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神様、仏様、稲尾様  稲尾和久メモリアル

 2013年8月16日、イーグルスの田中将大が日本プロ野球新記録となる21連勝を達成したが、従来の記録を見直したとき、あらためて驚かされたのが「鉄人」稲尾和久の遺した数々の偉業だった。

 シーズン42勝(1961年)、3年連続30勝以上(57~59年)、353奪三振(62年)、通算防御率1.98といった数字はもちろん、ジャイアンツ相手に3連敗から4連勝して日本一となった58年の日本シリーズでは、全7試合中6試合に登板(うち4試合で完投)して4連勝。第5戦ではみずからサヨナラホームランを打つ離れ業をやってのけた。「野武士軍団」西鉄ライオンズの黄金時代を築き上げた、まさに記録と記憶に残る大投手だ。

 ストライクゾーンを隅々まで使う精緻なコントロール、鋭角なスライダー・シュート、頭脳的な投球術、温厚な人柄…。多くのファンに愛され、野球仲間に慕われた故人をしのび発売されたこのDVDには、現役時代のピッチング映像やさまざまなエピソードを振り返ったインタビュー、福岡で放送された追悼特別番組などが収録されている。また1984年から3年間、稲尾氏はロッテ・オリオンズの監督を務めたが、これは当時川崎球場を本拠地としていたオリオンズの福岡移転を前提とした就任だったことを本人が語っているなど、球史を後世に伝える貴重な史料でもある。

 ただ大変残念ながら、すでに販売は終了しており、現在では入手困難になっている。