星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ⑦10.31～11.7
国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。今回は、車いすマラソンで生まれた偉大な記録や、ブラインドサッカーやアーチェリーの2016年リオ・パラリンピックに向けての取り組みや動きなど、変化をつづけるパラ・スポーツ界の話題をお届けします。
■車いすマラソン
３日： ニューヨークシティ・マラソンが、同市市街コースで行われ、車いす部門で地元アメリカのTatyana McFadden（タチヤナ･マクファーデン／24）が１時間59分13秒で優勝した。McFaddenはこの結果、車いすレーサーとして史上初の１年間でボストン、ロンドン、シカゴ、ニューヨークの車いすレース４大メジャー制覇を成し遂げた。２位は土田和歌子（サノフィ）で２時間02分54秒、３位はManuela Schar（マニュエラ･シャー／スイス）で２時間03分53秒。なお、Scharと土田は１週間前に行われた大分国際車いすマラソンで１時間38分07秒の同タイムで女子T５３／５４（車いす）クラスの世界新記録を更新したばかりだった（優勝はSchar）。McFaddenはこの夏、リヨン（フランス）で行われたIPC世界選手権のトラック種目で６冠に輝き、現在は来年３月に開催される2014冬季パラリンピック・ソチ大会のクロスカントリースキーのアメリカ代表を目指している。
一方、男子は混戦になった。優勝はMarcel Hug（マルセル･フグ／スイス）で１時間40分14秒、２位は同タイムでErnst Van Dyk（エルネスト･ファン=ダイク／南アフリカ）、３位には１秒差でKurt Fearnley（クルト･フィアンリー／オーストラリア）が入り、さらに１秒差で副島正純、洞ノ上浩太がフィニッシュし、それぞれ４位、５位になった。Hugは昨年のロンドン・パラリンピックのマラソン銀メダリストで、土田らと同じく前週の大分大会にも出場し、４連覇を果たしたばかりだった。
■ブラインドサッカー
５日： 日本ブラインドサッカー協会（JBFA）は５日、Ｂ２／Ｂ３（弱視）クラスの日本代表監督として、斎藤友規（31）氏を選任したと発表した。斎藤氏は学生時代より、サッカー、フットサルの競技経験が豊富で、現在は北杜学園仙台医療福祉専門学校教員で、フットサル部の監督も務めている。
JBFAは昨今の世界的な競技レベルの向上を受け、「ブラインドスポーツとしての指導」から「フットサルそのものの指導」に切り替える必要性を痛感。６月から公募を開始し、７月の代表強化合宿への参加などを経て、斎藤氏に決定したという。
監督就任にあたって斎藤氏は、「まず、このような素晴らしい機会を与えていただいた協会をはじめ、関わる全ての方々に感謝致します。今後、協会の掲げるビジョンを大切にしながら代表チームとしての誇りを強く感じ、多くの方々に愛されるチームになるよう、常に感謝の気持ちをもって強化に取り組み、チー ム一丸となって勝利にこだわるフットサルを目指します。その為に全力を尽くして戦いますので、ご支援、ご協力を何卒宜しくお願い致します」とJBFAを通してコメントした。
６日： JBFAは、「2014IBSAブラインドサッカー世界選手権Ｂ１大会」を来年11月、国立代々木競技場のフットサルコート（東京・渋谷区）で開催すると発表した。同協会松崎英吾事務局長によれば、会場を渋谷区に選んだのは、「より多くの人に伝えたい、知ってほしい」という理由からで、コート３面分を使い、その周囲に仮設スタンドを設置する計画という。ただし、出場チーム数や試合形式などは国際視覚障害者スポーツ連盟（IBSA）の決定を待っている段階だという。
現日本代表の魚住稿監督は、「来年10月のアジア･パラ競技大会で（2016年パラリンピックの）リオデジャネイロの切符を争うことになるだろう。そこで目標のパラリンピック初出場を勝ち取れば、世界でのメダルを視野に入れる次のステップに移れる。11月の世界選手権は、ホームの環境の中で世界の各チームに思い切りぶつかっていける貴重な舞台となる。やるからには上位に行きたい。決勝トーナメント進出を一つの目標としたい」と抱負を述べた。
また、代表チームの落合啓士主将は日本での大会開催に、「うれしい気持ちが７割で、３割は身が引き締まる思い。今までよりも素晴らしい結果を残さなければならない」と覚悟を口にした。サッカー元日本代表の北澤豪氏が大会アンバサダーに就任したことも発表された。
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【参考】「第12回アクサ ブラインドサッカー日本選手権Ｂ１大会」（2013年6月16日）より[/caption]
■アーチェリー
７日： タイ・バンコクで11月１日から開催されていた、“World Archery Para-Championships（パラ･アーチェリー世界選手権）”が閉幕した。５大陸各地から254選手がエントリーし、全13種目（個人７、チーム６）でメダルを競った。国別メダル獲得数では金メダル３個（総数３）を獲得したロシアが１位となり、２位は金２個（総数７）のイギリス、金２個（総数２）のトルコ。日本は銅１個を獲得して15位だった。
日本唯一の銅メダルは、コンパウンド女子チーム戦で、３位決定戦が神谷千恵子、永野美穂、平沢奈古の日本がイランを振り切った。また、コンパウンド混合オープンでは日本の服部和正／平沢奈古組は３位決定戦でイタリアペアに敗れ、惜しくも４位だった。
７日： 世界アーチェリー連盟は、パラリンピックと世界選手権の参加条件として、選手の障害の部位がアーチェリーの競技に直接的、かつ重大な影響を与える部位に限るという、従来よりも選手層を狭める方向に変更することで、国際パラリンピック委員会（IPC）と合意に至ったと発表した。
この変更の結果、たとえば、昨年のロンドン・パラリンピックのメダリストでも、次回リオ大会の出場できない可能性もある。だが、同連盟が主催、または公認する大会についてはすべて「オープン大会」となり、新たな参加条件を満たさないような身体の障害をもつ選手も参加可能となる。さらに、オープン大会では障害を補助する装具や道具の使用も認められ、それに伴い、審判や他の選手への指導も徹底するという。同連盟ではまた、今回の変更はあくまでも今後の大会に対する変更であり、過去の実績について影響が及ぶものではないとしている。
（カンパラプレス配信＋ＮＢＳオリジナル 写真：星野恭子）
