ドラフト直前、どうなる菅野(松瀬 学)
『歪んだドラフト制度が不幸を生む』
「運命の日」がやってくる。プロ野球のドラフト会議が25日、開かれる。個人的な関心は、米大リーグ挑戦を表明した花巻東高の右腕・大谷翔平ではなく、またも巨人入りを熱望した“ドラフト浪人”の東海大・菅野智之投手の去就である。
菅野は昨年、1位指名された日本ハムへの入団を拒否して、1年間、浪人をした。今回は意中の巨人でなければ、米国でプレーする可能性も示唆した。伯父の巨人・原辰徳監督との関係、東海大と巨人との関係もわからないではないが、もうそんなワガママは通らない。ま、こんな経緯でメジャーにいっても野球選手として大成はできまい。
むしろこの巨人ならではの手法に屈し、他の球団が菅野指名を躊躇するのがコワい。巨人との競合覚悟でも、1位指名を予定している球団(DeNA?)には強行指名に踏み切ってもらいたい。
だいたい「職業選択の自由」とは何なのか。簡単にいえば、プロ野球の球団は、「プロ野球株式会社」のひとつのセクションみたいなものだ。おじさんがいる人事部でなきゃ、アメリカの会社に就職する、と言っているようなものじゃないのか。どこかの部署、いや球団に入って、FA権を行使して、堂々と巨人にいけばいい。まあ、いつまでも原監督が同じ立場にいるとは思えないが。
ドラフト会議のたび、思うのは、その制度のいびつさである。球団の利益最優先が跋扈するアンフェアなカタチだから、いつも誰かが不幸になる。なぜ、大リーグのように完全ウエーバー方式にしないのか。同時にフリーエージェント(FA)権の取得の年数短縮が必要ではあるが。
完全ウエーバー方式とは、前年の下位球団から順に指名し、ニ順目以降は指名順序が折り返しとなる。現行のプロ野球では、ニ順目以降はウエーバー方式だが、一巡目は各球団が指名希望選手を提出し、重複があれば抽選となる。抽選方式だから、「逆指名」のようなことがまかり通っている。
確かにドラフト会議はまともになった。2007年の「西武のドラフト裏金問題」発覚以降、裏金は随分、少なくなったようだ。逆指名ドラフトや自由枠も廃止され、特定球団が札束で才能ある選手をひとり占めすることもなくなった。でも相変わらず、長野久義選手や沢村拓一選手は逆指名のごときカタチで巨人に入団した。これはアンフェアである。
どだい日本のプロ野球球団に共通の経営方針はあるのか。大リーグは明快で、「平等。弱者救済。共存共栄」、すなわち球界全体で一緒に繁栄していこうという「リーグ」の根本原則が貫かれている。だからビッグマーケットの球団が違反をすれば、ドラフト指名権はく奪など厳しい処分を受けることになる。
さて日本のプロ野球はどうだ。共通の経営方針があるのかどうか。歴史をみれば、自分の球団だけが儲かればいいといったスタンスである。とくに「盟主」を名乗る巨人のドラフトにおける強引さは目にあまる。
ドラフト会議の改革はマストである。完全ウエーバー制にし、同時に、フリーエージェント権の取得年数を短縮する。そうやって球団の戦力均衡を図り、シーズンを盛り上げていくのである。球界全体の発展のため、ファン獲得のため。
ついでにいえば、プロ野球の「推定契約金」「推定年俸」はもうやめないか。契約金や年俸を秘密にするから、見えないカネが動く。大リーグのごとく、細かく出したらどうだ。そうすれば、例の巨人の「高額契約金問題」も起こりにくかっただろう。
【NLオリジナル】