星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ(21) 2.6~2.13
国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。ソチ冬季パラリンピック開幕まであと3週間。大会への世界的な注目が高まりつつあるなか、ノルディックスキーの日本代表チームが国内大会に出場、順調な調整ぶりを見せました。
■クロスカントリースキー
・8日: 障害者スキーの国内最高峰の大会、「2014ジャパンパラクロスカントリースキー競技大会」が北海道旭川市の富沢クロスカントリーコースで開幕。国内外からエントリーした44選手のなかには、ちょうど1カ月後に迫ったソチ冬季パラリンピックの代表8選手のうち6選手も含まれ、圧倒的な強さを見せた。
男子座位5kmでは、パラリンピック2大会目となるソチではメダル獲得の期待がかかる久保恒造(日立ソリューションズ)が出場3選手中、時差(30秒)スタートの3番手でスタートしたがトップフィニッシュでの完勝。久保は、「ソチへの最終調整の第一歩となる大会。今日を機にコンディションをしっかりあげていきたい」と話した。
5人が出走した男子立位クラシカル10kmでは、パラリンピック5大会連続出場のベテランで、2010年のバンクーバー大会ではこの種目で金メダルを手にした新田佳浩(同)が圧巻の走りで優勝。連覇のかかるソチに向けて、「今日の目標は達成できた。ソチ五輪も開幕し、(パラリンピックも)『いよいよだな』と楽しみな気持ちが高まっている」と笑顔。また、左手に障害があり、通常は右手1本でストックを使う佐藤圭一(エイベックス)は、1月末のワールドカップ・ドイツ戦で転倒し右手首を負傷した影響で、この日はノーストックでの出場となった。新田から約5分遅れての準優勝に、「ノーストックは練習でもよくやっている。今日は脚力チェックを目的にした出場だったので、まずまず」と振り返った。
[caption id="attachment_19193" align="alignnone" width="620"] ノーストックで力強くスタートを切る、佐藤圭一選手(9日のレースより)[/caption]
女子立位クラシカル5kmはソチ代表組3人の争いとなったが、ソチで3大会目の出場となる太田渉子(同)が優勝。競技初日(3月8日)のバイアスロン・ショート(6km)でメダル獲得を目指すが、日本選手団の旗手にも指名され、競技前夜の開会式でチームを先導する予定だ。「旗手に選ばれたのは光栄。開会式参加も(3大会目で)初めてなので楽しみたい。(翌日のレースは)女子のエースとしてチームに勢いがつけられたら」と意気込む。
同2位に入った阿部友里加(岩手県立盛岡南高)は、パラリンピックはソチが初出場。「まずは大会を楽しみたい」と話し、出場種目はこの日時点で未定だったが、「出られる種目は全て8位入賞を目指してがんばりたい」と抱負を語った。また、3大会連続出場となる出来島桃子(新発田市役所)はこの日は3位だったが、ソチに向けては、「この後の事前合宿でしっかり調整し、ソチでは入賞目指して1レースごとにしっかり走りたい」と話した。
・9日: ジャパンパラ大会2日目は男女0.8kmのスプリント競技が行われ、前日につづき各カテゴリーでソチ代表選手が圧倒、男子座位の久保、同立位の新田、女子立位の太田がそれぞれ2冠を達成した。日本代表の荒井秀樹監督は代表選手陣の今大会での結果を振り返り、「ソチに向けたトレーニングの一環として位置づけた大会で、選手それぞれが目標をもっての出場だった」と話した。
大会はこの日で閉幕。表彰式は会場である旭川市内で6日から開催中の「第55回旭川冬まつり」のメインステージで旭川市民ら約100人が見守るなかで行われた。つづいてソチ代表の壮行会も行われ、選手と派遣スタッフが壇上に立ち、市民から激励を受けた。選手を代表して地元北海道出身の久保が、「選手団一丸となって頑張ります。私はバイアスロン競技でメダルを狙います。道産子魂で頑張ってきたいと思います」と抱負を述べた。
