ノーボーダー・スポーツ/記事サムネイル

さよならゲーム

 ノースカロライナ州ダーラムを本拠地とするカロライナ・リーグのマイナー球団「ダーラム・ブルズ」に、球は滅法速いがコントロールはメチャクチャで、血気盛んな新人投手エビー(ティム・ロビンス)が入団してくる。コイツをなんとかモノにしようとした監督は、現役生活のほとんどをマイナー・リーグで過ごし、一度は引退を決意した捕手のクラッシュ(ケヴィン・コスナー)を教育係として呼び戻す。

 エビーとクラッシュ、そして、毎シーズンこれと見込んだ選手の、公私の面倒を見ることを生き甲斐にしている「野球教信者」の女性教師アニー(スーザン・サランドン)の3人の恋愛模様を織り交ぜながら、マイナー・リーグの哀しさと楽しさを描いていく。

 最近ではスポーツ・マスコミの最前線に女性がいることも珍しくなくなり、試合に負けて泣きじゃくっている高校球児の背中を優しくなでている女性レポーターや、そっと肩に手を置きながらもらい泣きしている女性記者などを見かけることがある。選手たちの放つ強烈なフェロモンに魅了されるのも分からないではないが、どう見ても公私混同であり、スポーツ・ジャーナリスト失格であり、「追っかけ」の少女たちが見れば怒るだろう(笑)。

 せめてこの作品を観て、野球というスポーツをこよなく愛する結果、みずからの身体と知識を授けて若い野球選手を育てる女性の生き方を学んでほしい。

 監督のロン・シェルトン自身が4年間マイナー暮らしを送った元プロ野球選手。主演のケヴィン・コスナーも高校時代に全米代表に選ばれ、野球で奨学金を得て大学に進んだ経歴の持ち主とあって、野球のプレー・シーンやマイナー・リーグの舞台裏の描写には現実味があふれていて、多くのメジャー・リーガー、マイナー・リーガーの共感を呼んだ。2003年にアメリカの「スポーツ・イラストレイテッド」誌が行った企画「Greatest Sports Movie of all time」で、第1位にランクされている。