ソチ・パラリンピックの裏で考え直すべき森元首相の「暴言」(玉木正之)
連日熱戦の続いているソチ・パラリンピックは、日本アルペン・スキー陣のメダル獲得ラッシュもあり、大いに注目が集まっている(その割に、スカパー!を除いてNHKも民放も、テレビ放送が少なすぎるのは、極めて残念なことだ)。
そんなソチ冬季パラリンピック大会に関して、次のような発言があったことも忘れてはならないだろう。
<3月に入りますと、パラリンピックがあります。このほうも行けという命令なんです。オリンピックだけ行ってますと、組織委員会の会長は健常者の競技だけ行ってて、障害者のほうをおろそかにしてるんだと。こういう風に言われるといけませんので。ソチへまた行けと言うんですね。今また、その日程組んでおるんですけど、「ああ、また20何時間以上も時間かけて行くのかな」と思うと、ほんとに暗いですね。>
これは森喜朗元首相(現・2020年東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長)が、2月20日に福岡市で行った講演会『第262回 毎日・世論フォーラム』での発言だ(文章は、荻上チキ氏がTBSラジオ「荻上チキ・Session-22」のニュースコーナーでこの発言を取りあげ、講演会での「森発言」を書き起してネットに掲載されたものから引用させていただきました)。
森元首相は、ソチ・パラリンピックへ、「他人」に言われて、暗い気持ちでイヤイヤ行くのか?それが日本の五輪組織委員会の最高責任者の態度なのか!? 気持ちが暗くなるのは、われわれ国民のほうである。
メディアでは、浅田真央選手に関する<あの子、大事なときには必ず転ぶんですよね>という発言ばかりが取りあげられたが、このパラリンピックに関する発言のほうが、問題が大きいと言えるのではないだろうか。
ほかにもフィギュア・スケート・アイスダンスのリード兄弟に対する五輪出場の経緯に関する「事実誤認」やロンドン・オリンピック・パラリンピック組織委員長のセバスチャン・コー氏の(このスポーツ界で超有名な金メダリストの中距離走者の)名前を「ジョン・コーツ」などと間違えたこと……などなど、山ほど問題点の指摘できる暴言・失言・妄言のオンパレード(詳細は前出・荻上チキ氏の『森喜朗元総理・東京五輪組織委員会会長の発言 書き起し』をお読みください。http://www.tbsradio.jp/ss954/2014/02/post-259.html)
五輪組織委員会会長としては、あまりに無知が過ぎるとも言えるこの一連の発言には(小生も講演会の模様を、部分的にビデオで見たが)、講演会場の聴衆も、あきらかに呆れたように静まりかえっていたほどだった。が、なぜか一部のマスメディアは、この一連の発言に対して「擁護論」まで展開し、多くのマスメディアも、あまり「追求」しなかった。
それは「五輪組織委員会会長」の「権力」と「権限」を意識したためか……どうかはともかく、この「布袋腹」が2020年東京五輪の開会式で、世界中から注目されるなか、挨拶に立つことだけは避けてほしい……と思うのは私だけだろうか?
(「カメラータ・ディ・タマキ」+NBSオリジナル)