ノーボーダー・スポーツ/記事サムネイル

ステロイド合衆国

スポーツマンの三人兄弟の真ん中の男が、薬物を使って「大きく魅力的な筋肉を作ること」に疑問を感じ、それを実行し続ける兄や弟へのインタヴュー、さらには息子たちの薬物使用を知りショックで涙する母親の感想を交える一方、アメリカのスポーツマンたちの薬物使用の実態に鋭く迫る。
 シュワルツネッガーやスタローンなどの「筋肉美」と「強さ」を誇るアメリカ社会の現実や、遺伝子操作によって肉(筋肉)を異常に肥大化させた牛の存在に切り込み、4度のオリンピックで9個の金メダルを獲得した陸上競技のスーパースター、カール・ルイスへの直撃インタヴュー(ソウル五輪で金メダルを剥奪されたベン・ジョンソンだけでなく、繰り上げ1位になった彼も薬物に手を付けていた!)を敢行するなど、個人的な疑問を出発点に、ステロイド使用の賛否両論を並べて紹介している。
 この映画に描かれているのは、言わばアメリカの恥部である。が、テーマは、アメリカ人だけの問題ではない。オリンピック、ワールドカップ、ゴルフ、テニス……など、毎日いたるところにスポーツが存在するようになった現代社会に暮らす現代人には、必見のドキュメンタリー。
原題は「Bigger、Stronger、 Faster」。日本では、映画評論家の町山智浩がセレクトした日本未公開のドキュメンタリーを紹介するネット・テレビ番組「松嶋×町山 未公開映画を観るTV」のなかで放送されたほか、この番組が発展する形で開催された「リアル! 未公開映画祭」において劇場公開された。