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アタック・ナンバー・ハーフ

  実力はあるのに、‘おかま’であることを理由に有力バレーボールチームの入団テストを落ちてしまったモン(サハーパープ・ウィーラカーミン)。もうバレーは辞めると決意したモンは、やはり‘おかま’の友人ジュン(チャイチャーン・ニムプーンサワット)と、就職のためバンコク行きの列車に乗ろうとするが、その駅のホームで「ランパーン県代表チーム、バレーボール選手募集」のポスターを見かけ、考え直す。
  選考会でふたりは見事合格するが、‘おかま’と一緒になんかやっていられないと、メンバーのほとんどはチームを去っていく。残ったのはふたりのほかに、‘おなべ’の女性監督と、ストレートの男性選手がひとりだけ。
 

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こうなったら自分たちの同業者を集めてしまえと、友人知人に声を掛け、ついにはレギュラー選手6人のうち5人が‘おかま’のバレーボールチームが誕生する。
  ランパーン県予選、全国大会と戦ううちに、彼氏が女性とデキてしまう。メンバー同士で同じ男を奪い合う。ストレートの男性選手との軋轢。試合を観た両親に初めてゲイだとバレたレギュラー選手が、大会途中で連れ戻される。主催者側の嫌がらせ…。さまざまなトラブルに見舞われながらも「カマさんバレー」チームは大人気を博していく。
  どこかで聞いたような邦題。「あなたにはバレーがあるでしょ。悲しみも涙もコートのなかに捨てるのよ」なんてセリフも出て来るものの、原題はこのチームの愛称である「サトリー・レック」(タイ語でサトリーは「女性」、レックは「鉄」の意味で、劇中では‘鋼鉄の淑女’と訳されている)。
  どう考えても、冗談のようなコメディなのだが、「鋼鉄の淑女」たちは実在した。ストーリーも1996年にタイで現実に起きた出来事を再現しており、全国大会出場も本当の話なのだ。
  タイでは、ゲイのことを「不道徳」という意味の俗称「カトゥーイ」と呼んでおり、公開当時には「こんな映画を観たら、青少年がカトゥーイになる」とのバッシングもあったそうだが、タイ国内映画史上歴代2位の興業成績を記録する大ヒットとなった。
  2012年6月、ロシア政府が「非伝統的な性的関係」を未成年者に知らしめる行為を禁止した同性愛宣伝禁止法を制定。それに対する抗議として、欧米各国の要人がソチ五輪の開会・閉会式の欠席を表明するなど、物議を醸している。00年にこの作品を制作したタイの映画人たちにしてみれば、「いまだに、そんな段階の議論をしているの」とでも言ったところだろうか。