「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」⑥10.24~10.30
「パラスポーツ・ピックアップ」は、国内外各地から届くパラリンピック競技の話題を独自にセレクトし、1週間分まとめてお送りするシリーズです。
今回は、日本の頂点を目指す戦いから、開幕まで5カ月を切ったソチ・パラリンピック大会出場権をかけたアイススレッジホッケー日本代表の挑戦や、2020年東京大会へのステップとなる大会までバラエティ豊かな内容です。
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■アイススレッジホッケー
・26日: イタリア・トリノで開催されていた、アイススレッジホッケーのソチ・パラリンピック世界最終予選が閉幕した。前回バンクーバー大会で銀メダルを獲得した日本など6カ国が総当たり戦でソチへの3枚の切符を争ったが、日本は1勝4敗の5位に終わり、出場権を逃した。日本が喫した4敗はすべて1点差という紙一重の戦いだった。「その差」はどこにあるのか。一日も早く答えを見つけ、一日も早く克服し、2018年韓国・平昌大会での日の丸復活を実現してほしい。
大会最終カードはともにリーグ戦4勝0敗で事実上の決勝戦となった韓国-イタリア戦。前後半を終わって2-2で、10分間の延長戦はともに無得点に終わり、大会初のシュートアウト(サッカーのPK戦に当たるもの)にまで達する熱戦の末、韓国が3ー2で勝利した。この結果、韓国はソチ・パラリンピックの第6シードも勝ち取った。
なお、この世界最終予選で切符を手にした韓国、イタリア、スウェーデンの3チームと、先の世界選手権で決まっていた5チーム(カナダ、アメリカ、ロシア、チェコ、ノルウェイ)の計8チームがソチ・パラリンピックに出場する。
■車いすマラソン
・27日: 第33回大分国際車いすマラソンで、女子のT53/54クラスの世界記録が12年ぶりに塗り替えられた。新記録となった1時間38秒07をマークしたのは優勝したマニュエラ・シャー(スイス)と同タイムで2位となった土田和歌子。これまでの記録は2001年の同大会で土田自身がマークしたもの。台風一過の好気象条件下で行われ、勝負はトラックまで持ち込まれたが、ゴール手前でスプリント力に勝るシャーが土田をかわした。
一方、同クラス男子はロンドンパラリンピックマラソンの銀メダリスト、マルセル・フグ(スイス)が1時間23分49秒で大会4連覇を飾った。レースは序盤からフグが抜け出したまま、一人旅となり、他を圧倒。ただ、競り合いがなく、記録更新とならなかったのは残念だった。2位は山本浩之で1時間28分38秒、副島正純が同タイムで3位となった。
また、同クラス男子ハーフの部ではフランスのピエール・フェアバンクが45分05秒で優勝した。2位には競技歴2年の渡辺勝が入り、今年から新設された新人賞に輝いた。
⇒大分国際車いすマラソン
1981年から始まった、車いすマラソンの国際大会。歴史と権威を誇り、毎年国内外からトップランナーが集結し、世界最高峰のレースを繰り広げる大会。
■総合大会
・30日: マレーシア・クアラルンプールで26日から開催されていた、ユース世代のパラアスリートの祭典「第3回アジア・ユース・パラゲームズ2013」が閉幕した。日本からは6競技(陸上競技、競泳、ボッチャ、ゴールボール、車椅子バスケットボール、バドミントン)に選手93名が出場。全競技合わせて84個(金19、銀20、銅25)のメダルを獲得し、第2回大会(2009年/東京)に続き、首位の座を守った。
大会はアジアの若い選手に国際経験を与えることを主な目的としているが、日本チームにとっては2020年東京パラリンピックを主力として担う世代が多数参加しており、高い意識とパフォーマンスが期待されていた。
