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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(247) 2020年のその先へ。今から!

2020年の東京パラリンピックに向けて、普及や強化が進むパラスポーツですが、2020年はゴールではありません。むしろ、2020年をスタートに、さらなる広がりが期待されているし、続けていかねばなりません。すでに、「その先」を見据えた動きも見られます。

 ■パラスポーツを支援する、新団体が発足 近年、理解とサポートが広がりつつあるパラスポーツですが、資金面や人材面などまだ多くの課題があることから、日本のパラスポーツのさらなる発展を目指し、「一般社団法人パラスポーツ推進ネットワーク」(略称:パラネット)が11月22日に新たに設立されました。広告代理店の電通と電通パブリックリレーションズ(PR)が設立し、主に競技団体の広報活動と大会運営のサポートを活動の柱に据えています。国内のパラスポーツ競技団体のサポートを目的とした新団体、「一般社団法人パラスポーツ推進ネットワーク」(略称:パラネット)のロゴ。少なくとも2024年まで活動継続予定 (資料提供:パラネット)

 活動資金は当面、電通が拠出。現時点では2024年のパリ・パラリンピックまで事業計画が組まれており、その後は状況を検討しながら、活動継続も探っていくそうです。 広報活動支援としては、競技団体の広報対応サポートや選手プロフィールや競技成績などのデータベース構築などを、大会運営としては観戦者増を目指し演出などにもこだわった運営を目指すと言います。選手の魅力を伝えるには「情報」は重要ですし、また、会場観戦者を増やすには「エンターテインメント的なアプローチ」も欠かせません。人材やノウハウが不足している競技団体にはなかなか難しい点であり、この辺りは専門家の力を大いに期待したいと思います。 理事長には2000年シドニーオリンピック陸上女子マラソン金メダルの高橋尚子さんが就任。「大事なことは2020年東京パラリンピック後も、パラアスリートの皆さんが活躍し続け、日本中の皆さんが興味を持ち、応援してくださるような社会の実現。競技団体と手を取り合い、パラスポーツを盛り上げ、より良い共生社会の実現を目指して活動していきたい」とコメントを発表しています。 副理事長にはパラリンピック・アルペンスキー金メダリストの大日方(おびなた)邦子さんが就任し、「パラスポーツの魅力度向上を目的とした団体。競技団体がなかなか手を出しにくい大会運営や広報活動をサポートしていきたい」と話しました。パラネットの高橋尚子理事長と、大日方邦子副理事長。オリンピックとパラリンピックの「レジェンド」がパラスポーツ普及でタッグ (資料提供:パラネット) 

パラスポーツ競技団体をサポートする組織としては、日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)も活動していますが、パラネットは「うまく連携したい」とし、ともに競技団体の自立活動をサポートしていくそうです。パラサポは2021年までの時限活動がすでに発表されているので、「2020年後」を見据え、両団体が連携し、うまくバトンタッチする形でパラスポーツの盛り上げを2020年以降まで、ずっとつなげていってもらえたらと願います。 

■「2021年から先の未来へ」をテーマにトークショー 12月2日に日本体育大の東京・世田谷キャンパスで「障がい者スポーツフォーラム2018」が開かれ、プログラムの一つとして、「する・みる・ささえる障がい者スポーツ。2021年から先の未来へ」というテーマでトークショーが行われました。パラスポーツについて皆で考える、「障がい者スポーツフォーラム2018」が日本体育大学で開催 (撮影:星野恭子) 

スポーツジャーナーリストの中西哲生さんをモデレーターに、アルペンスキー元日本代表、大日方邦子さんや車いすソフトボール日本代表の石井康二選手、そして、主催者である毎日新聞から高橋秀明編集委員が参加し、パラスポーツに関する現状や課題、そして未来などについて語り合いました。 例えば、大日方さんは日本パラリンピアンズ協会副会長も務め、選手目線での競技環境の調査や発信などにも取り組んでいます。アスリートが利用しやすいよう競技施設へのアクセシビリティの整備を進めることはインフラ面でのレガシーになります。「パラスポーツに関心が深まっている今こそ、誰もが住みやすい街づくりにつながれば」と話します。フォーラムに登壇した、アルペンスキー元日本代表の大日方邦子さん (撮影:星野恭子) 

車いすソフトボールの普及を進める石井選手は、1チーム10人を必要とするチーム球技なので、障がいのある人だけでなく、健常者も一緒に楽しめるスポーツとしてルール整備も含め柔軟な発想で進めていると言います。今年10月に開催された国際大会には日本代表やアメリカ代表を含む13チームが参加したそうで、「(老若男女)多様なコミュニティが一番の特徴。でも、試合は“ガチ”でやっています」と競技の魅力を語りました。 「競技性だけにフォーカスすると、楽しさが見失われがち」とスポーツ本来の楽しさも大切にしていると言い、「する・みる・ささえる。さまざまな関わり方がある」と、石井さんは幅広い人の参加を呼び掛け、大日方さんも障がいの有無に関わらず、さまざまな人がパラスポーツを楽しむことで、「こんな体の使い方もあるんだと、新しい発見や学びもある」と、その広がりに期待します。車いすソフトボールの普及に取り組む、石井康二さんは、日本代表主将としても活躍 (撮影:星野恭子) 

現在の課題について、大日方さんは選手として参加した、1998年長野大会は大会後、支える人たちも減り、「練習環境が残らず、終ってしまった。その反省を繰り返したくない」と話し、高橋編集委員は来年6月に完成予定のナショナルトレーニングセンター拡充棟周辺のバリアフリー状況を調査してまとめた記事を例にとり、「パラアスリート優先の施設にも関わらず、周辺の交差点には音声案内付き信号も少なかった。報道記事がきっかけで、良い方向に向かえば」と話しました。 テーマである2021年以降に向けて大日方さんは、「2020年(の東京パラリンピック)を一つのきっかけとし、どんな人もスポーツを楽しめる環境を作っていきたい」と話し、石井選手も、「車いすソフトは競技が若い分、敷居も低い。勇気をだして一歩踏み出せば、感動があると思う。ぜひ、参加を」と呼びかけました。 高橋編集委員は、パラスポーツはまだ、国内大会での空席が目立つことを課題に挙げた一方、「2020年をきっかけに、子どもの観戦も増えている。今の感動が、その先につながっていくことに希望を感じる」と話し、「2020年大会で芽生えるプラスの力をどう生かすのか、今からデザインすることも必要」と指摘しました。 中西さんは、「2020年大会の前後で、(パラスポーツを取り巻く)いろいろな垣根を低めたり、取り払ったりするために、今日はさまざまなヒントがもらえた」と会を結びました。 さて、2020年東京パラリンピック開幕まで600日余りとなりました。大会成功に向けて一丸という状況ではありますが、強化や普及活動は2020年のためだけではありません。 例えば、2008年北京大会を開いた中国はその後のパラリンピックでも好成績を収めていますし、2012年ロンドン大会を開いたイギリスは「パラスポーツ大国」として競技成績はもちろん、パラスポーツの人気も定着させています。 日本でも「2020年がスタート」という思いで、その先を見据えた視線と準備を今から進めていくことが大切だと思います。

 (文・写真:星野恭子)