星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ⑳1.29~2.5
国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。今回は開幕まであと1カ月となったソチ冬季パラリンピックの日本代表選手たちによる、大舞台に向けた力強い決意表明をはじめ、海外で活躍を見せた夏季スポーツの選手の話題などもお伝えしています。
■東京発
・2月5日: 3月7日に開幕するソチ冬季パラリンピックの日本代表選手団の結団式と壮行会が、東京都内のホテルで行われ、全選手20名、役員30名(全35名)が出席した。日本代表は3競技(アルペンスキー、クロスカントリースキー、バイアスロン)に出場する。大会はそのほかアイススレッジホッケーと車椅子カーリングを加えた5競技72種目が行われる。
[caption id="attachment_18956" align="alignnone" width="620"] 結団式・壮行会後の記者会見で。左から森井大輝主将、太田渉子旗手、狩野亮選手、新田佳浩選手[/caption]
結団式では選手を代表して、4度目のパラリンピックで初めて主将として臨むアルペンスキーの森井大輝(33歳/富士通セミコンダクター)が決意表明を行った。
「失敗を恐れず、自らの可能性を信じ、挑戦しつづける大切さや、重ねてきた努力は決して自分を裏切ら ないことなど、本当に多くのことをスポーツは教えてくれました。私たちパラリンピアンはスポーツの力を誰よりも信じ、実感しています。ソチ・パラリンピックではアスリートとして全力で戦う姿を通して、日本のみなさんだけでなく、世界中のたくさんの人にスポーツの力を、挑戦することのすばらしさを伝えてきます。(ソチ大会は)2020年東京オリンピック・パラリンピックの大成功に向かう第一歩。私たちは全力で競技することを誓います」
また、日本選手団団旗が高鳥修一厚生労働大臣政務官から荒木雅信選手団団長(日本障害者スポーツ協会科学委員長)を経て、旗手を務めるクロスカントリースキーの太田渉子(24歳/日立ソリューションズ)へと授与された。
荒木雅信団長は「今大会は新たな挑戦。具体的で現実的で達成可能な目標として、金メダル3個以上、銀3個以上、銅5個以上で総数10個以上。メダルランキングで10位以内と設定しました。団長として選手が思い切ってレースに臨めるよう環境を整えたい」と意気込みを語った。
続いて行われた壮行会には安倍晋三首相も駆けつけ、「日本から送る声援と熱意を力に変えてがんばっていただきたい」と選手団を励ました。
大会はロシア南部のソチを舞台に5競技72種目が行われ、3月16日に閉幕する。
■代表選手コメント
[caption id="attachment_18957" align="alignnone" width="620"] 左から村岡桃花選手、久保恒造選手[/caption]
【アルペンスキー】
・森井大輝(33歳/富士通セミコンダクター)
スポーツの持つ力を一人でも多くの方に知っていただきたいと思う。そのためにも僕自身が、今まで取ったことのない金メダルを獲ってきたい。
・狩野 亮(27歳/マルハン)
座位の選手でメダル5個を獲った前回バンクーバーから4年、ソチの舞台では日本選手で表彰台独占を目指して戦ってきたい。また、アルペンスキーの競技レベルの高さを皆さんに知ってもらい、障害者スポーツでなく、純粋にスポーツとして楽しめるレベルにあることを伝えたい。
・村岡桃花(17歳/正智深谷高等学校2年)
初めての出場なので、いろいろと緊張やプレッシャーがありますが、逆にそれを力に変えてがんばってきたい。競技歴(2年)が浅いので、さまざまな面で未熟だが、ソチまでまだ少し時間があるのでスキルアップを目指して磨きたい。
