオン・ドヌール勲章:1802年にナポレオン・ボナパルトによって創設されたフランス共和国最高の勲章で、軍事、文化、科学、産業、商業などで、同国に多大な貢献をした人物や団体に授与される。受賞対象者はフランス国民だけでなく、フランスの経済や文化交流の発展に多大な貢献をした海外の功労者も含まれる。この勲章には、上から順にグランクロワ(Grand-Croix)、グラントフィシエ(Grand Officier)、コマンドール(Commandeur)、オフィシエ(Officier)、シュバリエ(Chevalier)という5段階の栄誉等級がある。
(カンパラプレス配信+NBSオリジナル)