ノーボーダー・スポーツ/記事サムネイル

MLBから田中将大投手へ最悪のイチャモン!(坂井保之)

 NOBORDER SPORTSの読者のみなさん、明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお付き合いください。

 早速ですが、大リーグ入りをめざす田中将大投手の行く手に、MLBからとんだイチャモンが入りました。「大リーグに入れたら、お世話になった楽天に、なにがしかの寄付をしたい」と表明した田中の発言に、その寄付行為は両国間で新たに定めたポスティング制度の規定に抵触する疑いがあると、MLBから強いストップがかかったのです。

 日本人選手がフリーエージェントの権利獲得前にMLBに入ろうとする場合は、獲得を希望する米球団が、日本側に譲渡の対価として、上限を2000万ドルとする金額が支払われる規定になっています。この規定は、従来の制度の改訂版として昨年秋、日米間合意で制定された新ルールで、さらに「MLB球団は、この譲渡に関連し、上記金額以外に、いかなる金銭あるいは他の有価物も、NPB球団に与えてはならない」という但し書きも附いていました。

 問題はこの部分です。一体なにを意味しているのでしょうか。みなさんは、どう読み取られますか。

 額面通り読みますとこの部分、入札の最高額が2千万ドル(という低額!)では、獲得を希望する米球団が続出することが予想されます。金額に差がないのですから、日本側は決めようがありませんね。となると選択は選手の希望が優先します。当然、米球団は選手の気持を引こうと、懸命の努力をするに違いありません。手っ取り早いのは、高額な年俸を提示することです。選手としては、自分を心ならずも送り出す決定をしてくれた原球団に、すこしでも感謝の気持ちを伝えたい、と、なにがしかの寄付を思っていますから、高年俸は一つの魅力になっていたとしても、なんの不思議もありません。

 田中選手の場合、彼がどんな基準で球団を選ぶかはわかりません。
 しかし、MLBは「田中の寄付」のケースを、『譲渡に関し、正規に表示された金額以外の金銭の提供』に当たるのではないかと判断したのです。
 いかがでしょう。このMLBの判断についてゆけますか。

 田中選手の気持ちに、なんらかの作為、あるいは、楽天球団との裏打ち合わせがあったとは、到底いえ断乎として思えません。にもかかわらず、MLBはそこに、なんらかの作為が介在しているのではないかと疑いを持ったのです。

 こうなった以上、問われるのは、NPB当局の毅然とした対応です。米側のMLBは、本件についての文書による回答を求めています。迅速、かつ的確に対応してほしいものです。

 新任の熊崎勝彦コミッショナーにとっては突然の初仕事です。あざやかな手並みを見せてほしいと期待するところです。