世界一バカなスポーツ ~ ビアポン (原題「LAST CUP」)
「ビアポン」というスポーツ競技を御存知だろうか?
2人1組のチーム同士で対戦。互いに細長い机の端に紙コップを10個、ボウリングのピンと同じ三角形に並べたところで試合開始、机を挟んで向かい合った両チームは、敵側のコップを狙ってピンポン球を投げ入れていく。紙コップのなかにはビールが入っており、見事ピンポン球が相手のコップに入ったら、なかのビールを相手選手に飲ませて、そのコップは取り除く。机の上から相手のコップがすべてなくなれば勝利となる。ビール(Beer)+ピンポン(Pingpong)= ビアポン(Beerpong)というわけだ。
相手チームの選手に触れたり、風を起こしたりしなければ、どんな妨害行為をしてもよく、ピンポン球を投げる瞬間に奇声を発したり、オカシナな顔をしたり。なかには酔いが回ったせいか、着ているTシャツをまくりあげ、乳房を見せる女性までいる(何しろビールを何杯も飲んでますからね・笑)。
始まりはアメリカの大学生の間で流行ったパーティの遊びだったらしいが、いまでは毎年ラスベガスで‘ワールドシリーズ’が開催され、優勝賞金はなんと5万ドルだ。この映画ではビアポン世界一を目指す4選手に密着、その奮闘を追いかけていく。
「世界一バカな」との邦題が付けられたとおり、大のおとなたちが真剣な眼差しでピンポン球を投げ合っては、ビールを飲んで勝った負けたと大騒ぎ。あまりのバカさ加減に大笑いするしかない。とはいうものの、ゴルフやサッカー、野球といったスポーツと、ビアポンとでは、いったいどんな「違い」があるだろうか。
スポーツは所詮遊びである。ボールがカップインしようが、ゴールネットを揺らそうが、120m先のスタンドまで届こうが、そのこと自体に意味はない。本来「スポーツ(SPORTS)」とは、冗談、戯れ、気晴らし、遊技……といった意味の言葉だ。ならば、ビアポンは「スポーツそのもの」と言えるのではないか。
もちろん、やがてスポーツには「意味」が加わり、政治、経済、テクノロジーなどとも結びつく。オリンピックはその最たる例だ。が、スポーツの原点は遊びであり、遊びだからこそ多くの人が熱狂する。そんな単純な真実をこの映画は示している。
人類の祭典にもなれば、バカバカしい酒の肴にもなる。スポーツとは、それほどに幅広く奥深いのだ。