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野球引込線

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『野球引込線』

著者:ウィリアム・パトリック・キンセラ

訳者:永井淳

出版社:文藝春秋

価格:¥1,992

 

 

 キンセラには『シューレス・ジョー』(文藝春秋)や『アイオワ野球連盟』(同)といった素晴らしい野球長編小説もあるが、この短編集のほうが、野球そのものの魅力がよりわかりやすく浮き彫りにされ、面白い。ヤンキースの名捕手であるサーマン・マンソンが死亡して落胆している男のもとにメフィストフェレスのような人物が現れ、「身代わりに死ぬ人間がいるなら、マンソンを生き返らせることができる」と囁く。そこで男は、誰のためなら身代わりになれるかを考える……という筋書きは、マルケス、リョサ、ボルヘスといったラテン文学のような幻想の世界に導く(もっとも結末は、きわめてアメリカ的、ベースボール的で、そこがまた面白いのだが)。