・鈴木猛史(25歳/駿河台大学)
(銅メダルを獲ったバンクーバー後)森井(大輝)先輩からアドバイスをいただき、自分の滑りに自信を持つことができ、メンタル面が強くなった。おかげで成績も上がってきた。バンクーバーのメダルは運が良かったと思う。ソチでは自分の実力で、金メダルを獲りたい。
【クロスカントリースキー/バイアスロン】
・太田渉子(24歳/日立ソリューションズ)
旗手という大役を務めるが、日本選手団の顔として恥かしくないような態度と競技を行い、開会式翌日のバイアスロン競技で(日本チーム)1個目のメダルを私が獲れるよう、精一杯がんばりたい。たくさんの人の応援と支えに感謝の気持ちを伝えたい。
・新田佳浩(33歳/日立ソリューションズ)
開幕まであと1カ月。標高1500mのソチに合わせてイタリアで高地トレーニングを行い、スピード維持力をさらにあげたい。また、ソチは日本チームにとって世代交代の大会だと思う。ベテランの選手が若手を引っ張り、次の18年平昌大会につながる大会にすることも目標にしたい。
・久保恒造(32歳/日立ソリューションズ)
前回バンクーバーは(メダルを逃し)悔いが残ったので、この4年間は結果にこだわって練習してきた。その集大成をいよいよ発揮できるのだと思うとソチが楽しみ。バイアスロン・ミドルでの金メダルを目標に、確実にメダルを獲得して帰ってきたい。
・出来島桃子(39歳/新発田市役所)
3度目のパラリンピック。スキーの技術は大会ごとに上がっていると思う。ソチでは今まで練習してきたことをすべて出せるようにがんばってきたい。
・岩本啓吾(18歳/岐阜県立飛騨神岡高等学校3年)
クロスカントリースキーは冬のマラソンと言われるが、走り切った後の達成感が魅力。(初出場の)ソチではまずは完走が目標。そうすれば順位もついてくると思う。
・荒井秀樹代表督
ソチ大会は2020年東京オリンピック・パラリンピック決定後の初のパラリンピックになる。今回は幅広い顔ぶれが揃ったチームになったが、特に高校生が3人も出場する。そういう意味ではこれからのパラリンピックを左右する極めて重要な大会だと思う。結果だけでなく、僕らがやることが次につながると思うのでがんばってきたい。
■アルペンスキー
・1月25日~28日: 障害者アルペンスキーの日本最高峰の大会、「ジャパンパラアルペンスキー競技大会」が長野県の白馬八方尾根スキー場で開催された。参加選手にはソチ・パラリンピックの日本代表選手が揃い、大舞台に向けて順調な調整ぶりがうかがえる活躍を見せた。
ソチ代表主将の森井大輝が個人3冠(回転=SL、スーパーコンビ=スーパーG+回転、スーパーG)を達成したほか、大回転(GS)では男子立位の三澤拓(キッセイ薬品工業)、座位で狩野亮が、女子座位でも村岡桃佳が優勝。また、回転の男子立位はベテランの東海将彦(エイベックス)が2本とも最速タイムで完勝した。
なお、今大会では視覚障害者や聴覚障害者のカテゴリー種目も実施された。
■クロスカントリースキー
・1月29日:北海道・旭川市の富沢クロスカントリーコースで2月7日に開幕する障害者クロスカントリースキー競技の国内最高峰の大会、「ジャパンパラクロスカントリースキー競技大会」の概要が発表された。同大会は国際基準に則って運営される大会であり、目前に迫ったソチ・パラリンピック日本代表をも顔を揃え、高レベルの競技が期待される。7日夕の開会式を経て、競技は8日(土)からスタートし、9日(日)まで行われる。
8日(土)10:00~
クラシカル:男子10km、女子5km/シット(座位):男子5km、女子2.5km
9日(日)9:30~
男女フリースプリント(立位)0.8km/男女スプリント(シット)0.8km
■ゴールボール
