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ラグビー+アメフト 二刀流が未来の日本アスリートの姿!?(松瀬 学)

なぜ日本のトップアスリートはひとつの競技に専念するのだろうか。競技のシーズン制を大事にする米国の大学生など、アメリカンフットボールと水泳、野球を掛け持ちするケースがある。複数の競技をやったほうが、選手の才能は磨かれるのではないか。

なぜこんなことを考えたかというと、9月1日(土)、ラグビーのトップリーグで若手エースの山田章仁(パナソニック)のプレーを見たからである。前日の夜にはアメリカンフットボールの日本社会人Xリーグのノジマ相模原のリターナーとして試合に出場。1回の捕球で10ヤード獲得というから、出来としては本人いわく、「マイナス100点」だった。

だがラグビーの試合の方では、独特のステップ、スピードを発揮し、2トライをマーク、圧勝スタートの原動力となった。こちらは「いいスタートを切れた」と山田はいう。体重が昨季より5㌔アップの88㌔とでかくなった。視野が広くなり、ランに幅ができた。これもアメフト挑戦の効果だろう。

山田は自由奔放なファンタジスタである。慶大の時も2年、3年とひとりで豪州にラグビー留学した。卒業後、プロ選手となり、ホンダに入った。その後、パナソニックに移り、チームのトライゲッターとして活躍した。

この春はパナソニックの了解をとり、アメフトのノジマの練習と個人トレーニングに励んだ。ラグビーのチーム練習には参加しなかった。夏合宿でチームに合流し、この秋はラグビーとアメフトの両方の公式戦に出場する意向である。プロ契約のラグビーから報酬をもらい、「趣味の」アメフトからは無報酬となる。交通費ももらわない。

なぜアメフトに挑戦したのか、と問えば、山田はこう答えた。

「昨シーズン、ラグビーでは結果を残せませんでしたが、アスリートとして成長できたのは実感できていました。新たなものにチャレンジしたくなった。また、自分をもっといろんな人に見てもらいたいという思いもあったからです」

これももう、アスリートの性である。トップリーグの選手で他競技挑戦は初めてのケースとなる。一競技に専念という形態はむしろ、環境によるものだろう。選手がやりたくても、チームが許さないのだ。負傷による打撃、チームワークを乱す恐れもある。

ひと昔のラグビーでは、こんなこと、ありえなかった。全員が社員で仕事もしなければならない。ラグビーをやるので精いっぱいだった。だがいまやプロ選手が誕生した。時間はある。しかもラグビーTLはプロ野球やJリーグのように完全なプロリーグではないから、選手規定は緩いのだった。

チームの理解があれば、選手は他競技にも挑戦することができるのである。その意味でパナソニックは柔軟性があった。チームに社員契約選手、プロ契約選手が混在している。さらにニュージーランドのクラブチームに挑戦している選手もいる。パナソニックとしては競技が違えど、「基本的には海外ラグビー留学と同じ」という判断をした。

問題は、アメフトでケガをした時だろう。「すべて山田本人の自己責任」(パナソニック・中嶋則文監督)とし、アメフトでのケガもプライベートのケガとして減俸など厳しい対応をとるようだ。だが申し合わせにとどまり、傷害補償など具体的な取り決めは交わされていない。

ここはきっちり契約の付帯条項でうたうべきである。ナアナアなカタチではトラブルになる。選手の選択肢が増えることは悪くない。異種競技へのチャレンジを増やすためには、何より環境整備がマストである。

【NLオリジナル】