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「大相撲八百長批判」を嗤う

『「大相撲八百長批判」を嗤う』

著者:玉木正之

出版社:飛鳥新社

価格:¥1,680

 

 

 14年1月末、日本相撲協会は当初の予定より1年以上遅れ、ようやく公益財団法人に移行した。懸案事項であった年寄名跡は協会管理となり、名跡に関わる金銭の授受を禁止した。しかし抜け道も依然存在し、改革を行うとされた組織も外部有識者が入っているとはいえ、一門で役員を出す形に変わりはない。再生への一歩を踏み出したかは、まだこれからということなのだろうが、我々、見る側は相撲をどう考えるべきかを示唆する対論集。本書では近代合理主義による「八百長=絶対悪」、近代(西洋)スポーツ論理による封建的競技(であり興業であり神事)の批判を批判している。

 相撲を「国技」と言う人は多いが、その「国技」の歴史を十分に理解している人は多くはない。その二千年もの歴史は日本文化に曖昧さ、非合理性があったが故である。現在では時代の中で日本文化が変化してきたことから、相撲自体が変質する可能性があり『「これからの大相撲のあり方」を語るのは、「これからの日本のあり方」を語ることとイコールであるようにも思える』
 我々の祖父祖母の時代には、力士に向い手を合わせて拝み、八百長くさい相撲にも喝采を送った(私の祖父も取組を見て「借りを返したな」などと度々つぶやいていた)。歴史を知らないにせよ、そういった形で伝統文化の継承を長い間行ってきたはずだが、それが「近代合理主義」によって廃れてしまうのだろうか。