星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ⑲ 1.20~1.28
国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。ソチ冬季パラリンピックを気軽に観戦できる方法や、2020年東京大会への準備のほか、車椅子テニスでの快挙達成など、今回も盛りだくさんの内容です。
■東京発
・28日: スカパーJSAT(東京都港区)は、3月に開催される「ソチ2014パラリンピック冬季競技大会」を放送する専門局「24時間パラリンピック専門チャンネル」を開設すると発表した。大会期間中の3月8日(土)(日本時間)~16日(日)まで、60時間の生中継を含む200時間以上の放送を予定している。パラリンピックを24時間放送するのは日本初になる。
同社ではアルペンスキー、バイアスロン、クロスカントリースキー、アイススレッジホッケー、車いすカーリングの全5競技72種目のすべての放送を目指すという。さらに、ドキュメンタリー的な伝え方でなく、アスリートたちの真剣勝負の姿をありのままに、その魅力や迫力、感動を伝えることをコンセプトに、日本選手が出場していない競技についてもカバーしたいとしている。
同専門チャンネルのキャッチコピーは「何ひとつあきらめない。だからその人は強い。」で、ゴスペラーズが歌う『3月の翼』がテーマソングに決まったことも同時に発表された。同社の高田真治社長は、ソチ大会からパラリンピックのスポーツ中継・番組としての面白さを伝えることで、6年後の20年東京パラリンピックの会場が観客で満員になることを目指したいと意気込む。
同専門チャンネルはスカチャン0(CS800)で実施されるが、オンデマンドでも視聴可能で、パソコンやスマートフォン、タブレットなどから場所や時間を選ばずに視聴できる。
■車椅子テニス
・22日: 豪州メルボルンで13日から開催されていたオーストラリア・オープンテニスの車椅子の部がスタートした。車椅子テニスの4大大会(グランドスラム)のひとつで、世界トップ8が集まった男子シングルスでは、現世界ランク1位で、前年覇者の国枝慎吾が同3位のゴードン・リード(イギリス)と対戦。第1セットの立ち上がりに2ゲームをとられ、3-5と先行されたものの、粘って逆転。同セットを7-5でとると、その勢いで第2セットも6-2と押し切り、ベスト4に進出した。国枝は2007年に同オープン初出場で初優勝を遂げて以降、欠場した12年以外はすべて優勝を果たし、今大会は2連覇通算7勝目を目指す。
女子は現世界ランク3位で上地結衣がマーホレン・ブイス(オランダ)を6-1、6-4で退け、ベスト4に進出。上地はグランドスラムのシングルス初制覇が目標だ。
・23日: 男女シングルス2回戦(準決勝)が行われ、男子は国枝とグスタホ・フェルナンデス(アルゼンチン)が、女子では上地とサビーネ・エラーブロック(ドイツ)がそれぞれ決勝に進出した。
また男女4組出場のダブルスでは、男子第1シードの国枝/ステファン・ウデ(フランス)組と女子第1シードの上地/ジョーダン・ホワイリー(イギリス)組がそれぞれ決勝に進出した。
・24日: 男女ダブルス決勝が行われ、国枝/ウデ組が第2シードのリード/マイケル・シェファーズ(オランダ)組を6-3、6-3のストレートで破り、優勝した。女子も第1と第2シードの戦いとなり、フルセットまでもつれたが、第1シードの上地/ホワイリー(イギリス)組がブイス/イースケ・フリフィオエン(オランダ)組を6-2、6-7(3)、6-2で振り切り、頂点に立った。
・25日: 男女シングルス決勝が行われ、第1シードの国枝がフェルナンデスを6ー0、6ー1と圧倒的な強さで下し、2年連続通算7度目の王座に。また、単複2冠達成での快挙となった。
女子は上地が第1シードのエラーブロックと対戦。第1セットを6ー3でとったが、第2セットを接戦の末4ー6で落とすと、最終セットは2ー6で押し切られ、惜しくもグランドスラムのシングルス初制覇はならなかった。
■ドイツ発
・22日: 国際パラリンピック委員会(IPC)は、2020年東京パラリンピックでの新規採用を目指し、昨年11月から今年1月17日までに申請手続きを行った6競技と3種目を公表した。
□新採用を目指す6競技
・パラバドミントン(Para-badminton)
・パラテコンドー(Para-taekwondo)
・電動車椅子サッカー(Powerchair football)
・3オン3 知的障害者バスケットボール(3-on-3 Intellectually impaired basketball)
