ノーボーダー・スポーツ/記事サムネイル

クール・ランニング

 100m、200m走の世界記録保持者ウサイン・ボルトをはじめ、リンフォード・クリスティ、マリーン・オッティ、ベン・ジョンソンなど、多くのスプリンターを輩出したことで知られる陸上王国ジャマイカ。平均気温は27~32度、雪や氷に縁のないカリブ海に浮かぶ熱帯の小島から、冬のオリンピックに挑む「実話」を基にしたスポーツコメディ。
 オリンピック100m走の金メダルを目指すデリス(レオン・ロビンソン)は、思わぬ転倒によりジャマイカ予選で敗退。どうしてもオリンピックをあきらめ切れないデリスは、やはりオリンピック出場を逃したライバルのスプリンターたちとボブスレー・チームを結成。手押しカートで丘の上を滑ったり、巨大冷凍庫のなかで寒さに耐えたりといった特訓に励み、オリンピック開催間近のカルガリーに乗り込んで行く。
  オリンピック公式コースで撮影された滑走シーンは迫力充分。氷上のF1と称されるボブスレー競技の魅力と過酷さを存分に映し出している。
 物語のモデルになったのは、兄ダドリーと弟ネルソンのストークス兄弟。アメリカ人実業家のスポンサードを受けて、1988年のカルガリー大会に初出場。92年のリレハンメル大会では、四人乗り種目で世界のトップクラスと認められる第1シード圏内の14位に食い込む大健闘をみせた。
 さらに99年からジャマイカの代表選手だったラッセルズ・ブラウンは、04年にカナダに移住。そこで知り合った女性と結婚して市民権を得ると、カナダチームの一員としてオリンピックに出場。06年トリノ大会の二人乗り種目で銀メダル、10年バンクーバー大会四人乗り種目で銅メダルを獲得している。
 ボブスレーにピッタリのタイトルである「Cool runnings」だが、ジャマイカで用いられる俗語で「Peace be the journey(旅に無事あれ、よい旅路を) 」といった意味があるそうだ。