星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ⑧11.5~11.13
国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。今回は、車いすテニスで日本人が大活躍。新たな歴史がつくられました。また、2020年東京パラリンピックに向けた動きも少しずつ見られるようになってきました。
■車いすテニス
・5日: 世界トップの車いすテニスプレイヤーが集結し、2013年を締めくくる戦い、「NEC車いすテニス・マスターズ選手権」が米国カリフォルニア州のミッション・ヴィエホで開幕した。1944年にスタートした同大会には、世界ランキング上位のシングルスプレイヤー、男女各8選手とクアード4選手が出場し、世界一を競う。男女の部は4選手ずつの2グループで総当たり戦を行い、各グループ上位2名が準決勝に進む。クアード(⇒註)は予選ラウンド上位2名が決勝に進出する。日本からは男子シングルス世界ランク1位で、前年覇者の国枝慎吾と、女子同4位の上地結衣がエントリー。ともに初戦白星でスタートした。
⇒クアード(四肢まひ): まひなどの機能障害が3肢以上にみられる重度障害の人のクラス。オーバーハンドサービスができない人、手動車いすの操作に支障がある人、ラケットを握るのに支障があるためテープで固定したり、補助具を使う必要のある人など、障害の内容や程度には個人差が大きい。男女の区別はなく1クラスとして実施される。
・7日: 今年は「国際テニス連盟車いすテニス・ダブルス選手権」も同会場で併催となり、この日から予選ラウンドからスタートした。単複のマスターズが同一会場で同時開催されるのは2002年以来初であり、またヨーロッパ以外で行われるのも初めてとなる。両イベント合わせて12カ国から38選手がエントリーしている。8組が出場する男子ではヨーキム・ジェラード(ベルギー)と組む国枝慎吾が、6組が争う女子には、ジョーダン・ホワイリー(イギリス)とペアの上地結衣がエントリーしており、それぞれ白星発進した。また、男子シングルスでは国枝慎吾が2勝1敗でグループ1の1位となり、準決勝進出を決めた。
・8日: 女子シングルスの予選ラウンドが終了し、上地結衣は2勝1敗でグループ2の2位になり、準決勝進出。
・9日: 男女シングルスの準決勝が行われ、男子は国枝慎吾がステファン・ウデ(フランス)をフルセットの末、破った。女子は上地結衣がマーホレン・ブイス(オランダ)をフルセットで下した。
・10日: ダブルス準決勝が行われ、上地結衣/ホワイリー組が決勝進出。一方、国枝慎吾/ジェラード組はフランスペアに破れ、3位決定戦に回った。
・11日: 大会最終日を迎え、各種目の決勝が行われ、上地結衣が単複とも初優勝を飾り、2冠達成の快挙を果たした。まず、シングルスで上地はイースケ・フリフィオエン(オランダ)をフルセットの熱戦の末、制した。女子シングルスの王座は大会創設以来20年間、オランダ選手が守っていたが、上地が新たな歴史を切り開いた。さらに、ホワイリーと組んだダブルスでも、サビーネ・エラーブロック(ドイツ)/ホターチョ・ムンジャーネ(南アフリカ)組をストレートで破った。
男子のシングルスでは、国枝慎吾が第2セットで粘りを見せたジェラードをタイブレークの末、振りきり、2連覇を達成した。またダブルスはウデ/ゴードン・リード(イギリス)組が優勝し、国枝/ジェラード組はオランダペアをフルセットの末、退け、3位に入った。
クアードはシングルスで世界ランク1位のデイビッド・ワーグナー(アメリカ)が優勝し、ダブルスでもワーグナーが同国のニコラス・タイラーとのペアで優勝し、2冠達成した。
■ブラインドサッカー
・10日: 8月から開催中の関東地域のチームを対象とした「関東リーグ2013」の第6節が10日(日)、新宿区立大久保公園で開催され、B2/B3クラスの公式戦1試合が行われた。A.C.TOKYO(東京)が3-1で東京N-flugelsを下し、現時点で1勝1分けの勝ち点4で参加3チームの中で首位に立っている。また、この日は、「ダイバーシティDay」としてさまざまなイベントも同時に行われた。一般来場者向けのブラインドサッカー体験会に加え、多国籍の文化背景を持つ子供たちを対象とした多言語による体験会も行われた。
■東京発
・12日: 文部科学省の下村博文大臣が共同通信とのインタビューの中で、2020年の東京五輪・パラリンピックに向けた選手強化の一環として、パラリンピック専用のナショナルトレーニングセンターを早急に設置する考えを明らかにした。現時点ではパラリンピック選手の強化事業の所管は厚生労働省にあるが、来年度には五輪と同じ文科省に一本化されることが決まっている。大臣は、「パラリンピックは医療関係の付帯的な施設も必要だから、既存の施設を生かしながら、その近くでトレセンを造れる場所を探していく必要がある」とも説明したという。
■ゴールボール
・13日: アジア・オセアニア選手権が、中国・北京で開幕した。上位国に204年IBSAゴールボール世界選手権(6月/フィンランド)の出場権が与えられる予選大会も兼ねている。男子は中国、オーストラリア、イラン、日本、モンゴル、タイの6カ国が世界選手権の切符2枚を争う。現世界ランク21位の日本は同13位で2010年大会銅メダリストのイランと同16位で同銀メダリストの中国に挑む形となる。イラン、中国は昨年のロンドン・パラリンピックではベスト8。
4チームが出場する女子は2012年ロンドンの金メダリスト、日本と、同銀メダリストの中国がすでに世界選手権出場権を得ているため、残るイランとオーストラリアがア残り1枚の切符を争う。日本は現在、世界ランク4位。来年の世界選手権前に同2位の中国としっかり戦っておきたい。
初日には男女4試合ずつが行われ、日本男子はイランとモンゴルと対戦し、2勝発進。女子は中国、オーストラリアと戦い、ともに無得点ずつで引き分けた。大会は17日まで続く。
(カンパラプレス配信+NBSオリジナル)