ノーボーダー・スポーツ/記事サムネイル

桂三枝創作落語 自撰・特撰・三四撰(さんしせん)

 テレビ番組の収録で長崎の「出島資料館」を訪れた桂三枝(現・六代桂文枝)は、江戸時代の品物として展示されていたゴルフのクラブとボールを見て「幕末にクラブとボールがあったのなら、坂本竜馬がクラブを握った可能性だってある」とひらめき、竜馬と中岡慎太郎、沖田総司、近藤勇の4人でラウンドする落語「ゴルフ夜明け前」を創作する。初演は1983年。のちに映画化や舞台化され、小説としても出版されたこの噺は「イギリスでは国の重鎮たちがゴルフをしながら、まつりごとを決めるらしい。刀を振り回すよりクラブを振り回すほうがずっと楽しい」と、スポーツの本質を見事に踏まえている。

 また日本のゴルフの起源は、1901(明治36)年、英国の貿易商アーサー・H・グルームが別荘のあった神戸の六甲山上に4ホールのコースをつくり、仲間うちで楽しんだのが起源とされていたのだが、あらためて「長崎市立博物館」を訪れた三枝は、幕末に商館に勤務していたオランダ人が書き残した「出島オランダ商館日記」の1652年7月29日の記述に「館員らがゴルフをする」とあるのを発見。徹底した歴史考証で、隠れた日本のゴルフ史に光をあてることにもなった。

 この5枚組DVDボックスは、220作を超える三枝の創作落語のなかから、34演目を収録。三枝本人による「ゴルフ夜明け前」の副音声解説が付いている。