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星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ⑫12.1~12.8

 国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。今回は、パラリンピック正式競技入りを目指す車いすダンススポーツの世界選手権のほか、「日本一」を目指して行われた各種競技大会などをリポートしています。

■車いすテニス
1日: シングルスの日本ランキング上位の男女8名、クォード(重度障がい者クラス)4名の選手の中から日本一を決定する「第23回NEC全日本選抜車いすテニス選手権大会」が吉田記念テニス研修センター(千葉県柏市)で11月29日に開幕。

 2日間にわたる予選ラウンドなどを経て、男子は三木拓也(日本ランキング1位)が斎田悟司(同2位)を6-4、6-0で下し、初優勝を果たした。女子は世界ランク3位で、日本ランキング1位の上地結衣が同8位の堂森佳南子を6-0、6-2で退け、6連覇を達成した。クォードは同2位の川野将太が同4位の平田眞一を7-6、5-7、6-1で下し、2年ぶり3度目の頂点に立った。なお、男子シングルス世界ランク1位の国枝慎吾は体調不良のため、欠場だった。

■ブラインド・サッカー
1日: 「関東リーグ2013」の第8節がつくば市で行われ、B1(全盲)クラスで前節まで首位のAvanzareつくば(茨城)が、2位で追いかけるbuen cambio yokohama(神奈川)との直接対決を4-1で勝利し、荒天で順延した第5節を残して、つくばが昨年に続く、リーグ連覇を決めた。

 なお、今季最終戦となる第5節は12月15日(日)に、クーバーフットボールパーク八王子富士森公園(東京・八王子)での開催が決まった。現時点で2位以下は混戦となっており、同節のbuen cambio yokohama対埼玉T.Wings(埼玉)戦の結果により最終順位が決定する。

●B1クラス順位(第8節終了時点まで)
 優勝決定:Avanzareつくば 勝点12
  2位 :松戸・乃木坂ユナイテッド 勝点9
  3位 :たまハッサーズ 勝点7
  4位 :buen cambio yokohama 勝点7
  5位 :埼玉T.Wings 勝点3
  6位 :山梨キッカーズ 勝点0

4日: B1クラス日本代表が欧州遠征に出発した。2014年東京で開催される世界選手権での上位進出、そして2016年リオ・パラリンピックで悲願の初出場を目指す強化策の一環で、親善試合のための欧州遠征は史上初。

6日: 欧州遠征中のB1クラス日本代表がパリでフランス代表と強化試合を行い、0-0で引き分けた。

7日: B1日本代表がパリ郊外に移動し、フランス代表と国際親善試合を行い、0-1(前半0-0)で惜敗。ファウルが累積し、後半の終了前約2分で3度目の第2PK(⇒註)により、決勝点を奪われた。なお、チャリティイベントとして開催され、観客は約200人だった。

8日: B1日本代表がイタリアのサンレモで、現地のクラブチーム(イタリア代表4選手が所属)と強化試合として2試合行った。第1試合は試合終了間際の残り時間約45秒で佐々木康裕がPKを決めて1-0で振り切った。第2試合は、前半22分に黒田智成が得点、後半4分にも寺西一が代表初ゴールを挙げ、2-0で勝利した。

 日本ブラインドサッカー協会によれば、魚住稿監督は「いろんな環境の中で一つ一つ試合をこなしていって、その中で結果を出していく、いろいろなシステムを試していく、ということができたのは大きな経験になった」とコメント。また、落合啓士主将は「国際大会は一つの会場で開催されることがほとんどだが、今回の遠征のようにホテルや試合会場を移動しながら戦うことで、試合以外の環境への適応能力もチーム全体として上がったと思う。大変な状況を経験すればするほど成熟していけるので、ハードな遠征も必要だと思う。(大変だったのは)コンクリートのピッチとか、音が反響する体育館という環境。サンレモのピッチは硬いところと柔らかいところがあった。壁の質も毎試合違ったのでボールの跳ね返り方も異なった。日常生活でもアウェー感を経験できた」と貴重な体験を振り返っている。

(⇒註)第2PK:前後半それぞれで、各チームの累積ファウルが4つ目を記録して以降は、相手チームに与えられるPKのこと。通常のPKはゴールラインから6m地点で行うが、第2PKは8m地点から行う。


■ウィルチェア・ラグビー
7日: 国内トップ8チームが日本一を争う、第15回日本選手権大会(来年1月17日~19日/千葉ポートアリーナ)のプレーオフが7日、東京で開催され、3チームの総当たり戦によって残り2枠が争われ、Freedom(高知)とBLAST(千葉)が日本選手権の出場権を得た。

 なお、すでに日本選手権出場を決めていた6チームは、北海道Big Dippers(北海道)、AXE(埼玉)、BLITZ(埼玉)、RIZE(千葉)、HEAT(大阪)、Okinawa Hurricanes(沖縄)。昨年はBLITZが日本一に輝いている。

■車いすダンススポーツ
7日~8日: 国際パラリンピック委員会(IPC)公認の第8回世界車いすダンススポーツ選手権大会が、駒沢体育館(東京・世田谷区)で開幕した。

