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佐野稔の4回転トーク 18~19シーズン Vol.⑨ またしても銀メダルに終わった宇野昌磨。気になるジャンプの着氷

ジャンプの乱れで、ネーサン・チェンのミスも味方にできず「また銀メダルかぁ」と、多くのファンが嘆いたことでしょう。

去年の「世界選手権」から「グランプリ・ファイナル」、今年の「四大陸選手権」「平昌五輪」「世界選手権」、そして今回の「グランプリ・ファイナル」と、宇野昌磨はこれで主要国際大会6試合続けての2位。「シルバー・コレクター」の称号を返上できませんでした。

「グランプリ・ファイナル」2連覇を達成したネーサン・チェン(アメリカ)も、4回転ルッツで転倒したり、連続ジャンプの予定が単発になったりと、完璧な内容ではありませんでした。ただ、それに輪をかけて、宇野の演技も良くありませんでした。なんとかこらえたような着氷が相次ぎ、フリー・スケーティング(FS)で跳んだ7度のジャンプは、4つがGOE(出来栄え点)でマイナスの評価。これでは勝てるはずありません。

もちろん五輪明けのシーズンだったり、‘絶対王者’羽生結弦が右足首のケガのため欠場したりと、緊迫感に欠ける要素はあったかもしれません。が、女子シングルと較べると、物足りない優勝争いになりました。 

今シーズンずっと失敗の続いていた4回転トゥ・ループが決まったかと思ったら、今度は4回転フリップ、4回転サルコゥが回転不足。どこかジャンプにズレが生じているようです。いまに始まったことではないのですが、宇野はジャンプの着氷をする瞬間に、右腕をぐるっと膨らんだように回して降ろす癖があります。これは回転のしすぎで左方向に流れていきそうになる身体を、踏み止めようとしている表れだと思うのです。

今回も本来なら「4回転トゥ・ループ+3回転トゥ・ループ」を跳びたいところを「4回転+2回転」に抑えていましたが、最初のジャンプの着氷でバタバタしてしまうため、2つ目のジャンプの踏み切りにスムーズに入ることが難しくなっているのです。 

宇野のジャンプの「回り過ぎ」について、気合いの入り過ぎですとか、本番までのコンディションの合わせ方などが取り沙汰されていました。ですが、これだけ同じようなことが続くのであれば、それは技術の問題です。着氷が乱れるのは、着氷だけに原因があるのではなく、踏み切りや回転軸の課題に行きつくはずです。  

いまのままでも世界2位。演技構成点ではSP、FSどちらも、優勝したチェンを上回っていたのですから、その実力に疑いようはありません。ですが、世界の頂点に立つためには、自身のジャンプについて、一度じっくり見直す必要があるのではないでしょうか。

ジュニア唯一の日本勢、島田高志郎が銅メダル 

シニアと同時に開催されたジュニアの「グランプリ・ファイナル」で、今回男女を通じて、日本勢でただひとり出場権を掴んでいた17歳の島田高志郎が、銅メダルを獲得しました。FSの冒頭では4回転トゥ・ループに見事成功。先月福岡で行われていた「全日本ジュニア選手権」では、このジャンプに失敗して、ショート・プログラム(SP)首位から総合3位に転落していただけに、良い収穫を手にしました。 

ノービス時代、つまり小学生の頃から、島田は有名な存在でした。去年の5月から練習の拠点をスイスに移し、武器である大きなジャンプに磨きをかけています。じつは以前ある企画で、まだ幼かった島田たちを私が引率して、イタリアまでスケート靴をつくりに行ったことがありました。そのときの印象では、ひじょうに良い子。スケートに対して真面目な子だったことを覚えています。

彼の手足の長さは、日本人選手にはあまり見られない特徴です。それにある種の運も持ち合わせています。今シーズンのジュニアのグランプリ・シリーズは2位と3位で優勝はなく、獲得ポイントは6番目。ギリギリのファイナル出場でした。そのファイナルも、SP首位のカンデン・フルキネン(アメリカ)が、FSの最終滑走で大失速。押し上げられた格好で島田が表彰台に昇ったのです。羽生結弦にも通じるのですが、競技者にはこうした巡り合わせや幸運をキッカケに、大きく飛躍することがあります。

今月20日に開会するシニアの「全日本選手権」にも、島田は推薦出場します。このまま大きく成長して、「ポスト羽生」の座を争うひとりに、名乗りを挙げてくれることを期待しています。