メダルレースに大きく貢献した一人が陸上競技T54(車椅子)クラスの西勇輝(19)だ。日本選手団主将を務めた西はT54(車いす)クラスで短距離3種目(100m、200m、400m)で個人3冠を達成。自身最終種目で、「いちばん苦手」と話していた400mでは自己新となる53秒89をマークした。
「周りの選手を見ながら、まだ行ける、まだ行けるって冷静にレースが展開でき、(3種目の中で)一番いいレースだった。苦手な400mで自己ベストが出て金メダルが獲れて、大会を最高の形で締めくくれた。(主将という)貴重な体験をさせてもらったので、恥ずかしくない、主将らしいレースをしたいと思っていたので、(3冠で)一安心できました」と最高の結果で責任を果たし、安堵の表情を見せた。
[caption id="attachment_16213" align="alignnone" width="620"] 個人3冠の陸上競技、西勇輝選手[/caption]
競泳陣もメダルラッシュに沸いた。国際大会初出場だったという冨樫航太郎(15)が競技初日の男子S6(機能障害)クラスの100m自由形、100m平泳ぎで金メダル2個を獲得。「今回は国際経験を積みあげながら、楽しく泳ぐことも目標だったので、まず初日はそれができたと思います。明日のバック(背泳ぎ)ではちゃんとベストを出して、金メダルを目指し、日本に帰りたい」と初日のレース後に語った通り、翌日の100m背泳ぎで3冠目を獲得した。
ボッチャは個人戦で金2、銀1、銅3、団体戦で金1、銅1を獲得した。個人と団体で2冠に輝いた大堀誠眞(19)は、「練習の成果がでて、メダルを獲れて最高です。(金メダル2個を)首にかけたら重かったです。今後は日本選手権で上位に入れるように頑張ります」と話した。
また、銀メダルを獲得したゴールボール女子の若杉遥(18)は、「優勝という目標を達成するために今までみんなでやってきたので、(決勝で中国に)負けてしまったのは悔しいところはありますが、ここまで戦ってこられたことはすごいことだとも思っています。この悔しさを次の世界選手権やパラリンピックに活かしていきたい」と力強く話した。
ゴールボール男子は銅メダルを獲得した。エースの辻村真貴(18)は「3位という結果で、今まで自分がやってきたことはできたので、悔いはない3位です。でも、やっぱりもっと輝いた金色のメダルがほしいです。ただ、もうユースには出られないので、世界選手権やパラリンピックで絶対に金メダルがほしいと思いました。これからも頑張っていきたい」と話し、2020年の東京パラリンピック決定に対しては、「日本の皆さんに見られることになるから、恥じないプレイをしたい。しっかり全力で戦えるようにやっていきたい」と意気込んだ。
車いすバスケットボールは、参加国の関係から今回は男子のみの派遣となり、5オン5では銀メダル、3オン3では銅メダルを獲得した。坂野晴男監督は、5オン5で優勝した強豪のイランと初戦で当たり、「できれば、最終戦で戦いたかった」と明かしたが、「(日本は)試合を消化するなかで、最終的に素晴らしいチームに仕上がった」と振り返った。「この世代がこのまま東京でのパラリンピックに上がってくるので、それも見据えた上で我々も今後の指導をやっていかなければならない」と気を引き締めていた。
バドミントンはシングルスで銅3つ、ダブルスで銅1個を獲得した。個人で2個の銅メダルを獲得した藤原大輔(19)は「嬉しい。他国の選手とも交流ができていい経験になった。いろんな人の支えで、こんな大会に出してもらえて感謝します」と笑顔。バドミントンは現在、パラリンピック正式種目ではないが、「東京で正式種目となり、メダルが獲れたらいいなと思った」と話した。
第4回アジア・ユース・パラゲームズは、開催地は未定だが、4年後の2017年に行われる予定。また、2014年にはアジアパラ競技大会が韓国・仁川で開催されることが決まっている。
(カンパラプレス配信+NBSオリジナル 写真:星野恭子)