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国家代表!?

 韓国南部の徳裕山(トギュサン/標高1,614m)の麓に位置する観光都市・茂朱(ムジュ)。この町では、2002年の冬季五輪招致が進められていた。
 IOC(国際オリンピック委員会)から「五輪競技の開催実績に乏しい」と指摘された地元招致委員会は、アピールのため韓国初となるスキージャンプのナショナルチームを結成。幼くして養子縁組に出された先のアメリカで、“アルペンスキー”のジュニア代表に選ばれた経歴を持つボブ(ハ・ジョンウ)をスカウトする。
 当初は「金と引き換えに、自分を捨てた韓国の国家代表なんて、クソ喰らえだ」と、頑なに拒むボブだったが、オリンピックで活躍すれば、生き別れた母親が名乗り出てくるかもしれないと翻意。それぞれにワケありのジャンプ初心者のメンバーたちと、長野オリンピック出場を目指す悪戦苦闘の日々が始まる。
 「クール・ランニング」のボブスレーを、スキージャンプに置き換えただけのようなストーリーとクライマックス。さらには、韓国で生まれアメリカで育ち、代表選手になるため韓国に帰化したボブのアイデンティティをめぐる苦悩、兵役の問題、ギャグ、恋愛、家族の物語…などなど、これでもかと見せ場やサイドストーリーが盛り込まれていて、冗長さは否めない。が、とにかく観る人を楽しませようとするところは、いかにも韓流映画らしい。
 ジャンプシーンは本物の韓国代表選手が実演。公開当時、韓国では約850万人を動員する大ヒットとなり、それまで韓国国内ではまったくのマイナー競技だったスキージャンプへの関心が急上昇。強化費の増額や実業団チームの誕生につながったという。
 2018年の冬季五輪は韓国の平昌(ピョンチャン)で開催されるが、11年7月のIOC総会における平昌招致団のプレゼンテーションで、最後のスピーチを担当したのが、トリノ五輪モーグル銅メダリストのトビー・ドーソンだ。釜山生まれで韓国名キム・スチョルというドーソンは、幼少期に孤児となり養護施設で生活。3歳のときにスキー指導員をしていたアメリカ人夫妻と養子縁組を結び、コロラド州へ移住。のちに米国代表に選ばれた経歴の持ち主だ。さすがにジャンプの競技経験はないものの、主人公ボブのモデルになったのは彼だと言われている。