星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ⑪11.24~12.1
国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。今回も、パラリンピック・ムーブメントの広がりと深まりを感じさせる、バラエティ豊かな話題が国内外から届いています。
■アテネ発
・24日: 国際パラリンピック委員会(IPC)の第16回総会がギリシャのアテネで開かれ、IPC理事選挙が行われた。会長には、イギリス・パラリンピック委員会のフィリップ・クレイヴン現会長(63)が再選され、4期目に入った。パラリンピックに5回出場経験があり、2001年に初めて会長に選出された。会長は1期4年、ひとり4期までという規定があるため、これが最終となる。クレイヴン会長は、「再選されて大変光栄です。近年、我々が積み上げてきた大きな発展を、今後も続けていくことを誓います」などとコメントした。
副会長には2009年からブラジル・パラリンピック委員会委員長で、同年からIPC理事も務めるアンドリュー・パーソンズ氏(36)が初選出された。「私を信じて選出していただき、ありがとうございます。マニフェストを実行することに邁進します」などと抱負を述べた。
また、理事10人の選挙も行われ、日本の山脇康氏が当選した。山脇氏は、日本障害者スポーツ協会の理事で、日本パラリンピック委員会副委員長も兼任している。IPCの理事が日本から出るのは、2002年以来で11年ぶりとなる。その他9人の新理事は以下の通り。
キュンウォン・ナ(韓国)/モハマド・アルハメリ(UAE)/アン・コーディ(USA)/リタ・ヴァン・ドリエル(オランダ)/ジョン・ピーターソン(デンマーク)/ミゲル・サガラ(スペイン)/パトリック・ジャルヴィス(カナダ)/デュウェイン・ケール(ニュージーランド)/ジャイルス・モ(ケニア)
■視覚障害者柔道
・24日: 全国から42名の選手が参加して第28回全日本視覚障害者柔道大会が講道館(東京都文京区)で開催され、個人戦として男子9種目、女子5種目が、さらに都道府県対抗の団体戦が行われた。各種目の優勝者は以下の通り。
[個人戦男子]
60kg級 :平井 孝明(熊本県)
66kg級 :廣瀬 誠(愛知県)
73kg級 :高橋 秀克(埼玉県)
81kg級 :初瀬 勇輔(東京都)
90kg級 :北薗 新光(兵庫県)
100kg級 :廣瀬 悠(愛媛県)
100kg超級:正木 健人(徳島県)
シニアの部:牛窪多喜男(埼玉県)
無段者:市場 大亮(茨城県)
[個人戦女子]
48kg級 :半谷 静香(福島県)
52kg級 :田中 亜弧(東京都)
57kg級 :三輪 順子(京都府)
63kg級 :米田真由美(東京都)
70kg級 :坂本 晴菜(静岡県)
[都道府県対抗団体戦]
優 勝 :埼玉県
■ロシア発
・27日: 2014冬季パラリンピック・ソチ大会の開幕まであと100日となったこの日、開催国ロシア国内では国内9カ所に特製時計が設置され、開会式までのカウントダウンが始まったほか、ソチ市内にあるソチ美術館の前には、ロシア国内の障害のある子どもたちと、現代芸術の著名なアーティストたちがコラボレートしたアート作品が展示された特設広場がオープンするなど、さまざまな記念イベントが行われた。
ソチ冬季五輪パラリンピック組織委員会のドミトリー・チェルニシェンコ委員長によれば、7年前にソチでの大会開催が決定して以来、国民の間にパラリンピック大会の価値などの認識が高まり、それに伴って障害のある人々に対する意識にも大きな変化が見られるという。実際、バリアフリー環境の整備も進んでいる。例えば、「アクセシビリティ・マップ」は組織委員会が完成させたプロジェクトのひとつで、ロシア国内 にあるバリアフリーのスポーツ施設が12,500カ所以上も登録されており、インターネットから簡単に検索できるというもの。障害のある人にもスポーツに親しみやすい街づくりを目指したものだという。
⇒ソチ冬季パラリンピック:来年3月7日から16日まで開催。5競技(アルペンスキー、バイアスロン、クロスカントリースキー、アイススレッジホッケー、車椅子カーリング)に、45カ国から約700人の選手が5競技に参加予定。
■車椅子バスケットボール
・29日:IWBFアジア・オセアニア地区車椅子バスケットボール選手権大会(タイ・バンコク)が閉幕。男女ともオーストラリアが優勝を飾った。ともに、ロンドン・パラリンピックの銀メダルチームとして、今大会でも予選から無敗と圧倒的強さを見せ、全勝優勝を達成。
日本は、男子が準決勝でオーストラリアに、3位決定戦でイランにも敗れ、4位。女子は準決勝で中国に敗れたが、3位決定戦でタイに大勝し、銅メダルを獲得した。なお、男女とも来年6月の世界選手権(韓国・仁川)の出場権は獲得した。
●最終順位
[男子]
1位:オーストラリア
2位:韓国
