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早大ラグビー部が逆転負けする理由(松瀬 学)

『勝敗の分岐点。ワセダ自滅のワケ』

またも、同じような展開が繰り返された。大学ラグビーで、早稲田がロスタイム、明治に痛恨の逆転負けを喫した。これで今季、筑波大戦、帝京大戦といずれも終盤に逆転されてしまった。

早稲田OBとしては無論、悔しい。シンジラレナイ。体力不足か、技術不足か、いや精神的なスタミナ不足か。なぜなのだろう(以下は、スマートフォンのアプリサイト『スポーツ屋台村』(五輪&ラグビー担当)のコラムをベースとし、加筆修正したものです)。

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12月2日の伝統のラグビー早明戦は明治のロスタイムの劇的な逆転勝利(M33-32W)に終わった。確かに明治の闘志は凄まじかった。でもいったい早稲田はどうしたのだ。早稲田らしさ、つまり勝利への執念、試合巧者ぶりは何処にいったのか。シンジラレナイ。ゲームマネジメントがひどかった。

ラスト10分。早稲田は背番号3番の右プロップ、垣永真之介がコラプシング(スクラムを故意に崩す)の反則をとられ、認定トライを奪われた。レフリーの平林泰三さん、それはないと思う。ゴール前の一発目のスクラムの反則でいきなり認定トライとは……。もしもスクラムが崩れなかった場合、明治がスクラムトライまで押し込むことはできなかっただろう。そもそも、ヒットの当たる位置から双方、ずれていたのだ。

でも、まだW32-26M。早稲田は6点のリードがあった。ここからゲームをどう動かしていくのか。後半、キック力のある間島陸をSOに入れたのだから、キックから敵陣に入ってランで揺さぶっていけばいい。

でも簡単なディフェンスミスを犯し、自陣ゴール前のピンチを招く。ラスト2分。相手ボールのラインアウトをターンオーバーした。よし、と思ったのも束の間、早稲田は「ピック&ゴー」のボールキープ策に出た。それはないだろう。ブレイクダウンに絶対の自信を持つ帝京大ではあるまいし……。6点差なのだ。トライ&ゴールで逆転されるのだ。守りに入るな。敵陣にいかんかい、と心で叫んだ。

ここはボールを出して、ぼっかんとまっすぐ蹴ればよろしい。案の定。ペナルティーをとられて、明治にボールを渡した。シンジラレナイ。でもFWががんばる。明治の怒とうの攻めをしのぎ、ロスタイム、ラインアウトで再び、ターンオーバーに成功した。

勝った。そう思った。でも、またもFWが時間稼ぎのサイド攻撃を繰り返そうとした。なんだ、勝ちたくないのか。ブレイクダウンで明治にボールを奪い返され、これが劇的なロック古屋直樹の逆転トライ(ゴール)につながった。

最後のシーンについての感想を聞かれ、早稲田の後藤禎和監督は声を荒げた。「もう、二度とさせません。ボール出して、蹴るなり、なんなりさせます」と。

ところで、ドタバタした試合になったのは、スクラム、ラインアウトの不安定さゆえである。特にスクラム。ひと言でいえば、アングルとあたりが悪かった。まとまりがなかった。とくに明治の3番が小柄な須藤元樹に変わった後半。早稲田1番の上田竜太郎が苦しんだことが影響し、早稲田スクラムの右サイドが完全に当たり負けしていく。

100回目のメモリアル早明戦で、こんな早稲田を見ることになるとは。13点差をひっくり返されるとは。シンジラレナイ。

なぜ我慢できないのか。基本スキルが甘いのか、考える力が薄れてしまうのか。選手の素材は悪くない。でもゲームマネジメントが雑で、終盤にピンチが続くと判断を誤ってしまう。ハンドリングミスを犯す。

フィジカル・フィットネスはあるのだから、おそらく「コンディショニング」の問題だろう。この場合のコンディショニングとは、生活習慣や練習・試合前後の日常のケアを指す。実力を試合でフルに発揮させるための心身の準備である。試合の最後にそれが出る。

とくにメンタル面の準備は、ふだんの生活がすべてとなる。規律ある生活を送り、練習でからだだけでなく、頭とメンタルも鍛えることが必要となるのだ。

【アプリサイト『スポーツ屋台村』&NLオリジナル】