・1月26日: 海外遠征中の日本代表女子チームがカナダ・モントリオールで24日から行われていたカナダ国内大会に昨年に続いて出場し、2連覇を達成した。日本は6チーム総当たりの予選で5戦全勝し、1位通過で決勝トーナメントに進出。準決勝でブリティッシュコロンビアチームを2-1で下し、つづくオンタリオ・チームとの決勝戦は0-0の厳しい戦いとなったが、エクストラスロー(⇒註)を制し、勝利した。
⇒エクストラスロー: サッカーのPK戦に似たルールで、前後半12分ハーフ、ハーフタイム3分の正規時間(レギュラータイム)と、ゴールデンゴール形式の3分間x2回(ハーフタイム3分)の延長戦でも決着がつかない場合、勝敗を決めるために行われる投球合戦。
■ドイツ発
・1月30日: 国際パラリンピック委員会(IPC)は、IPCの設立25周年を記念し、メンバーを対象にした大規模なカンファレンスを今年10月3日から5日にドイツのベルリンで開催すると発表した。1989年9月22日に発足したIPCは現在、ドイツのボンを拠点にして、18カ国から76人のスタッフと、各国のパラリンピック委員会や国際競技団体、障害者スポーツ団体など200以上の加盟団体で構成、運営されている。主な事業として夏季と冬季のパラリンピック大会を主催するほか、アルペンスキー、バイアスロン、陸上競技、クロスカントリースキー、アイススレッジホッケー、パワーリフティング、射撃、水泳、車椅子ダンススポーツという9競技の国際連盟も兼務し、各世界選手権や国際大会も主催する。
同カンファレンスは記念祝典のほか、今後に向けての計画や戦略について意見を交換する場にもなる予定だという。IPCのフィリップ・クレイブン会長は、「IPCは設立以来、規模もステータスも発展をつづけており、パラリンピック大会は今や、世界で3番目に大規模なスポーツイベントに成長。加盟国数も増えている。我々が今後も成長、発展をつづけていくなかで重要なことは、あくまでも選手が主体の活動であること、そして世界の人々を刺激し興奮させるというビジョンの実現を目指して邁進することを確実に行っていくことだ」とコメントした
・2月3日: IPCが毎月発表している「Athlete of the Month(月間優秀選手)」の先月1月のノミネート選手6名の中に、車椅子テニスプレイヤーの国枝慎吾が入った。最優秀選手1名は一般投票によって選出される。投票はIPC公式サイト(トップページ)で、10日12時(日本時間10日19時)まで受け付けている。
国枝のノミネート理由は1月に行われた全豪オープンでの戦績が評価された。シングルスでは決勝でグスタホ・フェルナンデス(アルゼンチン)を 6-0、6-1で圧倒し、同大会通算7勝目をあげた。さらに、ステファン・ウデ(フランス)と組んだダブルスでも優勝して2冠達成。ウデとのペアではグランドスラム(4大大会)ダブルスの5勝目でもあった。
国枝以外の5選手の名前とノミネート理由は以下の通り。
●アレーナ・カウフマン(ロシア/ノルディックスキー):
バイアスロンとクロスカントリースキーの2競技で、今季ワールドカップの女子立位の総合優勝。
●ローマン・ペテュシュコフ(ロシア/ノルディックスキー):
バイアスロンとクロスカントリースキーの今季ワールドカップで、男子座位の総合2冠を達成。
●マルクス・サルチャー(オーストリア/アルペンスキー):
男子立位クラスで、ワールドカップ・カナダ戦で3種目制覇、フランス戦で4種目を制した。
●アンナ・シャフェルフーバー(ドイツ/アルペンスキー):
1月中のワールドカップの女子座位クラスでほぼ無敗。カナダ戦は4種目、アメリカ戦は3種目、フランス戦は4種目を制覇した。
●マイク・ショー(アメリカ/アルペンスキー):
スノーボードの男子立位クラスの選手。ワールドカップ・カナダ戦で2種目制覇、アメリカ戦でも総合1位となり、現在、世界ランク1位。
(カンパラプレス配信+NBSオリジナル)
写真:星野恭子