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星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ(9.1~9.22篇)(星野恭子)

 日本時間9月8日未明、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定しました。オリンピックは7月24日~8月9日に開催され、続いて8月25日~9月6日にパラリンピックが行われます。とはいえ、オリンピックに比べると、パラリンピックに関する情報はまだ少ないのが実情です。

 この「パラスポーツ・ピックアップレビュー」は、国内外各地で日々、行われているパラリンピック競技の話題を独自にセレクトし、1週間分をまとめてお届けするシリーズです。2020年大会をより楽しんでいただくための情報源になれたらと思います。初回の今回は変則的に、2013年9月前半を振り返ってみました。

■陸上競技
・6日: 国際陸上競技連盟(IAAF)が主催するダイヤモンドリーグシリーズの最終戦「ブリュッセル(ベルギー)」が行われ、エキシビションレースとして行われたパラリンピック女子(下肢切断)200m走に、日本の高桑早生(慶応大学)が招待され、30秒56で5位(7選手中)に入った。高桑は昨年のロンドンパラリンピック代表で、現在、IPC(国際パラリンピック委員会)の世界ランキングで5位。優勝はオランダのMarlou Vna Rhijnでタイムは26秒95だった。

 IAAF主催の大会ではときどき、IPC(国際パラリンピック委員会)の世界ランキング上位の車椅子や義足のアスリートを招待したエキシビションレースの開催されることがある。日本選手が招待されるケースも増えており、高桑は6月のローマ大会の100m走にも招待され、14秒13で2位の結果を残している。

・7~8日: IPC公認大会の一つであり、国内最高峰の大会、ジャパンパラ大会が山口県山口市の維新百年記念公園陸上競技場で行われた。7月の世界選手権(フランス・リヨン)代表組が強さを見せた。

 男子走り幅跳びT42(大腿切断)の金メダリスト、山本篤(スズキ浜松AC)は、100mで自身のもつ日本記録に0秒25差に迫る、26秒66での大会新で優勝。また、男子マラソンT11(視覚障害・全盲)の銀メダリストの和田伸也は、800mで自身のもつ日本記録を0秒02更新する2分11秒03の日本新記録で優勝した。リヨン代表組の大西瞳(ヘルス・エンジェルス)も100mT42(大腿切断クラス)で自身の記録を0.04秒更新する17秒77の日本新記録で優勝した。

 また、パラリンピック4大会連続代表の鈴木徹(プーマジャパン)が男子走り高跳びT44(下腿切断クラス)に出場。昨年のロンドン五輪以来の公式戦だったが、1m90を1回でクリアして優勝。元気な姿を見せた。

 この日未明に決定した、2020年東京パラリンピックについては、「世界中から選手が集まるパラリンピックを生で見るチャンス。日本の多くの方に見ていただきたい」と話し、20年には40歳となる自身の出場については、「正直、もう少し早かったらっていう気持ちもあり、7年後はまだ見えませんが、40歳の高跳び選手はいないので、もし東京で最後の試合ができれば最高だろうと思う」と話した。さらに、北京、ロンドンと満員のスタジアムを経験し、「海外の方の手拍子の中、跳びました。今度は日本人の方たちに手を叩いてもらって跳びたいですね。(7年後の)スタジアムを満員にするために、(準備活動も)みんなでがんばっていけたらと思います」とベテランらしく語った。

・18日~20日: オランダで、IWAS World Games (世界車いす・切断者競技大会)が開催され、山本篤が金メダル2個、銀メダル1個を獲得した。金メダルは13秒07だった男子100mT42/44(下肢切断クラス)と、同200mで26秒18の自己新マークした同200mの2種目。銀メダルは走り幅跳びT42/47(上下肢切断クラス)で5m67だった。同種目では羽根裕之(日産化学)も5m46で9位に入っている。

[caption id="attachment_14882" align="alignnone" width="620"] 今季、好調を維持しつづける、山本篤
やまもと・あつし: スズキ浜松AC所属。1982年大阪府出身。高校2年時にバイク事故により左脚を大腿部で切断後、陸上競技と出会う。大阪体育大学大学院修了後、スズキ株式会社に入社。現在、T42(大腿切断クラス)の100m、200m、走り幅跳びの日本記録保持者。[/caption]

■車椅子バスケットボール
・5日~14日: 23歳以下の世界選手権、「IWBF U23 World Championships」がトルコで開催されていた。同大会は日本をはじめ、各大陸の予選を勝ち抜いた12チームが参加。日本は予選リーグ1勝4敗で決勝トーナメントには進めず、順位決定戦の結果、最終順位は9位だった。

 最終順位は以下の通り。1位ドイツ、2位スウェーデン、3位オーストラリア、4位イギリス、5位イラン、6位カナダ、7位トルコ、8位イタリア、9位日本、10位メキシコ、11位南アフリカ、12位ベネズエラ

■パラトライアスロン
・13日: トライアスロンの世界最高峰のシリーズ「2013 ITU Paratriathlon World Championships」の最終戦が11日~15日にロンドンで開催され、パラトライアスロンの部が13日に行われた。全6つの障害クラス(TRI-1~6)合わせて、30カ国から男女計219人がエントリー、スイム(750m)、バイク(22.5km)、ラン(5km)のコースで頂点を競い合った。

 日本からは約10人がエントリー。TRI-5(義足など中程度の脚部障害)で古畑俊男が1時間13分25秒で4位に入った。同クラス優勝は、地元イギリスのMatthew Emmerson 1時間11分44秒だった。

また、TRI-1(車椅子クラス)では副島正純が1時間13分55秒で10位に入った。同クラスの優勝は1時間01分35秒でフィニッシュしたオーストラリアのBill Chaffey。元トライアスリートだった彼はバイク練習中の事故で半身麻痺となり、パラトライアスロンに転向。2009年と10年、12年に世界タイトルを獲得。今大会も優勝候補の筆頭だったが、クラス優勝で4度目のタイトルを獲得した上、パラ部門全体でもトップタイムでのフィニッシュだった。ちなみに第2位には0秒07差でオランダのJetze Pat(TRI-1)が入った。

 なお、パラトライアスロンは2016年ブラジルのリオ・パラリンピックから正式競技に採用されることが決まっており、競技人口はここ数年、急増。今大会の出場者数も昨年の21カ国109選手から倍増した。

・21日: 日本トライアスロン連合(JTU)は理事会で、パラリンピック代表の強化拠点として、横浜市の「障害者スポーツ文化センター横浜ラポール」と提携したと発表した。JTUは昨年12月にパラリンピック対策プロジェクトを発足させた。強化拠点の指定も、その一環。

■車いすテニス
・5日~8日: 全米オープンの車いすテニス部門が行われ、世界ランク1位の国枝慎吾は、シングルスで同2位のStephane Houdet(フランス)に敗れて準優勝、ダブルスはベスト4に終わり、今季のグランドスラム最終戦でタイトルを逃した。

 女子シングルスは、オランダのAniek van KootがドイツのSabine Ellerbrockを下し、頂点に立った。上地結衣はベスト4だったが、Sabine Ellerbrock(ドイツ)とペアを組んだダブルスは準優勝だった。

(カンパラプレス配信+NBSオリジナル)
(写真提供: 越智貴雄)