白い恋人たち
トニー・ザイラー以来となる史上2人目のアルペンスキー滑降、大回転、回転の三冠王に輝いた、地元フランスのジャン=クロード・キリー。優美なスケーティングで「氷上のバレリーナ」と呼ばれた女子フィギュアスケート金メダリスト、アメリカのペギー・フレミング。ふたりのヒーロー、ヒロインが誕生したことで知られるグルノーブル冬季オリンピックを追いかけた記録映画。
監督は「男と女」でカンヌ映画祭グランプリを受賞したクロード・ルルーシュが担当した(フランソワ・レシャンバック監督が協力)。
言葉による表現を徹底的に削ぎ落とし、ナレーションも付けず、選手や観客の表情と、オリンピックの興奮に包まれるグルノーブルの様子を、映像と音楽だけで描いていく。1968年の公開当時、フランシス・レイ作曲のロマンティックなテーマ音楽とともに、日本でも大ヒットした。
「13 Jours en France(フランスの13日間)」が原題で、作品の冒頭では「これはたまたまグルノーブルにいた映画人が、13日間の感動的な日々を、見たままに記録した作品である」と説明されるが、これはもちろん演出上の設定。ただ、そのせいか日本の配給を担当した映画会社には、フィルムが届く前に「男女のジャーナリストが見た五輪映画」だと伝えられており、宣伝部で「白い恋人たち」との邦題を付けたのだという。
「作品の内容とは異なる間違った情報だったのですが、結果は大当たりした」(東宝東和・元宣伝部長の小池晃さん。読売新聞95年4月3日付 夕刊)