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ミステリー、アラスカ

 冬は気温マイナス20度。池も河川も凍りつくアラスカ州の架空の町ミステリーでは、唯一の娯楽がアイスホッケー。町内チームをふたつに分けての選手権「サタデー・ゲーム」は、この町の誰もが楽しみにしている週に1度のお祭りだ。
 チームを運営するのは町の委員会。チームのメンバーを選ぶのも委員会の役目で、ときには峠を越えたベテランに引退を勧告。有望な若者との入れ替えも行う。
 得点王は食料品店の店員、最速を誇るのは高校生、キャプテンは保安官。メンバーに選ばれることは、ミステリーの男たちにとって最高の栄誉なのだ。
「隔離された環境のなか、技術を磨いている“生まれながらのスケーター”。彼らのスケート力はNHLにも通用し得る―」。ミステリー出身で、いまは都会に暮らす胡散臭いプロデューサーが、こんな記事を「スポーツ・イラストレイテッド」誌に掲載。それをキッカケに、ミステリーの町内チームと、NHLの強豪ニューヨーク・レンジャーズとの試合を画策する。
 町民集会では「ミステリーが笑い者になるのはゴメンだ」との反対意見も出るが、「5人制のNHLと違って、この町のルールは4人制。凍った池の上のリンクには、オフサイドラインもなければフェンスもない。ただっ広い池の上でなら勝算はある」と、レンジャーズとの対戦を受諾。ミステリーの町始まって以来の、大イベントがスタートする。
 アイスホッケーでは集客が難しいとの判断だったのか、日本では劇場未公開の作品だが、小さな田舎町の狭いコミュニティのなかで、一生を過ごしていく者同士の軋轢やすれ違いを描いたシーンには、多くの人が共感を抱くはず。なにより、アイスホッケーの専門知識はなくてもスポーツ好きであれば、鑑賞(観戦)のあと、爽快な気分になること間違いなしの娯楽作だ。
 劇中の試合中継のホスト役や解説者役として、元NHL選手のジム・フォックスや、アイスホッケーの殿堂入りを果たした伝説的選手で、レンジャーズOBのフィル・エスポジトらが実名で出演。試合前の国歌斉唱も、なぜかロック界の大御所リトル・リチャードが本人役で出演している。