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NBS創設記念!! 注目は、パートナーとの「絆」!視覚障害アスリートの挑戦!パラスポ入門第3弾(越智貴雄+星野恭子)

 「風を切って走る、開放感が嬉しかった」――陸上競技に夢中になった理由をこう表現する全盲のアスリートは少なくない。

 視覚は人間にとって最も重要な情報収集器官であり、情報の約80%を視覚から得ているともいわれている。周りが見えない状態で動くことは危険だ。ひとりでは歩くことさえままならなかった自分が、伸び伸びと疾走する非日常感。それがなによりも心地よい・・・。

[caption id="attachment_12014" align="alignnone" width="620"] 和田伸也選手(中央左)とガイド中田崇志さん=ロンドン・パラリンピック[/caption]

 和田伸也選手(日本盲人マラソン協会所属)もそんな風に感じてマラソンにのめり込んだ一人。

 競技歴約7年目の昨年、初出場となったロンドン・パラリンピックの5000mT11(トラック競技・全盲クラス)で15分55秒26の日本新を叩きだし、銅メダルに輝いた。視覚障害のある日本人選手がトラックの中距離種目でメダルを獲得したのは史上初の快挙だった。彼はマラソンでも5位入賞を果たしている。

 和田選手が安心に安全に走り、自己の限界に挑戦できるのは、「ガイド」(伴走者)と呼ばれるパートナーの存在があるからだ。伴走者はランナーの「目」の代わりとなり、必要な情報を正確に確実に与え、安全を確保しながらフィニッシュまで導く。ランナーと伴走者は二人三脚で、脚と心を合わせてともに走る。

 国際パラリンピック委員会(IPC)の陸上競技ルールでは、視覚障害クラスは各選手の「見え方」によって「T/F11~13」(註1)の3クラスに分けて競技を行う。「見え方」は一般的には視力と視野で測られ、その程度によって11クラス(全盲)と弱視に分けられ、弱視はさらに、12(視力が0.03以下など)と13(視力0.03から0.1までなど)に分けられている(註2)。

 11クラスの選手でも、全く何も見えない(感じない)人から、光は感じられる(光覚)人など見え方には個人差があるため、公平に競技が行えるようにサングラスやアイマスクの着用が義務付けられている。

[caption id="attachment_12015" align="alignnone" width="620"] 堀越信司選手=ジャパンパラ陸上競技大会[/caption]

 堀越信司選手(NTT西日本所属)はT12クラスの中距離ランナーで、2008年の北京大会に続く2度目のパラリンピックとなったロンドン大会で5000mT12(弱視統合クラス・註)に出場し、14分48秒89の自己新をマークし、5位入賞を果たした。

 一方、フィールド競技でも、F11、12クラスの選手は、トラック選手の「ガイド」にあたるパートナー、「コーラー caller」とともに競技する。「コーラー」は決められた範囲内から、声や拍手などの「音」を発し、選手に跳んだり、投げたりする方向を指示する。どのような「音」をどんなタイミングで発するかは選手とコーラーの工夫のしどころであり、観客にとっての見どころでもある。

[caption id="attachment_12016" align="alignnone" width="620"] 渡邉紫帆選手とコーラー下稲葉耕己さん(後姿)=ジャパンパラ陸上競技大会[/caption]

 ロンドン・パラリンピックの走り幅跳びF11に初出場し、自身の持つ日本記録4m32に迫る4m22で6位に入賞した渡邉紫帆選手とコーラーの下稲葉耕己さんの試技の様子だ。ペアを組んで約3年で、「二人のルーティン」を試行錯誤の末につくりあげ、世界の舞台に立った。

 下稲葉さんが踏切板手前に立ち、助走15歩目で踏み切る渡邉選手のピッチに合わせて声をかけ続け、衝突寸前のギリギリのタイミングで身を交わし、理想の踏切位置をピンポイントで伝えるのだ。渡邉選手は暗闇の中を走り、跳ぶのだが、「声を信じているから、怖くない」そうだ。

 なお、和田選手と堀越選手はフランス・リヨン世界選手権(7月19日〜28日)の日本代表にも選ばれており、和田選手は1500m、5000m、マラソン、堀越選手は1500mと5000mにエントリーしている。同大会では、インターネットでストリーミング中継も予定されている。障害のあるアスリートたちの世界トップレベルのパフォーマンスを目撃するチャンスだ。

(註1) Tはトラック競技、Fはフィールド競技
(註2) T13は基本的に単独で走るが、T12の選手は本人の判断で伴走者を付けることもできる。

■2013 IPC陸上競技世界選手権
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ストリーミング中継放送時間とリンク先一覧(日本身体障害者陸上競技連盟公式サイトより)
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文:星野恭子
写真:越智貴雄