桂吉弥のスポーツ辛口噺②「W杯代表メンバーは、いつ決まる?!お楽しみはこれからだ!!」の巻
3月5日の国立競技場、日本対ニュージーランド。ブラジルW杯に向けての2014年最初の日本代表戦、試合は4対2で勝利した。
この尻すぼみに終わって、批判が囂々と渦巻いた試合で、私が一番残念に感じたのは、後半80分から入った豊田陽平だった。
ゴール正面でシュートの機会があった時に本田にパス。本田がボールを相手にとられてクリアされた。「何でシュート打てへんの! 自分で行きーな!」と叫んだのは(関西弁でない人も含めて)私だけではなかったと思う。
残り時間はわずか10分。得点は2点リード。この試合の4日前、Jリーグのオープニングゲームで2ゴールをあげた豊田に期待されていたことは何だったか?
直前の合宿もほとんど日数は無く、選手間のコンビネーション・プレイも(おそらく)できあがっていないはず。しかも、いわゆる代表レギュラーメンバーも揃っていないチームで、この時間帯に、パスをつないで、崩して点を取ることなど、誰が求めたか……。
『もっとワガママになれよ!』
そう思ったのは、私だけではないだろう。
香川や本田が、ワガママが許される状況のなかで存分に走り回った前半を見ているだけに、いっそう不満の残る豊田のプレイだった。
3日後の8日。サガン鳥栖に戻ってのレッズ戦は、彼の奪った1ゴールで勝利した。その時のように、先発で力が出る選手なのか……、途中からでも空気をかえられる選手なのか……。どっちにしろ、W杯のメンバーに入るにはもっともっとアピールが必要だと思う。
あと100日を切ったW杯ブラジル大会だが、4月7日から9日に国内組だけの代表候補合宿が開催予定されている。Jリーガーは、それまで1ヶ月足らずのうちの4試合から6試合での活躍次第で、合宿に呼ばれる選手になれるかどうかが決まるのだ。
「もうほとんどザックの頭の中ではメンバーは決まっている」との声も多いようだが、私はそうは思わない。怪我をしている長谷部や内田も、以前の状態かそれ以上のコンディションで戻ってこなければスタメンで使うことはしないと思う。
実際、山口蛍は、遠藤と長谷部で長年不動だったボランチの一角を掴みつつある。サイドバックもセレッソの丸橋祐介は十分チャンスがある。クロスも正確性を増してきたし、一度フットサルの同じチームになったことがあって、その人柄がめちゃめちゃ良かったんよなあ……というのは余談だが、国内組にもまだまだチャンスありだ。
5月13日が期限のW杯メンバー1次登録は30人。その後に国内合宿をして、5月27日は対キプロス戦(埼玉スタジアム)。その後6月2日最終登録の時には、いよいよ23人が決まる。皆の驚く選手が呼ばれ、びっくりするような選手が落選する……と私は確信している。なぜなら……。
2002年日韓W杯の年、私は神戸ウイングスタジアムのボランティアをしていた。もう落語家になっていたけれど、どうしてもW杯に参加したくて、いくつかの仕事を断りスタジアム・ボランティアに参加したのだ。W杯の本番前の5月2日キリンカップ・日本対ホンジュラス戦があった。
我々ボランティアも本大会の予行演習を兼ねて業務にあたった。試合は3対3だったけれど、2ゴールを決めたのは中村俊輔だった。彼のフリーキックと直接ゴールに入ったコーナーキックの軌道は今でもはっきり覚えている。スタジアムは揺れた。
『日本がグループHで2位になればここに戻ってくる。グループCを1位通過するであろうブラジルと神戸ウイングスタジアムで戦って欲しい。そしてその時今日のようなゴールを俊輔に決めてもらおう』……みんなそう思って、拍手と歓声をトルシエジャパンに贈った。しかし……
現実はそうはならなかった。日本はグループ1位通過。そして、宮城スタジアムでトルコに負けた。神戸ではブラジルとベルギーの試合があった。そして驚くことにこのW杯のジャパンのメンバーには、中村俊輔がいなかったのだ。目の前であのキックを見ていた者からすると狐につままれたようだった。
後日トルシエのインタビューで俊輔の怪我のことや同じポジションの選手が余っていたことを聞いても、いまだに腑に落ちない。
しかし現実は俊輔抜きのメンバーでベスト16入りしたのだから、W杯のメンバーというものはそれだけ厳しく、その時の運のようなものも大いに作用する……ような気もする。
前回2010年の南アフリカW杯でも、直前の雑誌NUMBERの表紙は中村俊輔だったのに次号の表紙は吠える本田圭佑になっていたではないか!そう考えるとつくづく俊輔はW杯に縁が無いんやなあと同情してしまうが……。
メンバーを今から固定したって、そのままいく訳がないだろう。怪我をする選手が出るかもしれない、ソチ五輪のカーリングの選手のようにインフルエンザにかかる選手もいるかもしれない。コンディションがどうやっても上がらない選手も出るだろう……。ワールドカップの代表メンバーは、ワールドカップのが幕を開けたと思えるときまで、わからないものなのだ。
アジア・カップ? 親善試合? W杯予選?いやいやザッケローニのワールドカップ「本戦」の戦い方はまだ誰も見ていないでしょ。その時に一番輝き、一番走り、ベストなイレブンを監督は選ぶと思う。
つまり全てはこれから!
ああ、楽しみ楽しみ。
PHOTO By Mark Hillary (Flickr:
England v Brazil in Rio) [CC-BY-2.0 (http://creativecommons.org/licenses/by/2.0)], via Wikimedia Commons