【現地レポート】「55番のTシャツを捨てずに持っていてくれて、うれしい！」元ヤンキース松井秀喜、引退セレモニー！（前田 真理）

2013/07/29

【現地レポート】「55番のTシャツを捨てずに持っていてくれて、うれしい！」元ヤンキース松井秀喜、引退セレモニー！（前田真理）

ニューヨーク・ヤンキースで活躍した元メジャーリーガー、松井秀喜さん（39）の引退セレモニーが28日、ニューヨークのヤンキースタジアムで開かれた。

当日は小雨が降り、気温25度前後と涼しい日だったが、ヤンキースタジアムには大勢のファンがつめかけ、松井さんを応援する熱気で包まれていた。

メジャーリーグにはチームに貢献した選手と１日だけ契約をして、過去の栄光を讃えるという慣習がある。この日、ヤンキースの選手として09年にワールドシリーズでＭＶＰに輝き、昨年末に現役を引退した松井さんは、日本人として初めて１日限りのマイナー契約を結んだ。

松井さんは、会見で「本日、ヤンキースと契約する事ができ、ヤンキースとして正式に引退することができて本当に光栄だと思います。ヤンキースの皆さんには、感謝の気持ちで一杯です」と話した。

先着１万8000人には、ワールドシリーズＭＶＰのトロフィーを持った松井さんのバブルヘッド（首振り）人形が記念に配られることになっていて、朝早くから入り口に並ぶ人もいた。セレモニーの何時間も前から長い列ができるのは、とても珍しいとファンは話す。

松井さんが「55番のシャツを捨てずに持っていてくれたファンがいて、とてもうれしい」とコメントしていたように、スタジアム内ではアメリカ人、日本人の区別なく背番号55のTシャツを着た人の姿が目立った。

また、ニューヨークには約５万人の日本人が住んでいるといわれているが（外務省調べ）、こんなにも日本人が一カ所に多く集まったのは、私自身初めて見る光景だった。また、浴衣や甚平姿を着て、嬉しそうに松井さんの人形を握りしめる子供達がいたのも印象的だった。

大型スクリーンに“Thank you HIDEKI”と書かれた画面が映し出されると、大きな拍手が鳴り響いた。そして、松井さんのこれまでの勇姿を10分弱にまとめたVTRが流される。それを見ていたファンの手には「We never forget!」「いい思い出をありがとう！」「Thank you ゴジラ」「Go Go マツイ！」などと書かれたプラカートが光っていた。松井さんが表紙を飾った月刊誌『ヤンキース・マガジン』７月号を手にしている人も多かった。

また、場内の細型の電子掲示板には、松井さんのニックネームであるゴジラ（GODZILLA）にちなんで、きょうは、“GONE−ZILLA”（さよなら、ゴジラ）と表示。アメリカらしい粋な演出だと感じた。

スタジアムが一番盛り上がったのは、スーツ姿の松井さんがカートでグラウンドに登場した時だ。場内の観客が一斉に立ちあがり、松井さんに向かって大きく手をふった。ホームベースへ着くまでの間、割れんばかりの歓声、拍手、指笛が鳴り響いた。涙を流している人もいた。私は、松井さんが、どれだけ多くのファンから愛されていたかに気づかされた。

その後、松井さんの父、母、兄、ゼネラルマネージャーが同席し、球場のファンが見守る中、松井さんは引退の書面にサインした。

そして、親友のジーター選手から、09年に着ていたユニホームが贈られると、松井さんの顔には満面の笑みが広がった。日本で５月に行われた国民栄誉賞の授与式のようなスピーチはなかったが、始球式のため松井さんがピンストライプのユニホームを着てグラウンドに登場すると、長年守ったレフト側から「マ・ツ・イ！マ・ツ・イ！」というコールがわき起こった。

そんな特別なセレモニーの後に行われたレイズ戦、ヤンキースは、６−５でサヨナラ勝ちした。その日、復帰戦第一打席の初球でいきなりホームランを打ったジーター選手は、試合後の地元メディアのインタビューに「これは、松井へのプレゼントだ」と語った。

一方、イチロー選手は、この試合で４打数４安打１打点と大活躍。今季100安打となり、日米通算4000本安打まであと16本と迫った。

日本人メジャーリーガーは、アメリカで確実にその影響力を大きくしている。

【DNBオリジナル】