ドラフト大谷、日ハムからメジャーの道はないのか?(松瀬 学)
夢ではなく未来を。ドラフト大谷投手
素朴な疑問。プロ野球のドラフト会議で日本ハムから1位指名された大谷翔平投手を、岩手・花巻東高の佐々木洋監督はどんな指導をしてきたのか。親がどうしつけたのか。
ドラフト翌日、学校を訪ねてきた日本ハムの68歳の山田正雄ゼネラルマネジャーに対し、18歳の大谷投手が「練習中」ということでまったく対応しないとはどういうことだろう。イチ高校生として礼儀がなっていない。過保護というか、周りが大谷投手を甘やかし過ぎていると思う。
確かに大リーグ挑戦を表明していた大谷投手にとって、プロ野球の球団に指名されたのは迷惑だったかもしれない。ショックもあろう。でもNPB(日本野球機構)の現行ルールの下、日本ハムから「ことし一番の選手の評価」を受け、ドラフト1位指名されたのである。「プロ志望届」を出した選手を指名したのだから、決して強行指名ではない。勘違いのメディアの日本ハムへの「意地悪球団」「ワルモノ球団」の表現は違うだろう。
指名を受けるか受けないかはともかく、周りが大谷投手をちゃんと対応させるのが一般常識ではないか。
大谷投手は、ダルビッシュ有にあこがれていると聞く。ならば、彼と同じように、日本ハムで結果を残し、米国に渡る道が賢明だと思う。夢ではなく、未来をみてほしい。現実を見てほしいのだ。
大リーグへの道は厳しい。マイナーリーグは甘くない。日本ハムのような育成システムはそう、あるまい。長時間のバス移動、劣悪な生活環境に耐え、弱肉強食の生存競争を勝ち抜いていかないといけない。マイナーから通訳を付けるって、断言する。そんな選手は大リーグで活躍はできない。
問題なのは、日本のドラフトに関し、大リーグには何のルールもないことである。あいまいな紳士協定らしきものがあるにはあるが、それを破ってもペナルティーがない。だから大リーグの球団はドラフト前から大谷投手に堂々と会い、おいしい話をふんだんにしていく。リスクやマイナス面の話をすることはない。かたや日本のプロ野球のスカウトは原則、ドラフト前、高校生には直接、会えない。これってアンフェアではないか。
しかも大リーグ球団は日本のルールに縛られないから、契約金をナンボでも出せる。いわばやりたい放題なのだ。NPBも、国内復帰に関する「田沢ルール」など国内向けのルールではなく、FAやポスティングシステムに関するよう、大リーグとの間に明確なルールづくりを目指すべきである。
160㌔の速球を投げるほどの素質があるのだからこそ、大谷投手には大事に育ってほしい。「職業選択の自由」「本人の意思」というけれど、まだ未成年の18歳である。何が本当に本人の将来のために一番いいのか。個人的な利害を抜きにして、高校の監督らは指導してやらねばならない。
これで日本ハムは来月3月31日まで、大谷投手の「選手契約交渉権」を得た。その間に大リーグ球団が大谷投手と契約を結んでも明確なルール違反にはならない。さすがに大リーグ球団もそこまではしないと思うが、契約社会の米国ゆえ、「日本ハムと大谷投手との独占交渉権はメジャーには関係ない」と交渉に乗り出す球団もあるかもしれない。
とにかく、この日米間のあいまいなシステムをどうにかしないか。ルールをつくらないなら、国内も一切なしの「自由競争」とする。「戦力の均衡」を目指してドラフト制度を維持したいのであれば、日米間でもドラフトに関するルールを明文化するのだ。
さらにいえば、「戦力の均衡」を目指すのであれば、ドラフト改革は必須である。完全ウエーバー制にし、同時にFA権の取得年数を短縮するのである。
【NLオリジナル】