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桂吉弥のスポーツ辛口噺①「これでイイのか日本ラグビー」の巻

 2014年1月7日14時キックオフ、第93回全国高校ラグビー大会決勝・東海大仰星対桐蔭学園。19対14で東海大仰星が7年ぶり3度目の優勝。久しぶりに近鉄花園ラグビー場に出かけた。

 両校の学生たちや学校関係者の応援が大勢あったのだが、公式発表8500人の割には少なく感じた。いい試合だっただけに、もっとスタンドに観客が溢れて欲しいと思った。

 それでも今年の大会は全日程で10万9434人の観客を集め、最近の5大会では最多入場者数を記録したらしい。高校ラグビー中継を担当している毎日放送のスポーツアナウンサーに聞くと土日など週末にはお客さんが溢れていたと言う。決勝を1月7日(今年は火曜日)に固定しているのでこういう現象が起こるのだろうが、せっかくの決勝なのに……という気がして仕方が無い。

 高校生だから冬休み中に日程を終わらせるという理屈も良く分かるが、同じ時期に行われた同じ高校生のサッカー選手権の決勝は、最後の国立競技場という要素もあったが、1月13日の祝日(成人の日)に開催され、4万8295人の超満員の観衆を集めた。

 この二つの競技の決勝をテレビで見た小学生が、サッカーとラグビーどちらもやれる環境にあったとして、果たしてラグビーを選ぶだろうか。素晴らしい身体能力を持った中学生が「ラグビーがやりたい」とラグビー部がある高校を選ぶだろうか。

 花園ラグビー場のホームページを見れば3万人収容の大スタンドとある、あの決勝戦を満員のスタンドで見たかったなあ……、もったいない……。

 選手たちも超満員の花園で決勝を戦いたいに決まっている。2010年の大会では、7日が金曜日だったため一日ずらして8日土曜日に決勝戦が行われたらしい。「決勝は日曜日に!」というのは、おそらく何人かの大人たちが責任を取ることと、誰かのホンの少しの決断で変えることが出来るような気がするのだが……、是非考えていただきたい。

 さて7日に花園に出かけたのは、もう一つの目的があった。アンダー18合同チーム東西対抗戦という試合が決勝戦の前にあったのだ。


 12時30分キックオフ、決勝と同じ30分ハーフの試合。その時の観客数は3500人。『高校ラグビー活性化の一環として、規定上「花園」に出場できない少人数校の高校ラガーメンに夢と希望を与えるため』に組まれた試合だそうな。

 日本ラグビー協会のホームページでこの試合があることを知り、家を出る時からワクワクしていた。花園のグラウンドに憧れた高校生達が寄せ集めのチームではあるけれども、決勝戦の前に試合ができるのだ。感激して涙している者、緊張で震えている者、トライを取ったときの歓声。私の頭の中ではそんな妄想が広がっていた。

 さて本番、両軍ともに円陣を組み声を張り上げグランドに散って行く。いい感じ。キックオフ。昨年は64対7の大差で西軍が勝ったらしい、やはり今年も西が押している。3分、7分と西軍が立て続けにトライ。トライ後のゴールも沖縄県立宜野座高校3年の大嶺君が正確に決める、14対0。この二つのトライは個人技で取った感じ。

 東軍もボールへの集まり、奪ってからのバックスへ繋ごうという意識は西軍に負けていないのだけれどうまくいかない。ペナルティをもらった時のタッチキックの精度、トライまであと少しという時にでてしまうノットリリースザボール、オフサイド等の反則。マイボール・ラインアウト時のノットストレート。ああもったいない! 東軍にトライを取らせてあげたいと考えていた観客は私だけではないはずだ。何度も「惜しい」とため息が聞こえた。

 結局31対0でノーサイド。彼らがどれだけ合同練習をしたのかは分からないが、後半になると、東軍チームの中で戦い方の意思のずれがあったように見えたのが残念だった。

 選手たちは気持ち良くノーサイドの笛を聴いたのか。これだけ得点差が出るならば、東西合同で大会期間中にしっかり合宿をして、東と西に分けるのではなく、桜チーム対富士チーム等、戦力を均等化して試合を組んではどうだろうか。でないと、せっかくの花園での決勝前座試合がもったいない。

 フィクションの世界を引っ張ってきて申し訳ないが、前座試合というと『がんばれ!ベアーズ特訓中』という私が小学生の時に見た映画を思い出す。弱小少年野球チームのベアーズがアストロドームでの試合に望むのだが時間切れで延長は認められず試合終了の宣告。しかし、その後のメジャーリーグの試合を見に来ていた観客やベンチにやってきたメジャー選手たちをも巻き込んで「面白いがな、決着つくまでやってみいな」と試合を続行するのだ。野球ってメジャーも少年野球も無いんやなぁ……、エエなぁ……といまだに心に残っている。

 ラグビーも、決勝戦を見に来たラグビー・ファンたちが見ていて心揺さぶられる、気持ちのいい前座試合になるような工夫を、愛情を持ってマッチメイクしてあげてほしい。

 実は私はラグビー経験者だ、と言っても小学生の頃に大阪の豊中ラグビースクールで1年から3年生までの間だけ。でも花園であった小学生大会であのグランドに立ったこともあるし、トライしたこともある。だからラグビーがもっともっと世間の人達の話題にのぼってほしいのだ。

 2002年のサッカー・ワールドカップの前のあの盛り上がりは、代表選手クラスやJリーガーはもちろん学生サッカーや草サッカーのレベルまでどんどん押し上げて行ったように思う。もちろん観客も。サッカーなんて知らない大阪のおばちゃんたちも、何かすごいことが起こるんや……と興奮していた。

 2019年には日本でラグビーのワールドカップがある。そのことを、いったいどれだけの人が知っているだろう。選手たちの日々の努力はもちろんだけれど、もっともっといろんな仕掛けができるのではないだろうか……。というわけで、私も、これから、いろんなところで、いろいろスポーツのことを喋っていきたいと思う。どうか、御贔屓に。