なお、ソチ代表は今大会に出場した6選手(久保、新田、佐藤、太田、阿部、出来島)に、岩本啓吾(飛騨神岡高等学校3年)と江野麻由子(秋田南高等学校)を加えた総勢8名。今後はイタリアでの海外合宿、あるいは国内調整など、選手ごとに最適と思われる最終調整を行い、ソチ大会に向かってコンディションを仕上げていく予定だという。
・13日: 日本障害者スポーツ協会は同ジャパンパラ大会(8日~9日)の速報動画を公式サイトで公開した。視聴はこちらのリンクから。
■ロシア発
・6日: ロシア・ソチで4日から行われている国際オリンピック委員会(IOC)の第126回総会で、パン・ギムン国連事務総長がスピーチを行い、パラリンピアンたちの数々の感動的なパフォーマンスを称賛し、3月に開幕するソチ冬季パラリンピックの重要性について強調した。「パラリンピックはソチ冬季大会で欠かせない重要な要素。多くの人々と同様に、私もパラリンピック選手たちから刺激を受けているひとりです」
また、健康や平和を推進し、障害のある人々も含めた人権を守るスポーツの力についても言及した。スポーツには異なるバックグランドをもつあらゆる人々を差別なくひとつにでき、否定的なイメージを壊して前向きな姿勢をつくり出す力があるとし、「スポーツや体を動かす活動は生活の一部であり、その広まりが全てのバリアを乗り越える。スポーツは人々を自然に結束させるすばらしい力を持っているのです」
■ドイツ発
・10日: 国際パラリンピック委員会(IPC)は、3月8日の国際女性デーにパラリンピック精神を体現し、社会に勇気を与える活躍した女性を表彰する予定にしており、この日、5名の最終ノミネート者を発表した。同5名は以下の通り。
ライマ・バタローワ(ロシア)
30年にわたる現役生活ではパラリンピックで13、世界選手権で18のタイトルを獲得、引退後は母国ロシアにおけるパラ・スポーツの発展に向けて大きく貢献。現在は同国のパラリンピック委員会副委員長となり、ソチ冬季パラリンピック組織委員も務めている。
ジェニー・ハマーシュー(デンマーク)
元ゴールボール選手で、1994年アトランタ・パラリンピックに出場。同国パラリンピック委員会で活躍後、2013年に国際視覚障害者スポーツ連盟の会長に就任している。
ナディア・ハルシマナ(ブルンジ)
車椅子レースのコーチで、同国において障害のある女性や女児を対象にした初スポーツクラブ設立に尽力。その結果、女子シッティング・バレーボールの国内選手権大会が誕生。一ボランティアから、現在は同国パラリンピック委員会事務次長を任されるまでになり、同国パラ・スポーツの発展に大きく寄与している。
ナタリア・パルティカ(ポーランド)
五輪とパラリンピック両大会に2008年北京、12年ロンドンと2大会連続出場を果たした卓球選手で、13年には国際卓球連盟に新設された「夢づくり大使」にノミネートされた。また、同国の「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」賞も受賞。
ファトマー・ラクシャーニ(イラン)
イランにおける女子パラ・スポーツの発展に多大な貢献を果たし、現在、アジア・パラリンピック委員会の女性スポーツ部門の委員長。元水泳選手でもあり、同国のスポーツ活動にも積極的に関わっている。
なお、表彰式は3月8日、ソチ冬季パラリンピック大会中に特別な式典を催して行われるという。
・11日: IPCは、1月の最優秀選手としてオーストリアのアルペンスキー選手、マーカス・サルチャーが選ばれたと発表した。ノミネートされた5選手中、一般投票の得票率42%の圧勝だった。1月中に開催されたワールドカップで5勝したことが評価されたサルチャーは受賞に寄せて、「夏場に繰り返した技術的なトレーニングを繰り返したことが報われた。(3月のソチ冬季パラリンピックでは)メダル獲得を目指したい。どんな色でもかまわない。メダルが僕のゴールだから」とコメントした。
なお、1月末の全豪オープン車椅子テニスの部で単複2冠を達成した国枝慎吾も最終ノミネートされた5名に含まれていたが、惜しくも受賞を逃した。
(カンパラプレス配信+NBSオリジナル)
写真:星野恭子