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なぜイチローら日本人大リーガーはWBCを辞退したのか(松瀬 学)

『なぜイチローら日本人大リーガーはWBCを辞退したのか』

やはりイチローは来年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表入りを辞退した。ヤンキースの黒田博樹も、レンジャーズのダルビッシュ有も、マリナーズの岩隈久志も……。結局、出場を要請していた日本人大リーガー6人全員の不参加が決定した。当然だろう。

確かにイチローは2006年第一回大会、10年第二回大会と出場した。前回第二回大会では不振に苦しみながらも、決勝で優勝決定打を放った。2連覇で自身の「商品価値」を高めることができた。「日本のため」との思いもあっただろうが、WBC出場に踏み切ったのはマリナーズのレギュラーを約束されていたからである。

つまりシーズンへの不安がなかった。だが今回は立場がちがう。もう39歳。ヤンキースからFAともなった。必死なのだ。大リーグのシーズンを考えるなら、球団が嫌がるWBC出場を回避したほうがいいと判断したのだろう。イチローにとっても、シーズンに悪影響を及ぼす恐れのあるWBCに出ている余裕はないのである。

所詮、WBCの大会価値がその程度だということでもある。大リーグの一流どころが出ないのだから、「世界一決定戦」という形容がおかしい。大リーグ側の国際戦略と金儲けのための一興行に過ぎず、大リーガーに対する参加の強制力もない。大リーガーにとっては、WBCより、シーズンの成績(=年俸)が優先するのである。

WBCは、サッカーやラグビーのワールドカップ(W杯)とは権威や重みが違う。相対的に低い。ナショナリズムもオリンピックほど、刺激しない。ならば、プロなのだから、WBC優勝の名誉より、銭金(年俸)を優先するのは妥当だろう。シーズンの成績もだが、まずはチームのレギュラー確保のため、3月の大リーグのキャンプで所属チームの監督にアピールしなければならない。

しかもWBCでのけがによる休業補償ははっきりしていないのだ。けがした場合のシーズンへの影響がこわい。ある程度のベテラン選手なら、例年より1ケ月早くからだをつくることの危うさを分かっている。前回WBCでは、イチローは調子を崩していた。松坂大輔(レッドソックス)も早くからだをつくり過ぎて、大会後、故障が多くなった。

要するに、WBCの開催時期が悪いのである。12月がいいのだろうが、これはシーズン後の休養を大事にしたい大リーグ選手会が認めないだろう。ならば、WBCの価値に見合った選手でやればいいのではないか。

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