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石原知事が辞任しても五輪招致に影響なし⁉(松瀬 学)

東京五輪招致。石原知事辞任の影響は?

この原稿はスマートフォンのユーザー向けアプリの『スポーツ屋台村』(五輪&ラグビーPLUS・松瀬学のコラム)のコラムをベースとし、大幅に加筆修正したものです。

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2020年夏季五輪パラリンピックの招致活動の先頭に立っていた石原慎太郎都知事の突然辞任から2週間が経った。招致活動についての影響はどうなのか。プラス、マイナスの評価はわかれているが、総じて影響はほとんどないとみる。

11月6日、招致委員会は独自調査による五輪パラリンピック招致の支持率を発表した。「賛成が67%、反対13%」だった。ロンドン五輪閉幕直後の前回調査より賛成が1ポイント増えた。ただ調査の実施期間をよくよくみると、「10月10日(水)~22日(月)」とある。つまり石原知事が辞めた10月25日の前に実施されたものである。

理解に苦しむ。調査データの整理にどれほど時間がかかるか知らないが、2週間余もの時間がなぜ、かかるのか。いま数字を出すとすれば、石原辞任後か、新都知事誕生後に調査をし直すべきであろう。

ちなみに発表資料によると、調査方法は「電話調査」、調査対象が「18歳以上の男女」で、サンプル数が「400」となっている。13日間で400。単純計算すれば一日30件となる。少なすぎないか。しかも回答率や質問形式の選択肢は「ヒミツ」だそうだ。

この支持率調査で毎回感じるのは、国際オリンピック委員会(IOC)による調査と招致委員会による調査の数字のかい離である。ことし5月にIOCが公表した東京の賛成(Support)は「47%」だった(競争相手のマドリードが78%、イスタンブールは73%)。招致委員会が2月にIOCへ提出した申請ファイルの東京支持率は「65%」で、IOC調査と大きな開きがあった。

前回の2016年東京五輪パラリンピック招致の際も、IOC調査と招致委調査の数字がえらく違った。つまり調査方法が違うのだ。ここはIOCの調査方法を調べ、同じような調査を実施したうえで、世論の「盛り上げ」を図るべきだろう。

冷めた国民性もあろうが、やはり支持率は高い方がいい。ロンドン五輪後のパレードなど、メダリスト動員によるキャンペーンで東京五輪パラリンピックにポジティブな人は増えているだろう。さらにどう活動を継続し、機運を高めていくかが成否のポイントとなる。

さて石原都知事辞任の影響は、といえば、国内向けにはどうってことない。もはや過去の人、「発信力」も落ちていた。もちろんリーダーシップはそれなりにあったから、今後の招致活動における「判断力」が鈍る危険性はあろう。新知事がだれになっても、いまさら招致反対は言えまい。12月の知事選で招致の是非が争点となる可能性は低いのではないか。

海外向けに関しては、これまで石原知事の知名度はさほどなかった。招致活動の中途でトップが変わるというのは印象がよくないけれど、石原氏不在によるマイナスはそうなかろう。むしろ石原知事は領土問題をはじめとして中国を刺激する発言を繰り返しただけに、これで日中関係を修復し、中国のIOC委員、あるいは中国が影響力を持つアフリカ諸国のIOC委員をとりこむチャンスが膨らんだ。

いずれにしろ、本当の勝負はIOC委員の取り込みである。とくに東京の基礎票となるアジアのIOC委員との関係強化である。その上で立候補都市のいない南北アメリカ、オセアニア、アフリカへと東京支持を拡大し、最後には欧州の切り崩しを図ることになる。

さらにいえば、国際関係では、福島第一原発事故の影響による電力不足の不安の払しょく、安全性のアピール、復興への取り組みがカギをにぎることになる。立候補ファイルの提出期限は来年1月7日。それまでに安全面での明確なスケジュール、電源の確保の具体的なプランを示す必要がある。

国内の支持率をある程度まで引き上げ、IOC委員をとり込んでいく。海外の本格的な招致活動の解禁は来年1月である。

【『スポーツ屋台村』(五輪&ラグビーPLUS・松瀬学のコラム)&NLオリジナル】