ドリアン・グレイの肖像
著者:オスカー・ワイルド
訳者:福田恒存
出版社:新潮社
価格:¥680
十九世紀末に大流行し、一世を風靡したスポーツ。その魅力に魅入られたようにスポーツに邁進するアスレティシャン(スポーツ愛好家)の姿を、エステティシャン(審美家・耽美主義者)たちは冷ややかな目で見つめた。いわば“文化系”対“体育会系”の最初の闘い。現代のアスレティシャンは、エステティシャンの側の思想も知っておかねばならない。その代表者であるワイルドの作品。〈芸術家は美しいものを創造すべきではある。しかしそのなかへ自分自身の人生を投入すべきではない。ぼくらは芸術が自伝の一形式であるかのごとく扱われている時代に生きている。ぼくらは抽象的な美の感覚を失ってしまった〉というような記述は、現代のアスレティシャンの胸にも突き刺さる。スポーツマンがスポーツをする姿を評価せず、スポーツマンの人生に注目し、「スポーツは人間ドラマ」などという言い方をするのは、スポーツも、芸術と同様、衰退への坂道を転がり落ちているということか?