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NBS創設記念!! 躍動する義足アスリートを見よう!パラスポ入門第2弾(越智貴雄+星野恭子)

http://youtu.be/y4UuRyum95I

 国際パラリンピック委員会(IPC)のルールの下で行われる陸上競技大会では、選手を障害の種別、部位、程度による「クラス」に分けて競技が行われる。障害の個人差による不公平をできるだけ減らすための配慮だ。

 そのなかのひとつ、「立位・切断/機能障害」クラスは、腕や脚などに先天的、あるいは病気や事故などで後天的に欠損や機能障害があるクラスで、さらに障害の部位や程度により細分化(T/F42~47クラス*註)されている。このクラスでは、車椅子の使用は認められないが、義肢(義手や義足)をつけて競技することが認められている。競技用の義肢は日常用とは異なり、より軽く耐久性に優れ、形状も競技の特性に合わせ、さまざまに研究、開発が進められている。

 たとえば、競技用義足の現在の主流は、カーボンファイバー製で、アルファベットの「J」の字型をした「板バネ」と呼ばれるもの。足首部分が着地の際にバネのようにしなり、地面からの反発が受けやすくなっている。ただし、反発力の高い義足をつければ誰でも速く走れるわけではなく、反発力をコントロールできる強い筋肉を自身に備えなければ、義足の機能を生かしきれない。

 義肢にはもうひとつ、「ソケット」と呼ばれる重要なパーツがあり、たとえば義足なら脚の付け根(断端)をこの中に入れて脚と義肢をつなぐ。断端の太さや長さは人それぞれのため、ソケットはオーダーメードになる。さらに、日々のトレーニングにより筋肉量が増すなど、断端の形が変わるとソケットとのフィット感も変化し、摩擦が起こって外傷などトラブルになることも多い。義肢装具士と相談しながら行うソケットや義肢の調整も、選手にとっては欠かせない練習の一環だといえる。

 また、大腿切断者用の義足には、板バネの上部に膝の代わりとなる「膝継手(ひざつぎて)と呼ばれるパーツがある。空中ではある程度自由に稼働しながら、足部が着地すると空圧でロックがかかる仕組みなど、いわゆる「膝折れ」を防ぐ工夫がさまざまに施された、精巧なパーツだ。

 冒頭の画像は、T42(大腿切断など)クラスの山本篤選手(スズキ浜松所属)が疾走する様子である。彼は100m、200m、走り幅跳びの日本記録保持者で、それぞれ12秒73、26秒72、6m24。パラリンピックには走り幅跳びで銀メダルを獲得した2008年の北京(100mは5位)と、昨年のロンドン(走り幅跳び5位、100m6位)に出場している。7月19日にフランス・リヨンで開幕する世界陸上の代表でもあり、世界の強豪と競い合い、メダル獲得と自己記録更新を目指す。

定点画像:越智貴雄
文章:星野恭子

*註:Tはトラック競技。Fはフィールド競技。また、数字は、10の位が障害の種別(視覚障害、切断・機能障害、頚・脊髄損傷等々)、1の位が部位や程度(数字が小さいほど障害が重い)を表している。