3位:イラン
4位:日本
5位:タイ
6位:中国
7位:台湾
8位:ニュージーランド
9位:マレーシア
10位:クウェート
[女子]
1位:オーストラリア
2位:中国
3位:日本
4位:タイ
■車椅子マラソン
・29日~12月1日: 車椅子陸上競技の総合大会、「日産カップ追浜チャンピオンシップ2013」が、日産自動車株式会社社追浜工場(神奈川県横須賀市)を中心とした横須賀市内で開催された。同大会は2000年にスタートし、今回が14回目となる。障がい者スポーツの普及と地域の活性化などを目的に、企業と地域が協働で大会運営にあたることを特徴とした大会で、主に同工場の従業員と地域住民からなるボランティア約500名がコース整理などを行う。また、健常者も車椅子に乗ってレースに参加できる。
初日29日には横須賀市内の小学生などを対象にした「車椅子体験交流会」が、翌30日には同工場のテストコースを使い、中距離競技記録会(2.5km、5km、10km)が行われたほか、最終日の12月1日にはメインレースのハーフマラソンと、チャレンジレース(7.0325km)が京急追浜駅前をスタート・ゴール地点とし、テストコース+市道の周回コースで争われた。
[caption id="attachment_17275" align="alignnone" width="620"] ロードレース(12月1日)のスタート[/caption]
約60選手が参加したハーフマラソンでは、男子は44分52秒で樋口政幸(長野県)が、女子は55分08秒で中山和美(神奈川県)がそれぞれ総合優勝を果たした。来年1月のオーストラリアでの大会に向けた練習過程でのレースだったという樋口は、「楽しく走れました。2周回目から一人旅になったけど、ペースを保って余裕を持って走れた」と満足そうな笑顔。一方、中山は、普段はトラックをメインにする短距離レーサー。久しぶりのハーフで、「目指していた自己ベストは更新できず残念でしたが、また練習して頑張りたい。来年10月のアジア大会(韓国)の代表を目指して、今は体づくりに取り組んでいます」と今後へのさらなる飛躍を誓った。
[caption id="attachment_17276" align="alignnone" width="620"] ハーフマラソン総合優勝を果たした中山和美選手(左)と樋口政幸選手[/caption]
チャレンジレース(7.0325km)の部では男子が21分29秒をマークした嶋崎康介(東京都)が、女子は23分08で山口清加(東京都)が制した。
■ドイツ発
【2013年度パラスポーツ『最高の瞬間』トップ50】
(詳細は、IPC公式サイトまで。上記をClickしてください。)
国際パラリンピック委員会(IPC)が12月31日までカウントダウン形式で毎日発表するリストを、コンパクトに紹介するシリーズ。
No.36: オーストラリアのカーフィー選手が、パラ・トライアスロン世界選手権(9月/ロンドン)で、TRI-1クラス(車椅子利用者)でスイムとバイクでプラット選手(オランダ)に先行されるも、ランの終盤で逆転し、優勝。2013年度で自身4つ目となる世界タイトルを獲得した。
No.35: パラリンピアンを広告に起用したり、スポンサーとしてパラリンピアンを支援する企業が2013年は急増。例えば、義足スプリンター、リジン選手(オランダ)はナイキと、2014ソチ・パラリンピックアメリカ代表のスノーボーダー、パーディー選手はコカコーラやトヨタ、ケロッグなど複数企業とスポンサー契約を結ぶ。
No.34: ブラインド・サッカーのブラジル代表がコパ・アメリカ大会(9月/アルゼンチン)でアルゼンチン代表を下して優勝。この勝利で、国際大会での連勝を1996年から続く17年に伸ばした。
No.33: 義足のスノーボーダー、メンテル選手(オランダ)がソチ・パラリンピックのプレ大会(3月/ソチ)で優勝。男子の部でも銀メダルに相当する好タイムで、圧倒的な強さを見せた。現在41歳の同選手は2002年に癌のため右膝下を切断した以前はスノーボードで五輪出場を目指していた。
No.32: ESPN(米スポーツ専門局)の番組『Carry On』で、ロンドン・パラリンピックの視覚障害者柔道銅メダリストのクロケット選手が特集され、大反響に。ツイッターやフェイスブックページへのアクセスが急増し、映画化や自伝出版の予定も。パラリンピック・ムーブメントの普及を後押し。
No.31: クレイヴンIPC会長(イギリス)が再選、4期目へ。副会長はアンドリュー氏(ブラジル)が初選出。理事会も10人が改選され、新たな顔ぶれが増え、新体制に。
No.30: パラ陸上の世界選手権(8月/フランス)で片膝下義足のリーム選手(ドイツ)が走り幅跳びで7.95mの大ジャンプで優勝。健常者の世界陸上(7月/モスクワ)の決勝進出に相当する大記録。
(カンパラプレス配信+NBSオリジナル)
(写真:星野恭子)