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遠くからきた大リーガー―シド・フィンチの奇妙な事件

『遠くからきた大リーガー―シド・フィンチの奇妙な事件』

著者:ジョジ・プリンプトン

訳者:芝山幹郎

出版社:文藝春秋

価格:¥631

 

 

 チベットで神秘的な呼吸法を身に付け、時速二百キロを超す快速球を投げられるようになった投手が、アメリカ大リーグで活躍する——という筋書きのなかで、ひとりのヒーロー(トリックスター)の宿命的顛末を描く。これも、ベースボールというスポーツに対する鋭い考察に満ちた傑作。ハーマン・メルヴィルの『白鯨』(新潮文庫)が鯨の生態に関する考察にあふれ(そのことに関しては、フィリップ・ロスの『素晴らしいアメリカ野球』のなかに少々茶化した記述がある)、ピーター・ベンチュリーの『ジョーズ』も鮫の生態に関する分析があり、パトリック・ジュースキントの『香水』(文藝春秋)も、香水に関する深い記述がある。日本のスポーツ文学がスポーツに関する考察や分析を無視して「人間ドラマ」に走るのは「私小説」の影響によるものなのだろうか?