 車いすダンススポーツは1997年、IPC総会で正式種目として認定された障害者スポーツで、車いすダンサーと立位の健常者がペアとなるコンビ部門と車いすダンサー同士が組むデュオ部門があり、それぞれ障害の程度に応じてクラス1と2に分けて競われる。現在はまだ、パラリンピック正式種目ではないが、2014年のアジアパラリンピック(10月/韓国・仁川)の正式種目として実施が決まっている。

 IPC公認の世界選手権は1998年に第1回大会が14カ国が参加して千葉・幕張メッセで開催されている。8回目となる今大会には日本をはじめ、世界18カ国から約160選手が出場、2日間にわたり、7つのメダル種目(コンビ・スタンダード・クラス1、2/コンビ・ラテン・クラス1、2/デュオ・スタンダード・クラス1、2/デュオ・ラテン・クラス2)を競った。

 全7種目での国別メダル獲得数は、1位がロシアで7個(金3、銀3、銅1)、2位はウクライナで6個(3、2、1)、3位はスロバキアの3個(1、1、1)だった。日本選手のメダル獲得はなかった。

■車椅子マラソン
8日: 米国ハワイで「JALホノルルマラソン2013」が行われ、車椅子の部男子で、昨年2位の副島正純が1時間31分14秒で優勝。同女子は、土田和歌子が1時間52分50秒で2連覇を果たした。

 また同日、日本では沖縄県の宜野湾海浜公園を主会場に、「第25回ぎのわん車いすマラソン大会」が開催され、ハーフ(21.0975キロ)、3.5キロ、1.5キロトリムレースの3部門に約250人が参加した。ハーフ男子は世界選手権(7月/フランス)の銀メダリスト、渡辺勝(福岡県)が46分11秒で優勝、女子はロンドン・パラリンピック入賞の木山由加(岡山県)が1時間4分6秒で優勝した。


■ドイツ発 
【2013年度パラスポーツ『最高の瞬間』トップ50】
(詳細は、IPC公式サイトまで。上記をClickしてください。)
 国際パラリンピック委員会(IPC)が12月31日までカウントダウン形式で毎日発表するリストを、コンパクトに紹介するシリーズ。

No.29: 21歳のヒルトロップ選手(ドイツ)がIPC射撃ヨーロッパ選手権(10月/スペイン)のR3(10mエアライフル伏射混合)のSH1クラス(⇒註)で、ロンドン・パラリンピックのメダリストたちを退け、初優勝を果たした。

(⇒註)SH1クラス: パラ・スポーツの射撃では全選手はSH1とSH2の2クラスに分けられる。SH1は射撃スタンドを必要としない選手、SH2は上肢に測定可能、あるいは目視で明らかな永久的障害があり、そのため上肢で銃の重さを支えられず射撃スタンドを必要とする選手。

No.28: オランダのビジャード選手がIFDSセーリング世界選手権(8月/アイルランド)の一人乗りキールボート種目で、ロンドン・パラリンピックのメダリスト3選手を抑え、初優勝した。元々ヨットとフィールド・ホッケーの選手だった彼は、1年半前にスキーの事故で脊髄を損傷し、障害者ヨット競技はわずか6カ月前に始めたばかりだった。

(IFDS:国際障害者セーリング協会)

No.27: ITTFパラ卓球のヨーロッパ選手権(9月/イタリア)で、イギリスのデイビース選手がクラス1(車椅子+重度の四肢機能障害)の単複2冠を達成し、世界ランク1位に躍り出た。

(ITTF:国際卓球連盟)

No.26: シッティング・バレーボールのヨーロッパ選手権(9月/ポーランド)で、ロシア女子チームが初優勝を果たした。

No.25: 国際パラリンピック委員会(IPC)と世界アンチ・ドーピング機関(WADA)が協働して、大規模な反ドーピング・キャンペーンをIPC水泳世界選手権(8月/カナダ)で実施。特製Tシャツや旗で選手や観客にアピール。

No.24: IPCが新たにクラス分け(⇒註)の研究開発センターを設置。3つの障害(視覚、身体、知的)ごとに、その特性に応じたクラス分け方法などの拡充が目的で、7月に視覚障害を対象にしたセンターをアムステルダムの大学内に、9月には身体障害対象のセンターをオーストラリアの大学内にオープンした。知的障害対象のセンターについては現在、設置場所の選定などが進められている。

(⇒註)クラス分け: 男女別制や格闘技の体重別制など競技を公平に行うため、パラ・スポーツでは障害の種別や内容に応じて選手を「クラス分け(Classification)」して競技を実施している。例えば、IPCルールの下では、視覚障害のある選手は全盲や弱視など程度によって全3クラス(11、12、13)に分けられている。

No.23: FEIパラ馬術ヨーロッパ選手権(8月/デンマーク)で、ロンドン・パラリンピック3冠のクリスチャンセン選手(イギリス)がフリースタイルのグレード1(重度障害)クラスで再び、3冠を達成。大きなプレッシャーをはねのけ、ライバルたちを僅差で振り切った。

(FEI:国際馬術連盟)

(カンパラプレス配信+NBSオリジナル)
(写真:星野恭子)