・電動車椅子ホッケー(Electric wheelchair hockey)
・アンプティサッカー(Amputee football/切断者サッカー)
□既存競技に追加採用を目指す3種目
・ヨット競技:一人乗りマルチハル(⇒註1)(One-person multi-hull)
・ヨット競技:視覚障害者マッチレース(⇒註2)
・車椅子バスケットボール(3-on-3)
註1⇒マルチハル: モノハルと呼ばれる普通の形の船体に対し、双胴のカタマランなど複数の多数のハル(船体)からなるヨットのこと。幅が広いので安定性が高いといった長所がある。
註2⇒視覚障害者マッチレース: 視覚障害のある3選手(男女混成で、舵を取るスキッパーは必ず全盲者)と、安全確保のため、大会主催者が指名する晴眼者が同乗するヨットで、1対1で競うレース。
なお、実施競技の決定は、上記の新規申請6競技3種目と、現在、実施されている22競技(陸上競技、アーチェリー、ボッチャ、自転車、乗馬、ブラインドサッカー、知的障害者サッカー、ゴールボー ル、柔道、パワーリフティング、ボート、ヨット、射撃、シッティングバレーボール、水泳、卓球、車椅子バスケットボール、車椅子フェンシング、車椅子ラグビー、車椅子テニスの20競技と、16年リオデジャネイロ大会から新採用されるカヌーとトライアスロンの2競技)を合わせて、今後、IPC理事会での数回の検討、議論を経て、今年11月に正式発表されることになっている。
■ブラインドサッカー
・18日: 日本ブラインドサッカー協会(JBFA)は史上初めての「女子練習会」を開催した。ファンの声に応えて企画され、事前に参加者を一般公募。練習会当日にはブラインドサッカー(B1:全盲クラス)に14名、ロービジョンフットサル(B2/B3:弱視クラス)に12名が集まった。練習会はアイマスクをして体を動かすことからはじめ、シュートやパスなど本格的なブラインドサッカー練習まで行われた。日本にはまだ女子だけのチームは存在しないが、同協会では将来的に女子チームの結成から国際交流試合の開催なども視野に入れ、普及に努めたいとしている。
・19日: JBFA主催のマーブルカップ2014が、東京・八王子で開催され、参加4チームのなか、埼玉T.Wingsがbuen cambio yokohamaとのPK戦を制して優勝した。昨年の関東リーグ(全6チーム)第5位の埼玉と、同3位のyokohamaとの試合は序盤から激しい攻防となったが、無得点のままPK戦へ。2連続でミスしたyokohamaに対し、埼玉が確実に2本を決め、試合も決めた。
マーブルカップは、視覚障害者だけでなく晴眼者(アイマスク着用)でもブラインドサッカーに関わる誰でも参加可能で、選手や審判、運営などの役割を超え、皆でつくり上げることを目的とした大会。
■ノルディックスキー
・23日: 世界15カ国以上から約100選手が集い、ワールドカップ・バイアスロン最終戦が、ドイツ・オーバーライドで開幕した。今大会終了後に2013ー14シーズンのバイアスロン年間総合王者が決定する。
初日は男女ショートが行われ、女子立位(6km)で太田渉子(日立ソリューションズ)が19分15秒1(射撃ミス=0)で5位に入った。前大会までのポイントで総合3位につけている出来島桃子(新発田市役所)は20分54秒6(ミス=2)で9位だった。また、男子座位では昨季総合優勝の久保恒造(日立ソリューションズ)が今季も総合2位につけているが、この日のショート(7.5km)では24分25秒2(ミス=1)で9位に終わった。
・25日: 男女ロングが行われ、地元開催のソチ冬季パラリンピックを間近に控えたロシア勢が全6種目で優勝、表彰台独占の種目もあり、圧倒的な強さを見せた。日本からは5選手が出場し、女子立位(15km)で出来島)が41分33秒5(射撃ミス=1)で6位に入ったのが最高位。男子座位(20km)の久保は7位(44分13秒6、ミス=0)だった。
・26日: 最終日は男女ミドルが行われ、日本からは4選手が出場。女子立位(10km)では太田が35分18秒4(ミス=0)で4位に入ったが、出来島は37分51秒2(ミス=4)で8位に終わり、年間表彰を逃した。また、昨季覇者の久保はこの日の結果しだいで今季も総合表彰の可能性があったが、体調不良のため欠場。目前に迫ったソチ冬季パラリンピックへの調整を優先したという。
この日で今季のワールド杯は全日程を終了し、個人総合表彰ではロシア勢が全6種目制覇を含み、他国を圧倒した。日本選手は帰国し、2月8日~9日のジャパンパラ大会(北海道・旭川)出場や国内合宿などでソチ本番に向けて調整を進める予定という。
(カンパラプレス配信+NBSオリジナル)